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視覚障がいを知ろう(3)~食事のサポート~

『法友文庫だより』No.4 2012年春号から
※写真は「Photo AC」から(作者 撮影してます__)

 今回は、食事のときの具体的なサポートについて岩上館長(視覚障がい当事者)に教えていただきます。
 私(I)もこれまでに何度か岩上館長と一緒に食事をしましたが、適格にサポートできているのか自信はありません。特に、焼肉店へ行ったときは内心ドキドキしながらお肉を焼いていました。テーブルいっぱいに所狭しと食材が並べられているし、火も使っていましたから……。
 このように食事といっても焼肉やファミレス、お寿司屋さんなどいろいろありますので、外へ食事に行ったときに知っておきたいことを聞いてみたいと思います。

Q1 入口までに会談のあるお店はとても多いのですが、階段の誘導はどのようにしたらいいですか?

岩上 目が見える人(以下、晴眼者)は階段が特に危ないと思うようなのですが、私に限ってかも知れませんが、何の苦にもしていません。「あっ、階段ね」という程度です。
 段幅が不規則だったり、らせん階段だと少し緊張しますが、それだって対したことじゃないです。白杖を持って段の始めと終わりも確認していますし、普通に手引きして歩いてください。階段が狭かったりしたら手引きが先に歩いて盲人がヘルパーの背中にでもちょっと触れさせてもらえば、それでいいと思います。

Q2 お店の雰囲気、テーブルの配置などは、具体的に説明したほうがいいのでしょうか?

岩上 これも、別に義務的に考えないでください。店の雰囲気が知りたくて、あるいはテーブルのレイアウトなどを半分好奇心で尋ねたりもしますが、ただの話題のひとコマくらいに思ってください。晴眼者は、障がい者に「~しなければならない」という使命感や義務感みたいなものを持ち過ぎだと感じます。

Q3 メニューはどうしたらいいですか?

岩上 声に出して読んでください。「和風ならこんなもの、イタリアンならこんなもの、中華ならこれ」と。だいたいの定番は覚えていますが、そのお店の特にこだわりのお勧めグルメがあったりもしますから、やはり読んでもらって決めるのが原則です。


Q4 居酒屋などは、料理が一気にテーブルに並びます。そのような場合はどうしたらいいですか?

岩上 注文したときに、どんなものが並ぶのか分かっているはずです。ただ、それこそどんな風にどこに置かれたかが分からないわけですから、何から食べたいのか、近くに何を置いてほしいのか、そんなことを尋ねてもらえるといいですね。美味しい酒が飲めて、好きなものが食べられれば、特別にやってほしいことは基本的にはないですよ。ここでも「気にしない、気にしない」を強調しておきましょう。
 それよりも、Iさんが私と焼肉を一緒に食べたとき、ドキドキしていたというのには驚きました。それは申し訳ないことでしたね。本人としましては、「食べる人」に専念しているので、いろんな食材が出てこようが、テーブルがいっぱいになろうが、ノー天気にムシャムシャ食べていて、何も知らずにいました。あえて言わせていただきますが、Iさんのサポートは、とても上手ですからご安心ください。

Q5 ナイフとフォークがテーブルに並び、一品ずつ出てくるコース料理の場合はどうでしょうか?

岩上 私のもっとも好きなパターンです。和風料理のように、大皿・小皿が所狭しと並ぶよりはよほど盲人向きです。ただ、私は肉を切るのが上手とは言えないので、そのときは自分から「肉を切ってください」とお願いするかも知れませんけどね。あるいは、フォークより箸が良くて、それを欲しいと言うことがある程度でしょうか。


Q6 会計する際はどのようにしたらいいですか?

岩上 分が幾ら支払えば言いかが分かれば、特に問題はありませんよ。紙幣は大きさが違うので、財布の仕切りごとに区別して入れていますし、貨幣も小銭入れに金種別に入れています。硬貨は大きさ、穴の有る無しなどで簡単に分かります。だから「3456円払ってください」などと言われればすぐに出すことができます。もしも、お釣りがあったら、まとめて手渡してもらってもいいし、紙幣と硬貨を分けて渡してもらってもいいです。お札と硬貨を一緒に渡されて小銭がお札から滑り落ちることもあるから、別々の方がいいかな。まあ、そんな程度ですよ。

 ありがとうございました。館長の仰る通り、晴眼者は「〇〇してあげなくちゃ」と義務的に考えすぎていることのほうが多いのかもしれません。
館長、また一緒においしいお酒を飲みましょうね!


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