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レビュー『世の初めから隠されていること』

ルネ・ジラールによる『世の初めから隠されていること』は、社会理論と人間の行動分析の領域においてひとつの大きな礎となる著作です。

初版は1978年に発表された本書は、人間の欲望、暴力、文化の起源とダイナミクスについての従来の常識に挑戦しています。

画期的な洞察力を備えたこの本は、社会と関係の形成に影響を与える基本的な力を深く理解する手助けをしてくれます。

まずは、重要となるコンセプトとして「模倣的欲望」が紹介。

これは、人間の欲望は本質的ではなく、むしろ他人の模倣や見習いによって形成されると主張しています。

文学、人類学、心理学といった幅広い情報源を駆使して、この模倣的プロセスの複雑さを分析します。

著者は、この模倣行動が制御を失うと、ライバル意識や競争にエスカレートし、最終的に破壊的な暴力につながる可能性があると論じています。

欲望の原初的な役割と、創造的かつ破壊的な結果の両方についてのジラールの探求は、従来のパラダイムに疑問を投げかけ、読者にとって人間性に関する基本的な前提を再考させます。

そして、もうひとつの本書の重要な要素は、「スケープゴートメカニズム」という概念。

著者は、社会がしばしば模倣的欲望やライバル意識から生じる暴力を抑制する手段として、犠牲者をつかうと主張しています。

このメカニズムによって、社会は集団的な攻撃を単一の個人やグループに向けることで秩序と統一を確立することたできます。

この考えは歴史的な文化的実践、宗教的儀式、神話、社会構造を分析するためのユニークなレンズを読者に提供し、複雑きわまりない人間行動と社会の進化を理解するための手助けをしてくれます。

ギリシャの悲劇から聖書の物語まで、幅広い文学を引用しながら、ジラールは人間の歴史全体にわたる模倣的欲望とスケープゴートメカニズムの繰り返しパターンを示します。

文学、人類学、哲学の融合は、人間の行動と社会の進化の複雑さを理解するための包括的な枠組みを作り出しています。

まとめると、『世の初めから隠されていること』は、人間社会の基盤に潜むダイナミクスを深く探求した、洞察力に富んだ一冊です。

ルネ・ジラールの提唱した「模倣的欲望」と「スケープゴートメカニズム」という画期的な概念は、伝統的な視点に挑戦し、歴史、文化、人間関係の分析に別の視点を提供しています。

前著『暴力と聖なるもの』では、すべての社会秩序は根源的な暴力にもとづくことを解き明かしたジラール。

本書では、その洞察を「聖書」に適応しています。

批判的かつ革命的に「聖書」を読みなおし、著者の多角的なアプローチによって人類のもっとも古い秘密を探り出しています。

この本は、人間の本質の複雑さと文明を形成してきた力の影響を考えるよう読者に誘います。


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