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レビュー『遅刻してくれてありがとう』

ピュリツァー賞を3度受賞した世界的ジャーナリストであるトーマス・フリードマンが放つベストセラー。

現在を、歴史上もっとも変化が激しい「加速の時代」ととらえ、それらの変化とどう向き合うかについて著者の考えを記しています。

フリードマンの他の著作である『フラット化する世界』や『グリーン革命』という、ストレートなタイトルに比べ、本作のタイトルはひねりがあり「思考のための一時停止」の重要性を訴えています。

変化に対応し続けるには、「学び続けること」が必要ですが、時には立ち止まって自分の考えを整理することも必要。

そんな時は、たとえ待ち合わせの相手が遅れてときにも、「遅刻してくれて、ありがとう」といえる心の余裕が重要であると著者はいいます。

現在世界で起きている「大きな変化」について知り、キャリアに活かしたいビジネスマンや、これから進路を決める大学生におすすめ。

本書での主要なメッセージの一つは「学びつづける」こと。

変化が加速する時代においては、学校で学んだ知識があっという間に滅びてしまい、一生学びつづける人間だけが、長い人生のなかで変化に対応できる、と著者はいいます。

たしかに、インターネットやクラウド技術によって世の中が便利になった半面、仕事をしている人は前よりもずっと忙しくなってしまいました。

これは技術に振り回されているともいえ、新しいことを学びつづけることができなければ、ハイテク化に対応できない人材になってしまいます。

そして、本書のもう一つのメッセージは、「健全で強力なコミュニティ」の重要性。

加速の時代では、弱国が内線やテロにより崩壊し、大国も政治的混乱が増していく傾向にあり、その原因が弱いコミュニティ。

「異説を受け入れ、独善的にならずに、信頼で繋がり、若者にとって思いやりのある大人やメンターがいるコミュニティ」こそが、真の多元的共存を実現し、加速の時代に、自らと家族を定着させる基盤になると著者はいいます。

上巻はテクノロジーの変化への視点が多く、下巻は政治や地政学についての内容。

変化に対応するまえに、まずは自分自身をふり返るための視点を与えてくれました。


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