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レビュー『ゴースト・ワーク』

黄色いカバーの本にめっぽう弱いのだが、最近手に取ったのが本書。

デジタルプラットフォームの自動化の背後にいる、小さなタスクを実行している人びとにスポットをあてた本。

タイトルにある「ゴーストワーク」とは、ユーザーからは見えない人たちの労働のこと。

「ゴーストワーク」に従事する人間の労働者を「ゴーストワーカー」と呼び、こういった人々が機械だけではまだ処理できないタスクを担っている。

人工知能やアルゴリズムの支援を受け、ゴーストワーカーたちはタスクを実行し、デジタルプラットフォームを支えている。

本書は、ますますデジタル化する経済における「ゴーストワーク」という隠れた世界を、徹底した研究と魅力的な物語性を通じて探求している。

多くのグローバルなテック企業のゴーストワーク例が紹介されており見ごたえ抜群だ。

SF映画さながらの世界で、いままで漠然と抱いてきた労働観がくずれおちる。

そして、新たに出現したグローバル労働力の倫理的および社会的な側面を検討するよう、ぼくたちに問いかける。

経済がぼくたちの目の前でどのように変化しているかを理解しようとしている人には、一読の価値がある。

著者たちは、オートメーションの背後にある隠れた労働者たちとともに語り、彼らが何をしているのか、自分たちの生活がどのような影響をあたえているのかを学ぶ。

ゴーストワーカー自身の個人的な体験を織り交ぜながら、読者に彼らの苦労や願望、急速に変化するデジタル社会で直面する課題に共感させられる。

そして、ゴーストワーク産業を形作る「構造的な要因」を包括的に分析。

著者たちは、技術企業とそのプラットフォームが、ゴーストワーカーの生活に与える影響を批判的に検討し、低賃金、福利厚生の欠如、不安定な雇用などの問題を浮き彫りにする。

また、労働者、クライアント、プラットフォーム所有者の関係に内在する「権力のダイナミクス」にも光を当てている。

この徹底した分析により、ギグエコノミーの成長がもたらす潜在的な影響について考えることが読者に促される。

技術と仕事、社会の接点に関心を持つ人々にとって必読の書といえる。

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