ロゴデザインをするときのデザイナーの頭の中
こんにちは。デザイナーの市角です。
普段はデザインや映像を作りながら、
大学で准教授としてデザイン思考について教えてみたり、デザインの考え方とやり方を学生さんや企業、自治体さんに伝えたり一緒になって考えています。
その一環で、デザイナーがどんなふうに考えているのか、
思考プロセスを文章化したほうが良いよなと思いnoteに書いていくことに。
今回はロゴデザインをするときのデザイナーの頭の中をお届け。
今回例にご紹介するのは、京都大学研究林の芦生の森を保護する活動団体
「芦生もりびと協会」さんのロゴマーク。
ロゴデザインの正解はケースバイケース。
さて、ロゴデザインと聞いたときに思い浮かべるのは、企業や団体の崇高な理念を一つの図象に凝縮したものだったり、企業名のアルファベットすべてが合体して一個のアイコンになっている、ハイコンテクストで情報密度の濃いものを想像しがち。
ロゴのデザインをお願いする方も、頼まれる方もソッチのほうがテンションが上がるので難しいロゴをいっぱい考えたりするものです。
もちろん、ロゴにはそういう一面もあり私もそういった哲学型ロゴデザインをすることもありますが、今回のロゴは目的達成のための機能型ロゴにしました。
冷たい目線で見たときに、ロゴの役割がわかってくる
そもそもこの活動は京都大学が研究のために保護していた原生的な森の保全を大学から地域住民が主体になって行うようになったものです。
芦生の森は、
という、大都市、京都の近くにあるのに結構すごい森。
この森の希少さ貴重さとその保全の大切さを理解してもらうための団体なのですが、もうすでに情報がみっちり!
研究林としての歴史
希少な自然の宝庫
街道として使われていた歴史資産
市民の手で管理しようという啓蒙
素人目線で正直な事を言ってしまうと、「なんだかすごい森をなんだかすごい大学だけじゃなくて、普通の人達にも親しんでほしい活動」なんだね!
くらいの認識にしかなれません。
デザイナーはどんなときだってクライアントの味方でなければならず、そのためにあえて徹底的にクライアントを突き放す冷たい目線を持ち続けないといけません。
この場合だと、「うわーこの活動一般市民に理解してもらうの大変そう!!!」です。
そんな状況で理念や概念を更に凝縮したロゴをデザインしてみなさいな!近隣住民のみなさんが「えらい活動してはりますなあ」と言って距離をとってしまうのが目に浮かびます。
そこで今回のロゴは「距離を縮める」に徹することに。
本作戦の概要を説明します。
森の嫌われ者のクマを可愛く登場させる
クマの親子を登場させることで、森を他人事から自分ごとに
優しさ、愛情、親しみやすさをデザインの意匠に盛り込む
森だから木のロゴにする事もできますが、これは難しい。人間って植物にはあんまり感情移入できないんです。心を持っていることがわかりにくいから。
そこで、森の動物に登場してもらうことに。
森の説明をおさらいすると、色々いる動物の中でもクマが目立ちます。
クマが嫌われ者に見えますね。きっとクマの悪評は森に関わるほどに耳に入ってくるでしょう。でもそんなクマも含めての生態系。愛すべき森。そこでクマに感情移入してもらうことに。
単品で出さず、親子で登場してもらうことで、「あ、こいつも子供の親なんだ、、親の子供なんだ、」と感じてもらい、さらに、「命が続いていくし、自分たちと同じように彼らも続けていかないといけないんだ」と無意識に感じてもらいたい。
さて、後は具体的なデザインの話になっちゃいますので軽く。
ロゴマークのくまさん親子はすべて円で構成されています。マルの集まりだけでクマを表現。こんな感じ。
まず大きなマルをつくってそれを小さめのマルでカットしたり、くっつけたりしてクマの形にしていきます。
もちろん、人間丸には親しみを感じるからです。
また、ロゴに使われている文字はひねらず奇をてらわず。目に優しくて読みやすいものにしています。今回はここでひねるところじゃない。と判断。
親ぐまはこぐまの肌の色の目、こぐまは親ぐまの肌の色の目で、身体に繋がりがる感じ(血の繋がり)をちょっとだけ表現してみました。
ロゴデザインの面白さと難しさ
以上簡単にロゴデザインをするときのデザイナーの頭の中を書いてみました。あらゆるデザインの中でもロゴは別格に難しく、一つの目的達成のためにとれるアプローチも無限にあります。デザイナーの数だけ。そしてどれが本当に正解なのかは、企業やブランドが成長して時間が経ってみないとわからない。そんなところがしんどくもあり、面白くもあります。
そんなかんじで毎週木曜日は、#デザイナーの頭の中 シリーズ書いてます!
あと、芦生もりびと協会、WEBデザインもしてます。
デザインについてのお話、他にもありますので興味があったら。
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