電車内でスマホの目覚まし音をとめない男に声をかけたら
山手線。
席が空いていたので座ることに。
すると浜松町駅にて、斜め前にすわった男性の目覚ましが鳴りだしました。
おそらく20代後半で、柄物のシャツの上に黒いジャケットを着て、黒いスラックスをはいていました。
彼は耳に有線の白いイヤホンをしていましたが、イヤホンはスマホとつながっていないのか、彼の両手に乗ったスマホから音がでており、電車内に響いていました。
しかしその男性は、下にうつむいたまま眠っており、いっこうに目覚ましに気づきません。
目覚ましがなり始めたとき、ぼくは海洋冒険の傑作と名高い『海底二万里』を読んでいました。
電車で周りの人たちがスマホの画面に見入っているときに、読書をするのは、なぜだか得した気分になれます。
その海洋冒険ロマン小説に没頭しようとしましたが、その男性の目覚ましの音が気になります。
男性も、もしかすると浜松町でおりたかったから、目覚ましをかけていたのかもしれません。
ですので、起こそうかどうか迷いましたが、結局はそのまま放置することに。
まわりの乗客も、ぼくと同じ判断をしていました。
目覚ましなんて、放っておいたらすぐに消えるだろうと思い、読書にもどります。
しかし、そんな予想とはうらはらに目覚ましが消える様子はなく、2駅を通り過ぎてしましました。
次の品川駅で降りる予定だったので、品川駅に到着する直前にたちあがり、ついでに男性を起こしてあげることに。
「なってますよ〜。」と声をかけながら膝をたたいてみました。
全然起きません。
力を強めにして再度声をかけながら膝をポンポンとたたいてみましたが、やはり起きません。
これは...
ぼくの中で悪い予感がしました。
「もしかして、死んでる!?」と、まわりの人の緊張もぼくに伝わってきました。
正直なことをのべると、そのときにまっさきにぼくの頭にうかんだことは「面倒ごとには巻き込まれたくないなぁ」でした。
予定もあるので、もう放っておこうかと思いました。
しかし、少しの好奇心と、彼が何かの病気かもしれないという思いで、もう一度声をかけることに。
「大丈夫ですか~?」と膝をさらに強めにゆらしてみます。
すると、いきおいよく男性の顔が上を見あげました。
そんな彼の顔面はとても白く、前日は金曜日だったので、一晩中飲んでいたのかもしれません。
驚異的なことに、彼は顔はあげただけで、眠り続けていました。
しかし、彼の指がたまたま、スマホの画面の目覚ましをとめるボタンに触れたようで、目覚ましは鳴りやみました。
おそらく二日酔いだろうし、目覚ましも止まったから別にいいかと、ぼくは品川駅で降りることに。
彼は、結局おりたい駅でおりることができたのか。
不思議な出来事でした。