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「ビジネスに潜む闇」――営業と詐欺のグレーゾーンとは

30代になってからだろうか、すべての広告や宣伝に対して、「ひとまず否定する」という態度をとるようになった。

というもの、広告と宣伝といったものは、こちらの財布からお金を出させるための企業努力や戦略だと知ったからだろう。

また、商品を買っても、そこまで幸福感や満足感があがるわけではないと気づかされたからでもある。

そして、高価なものを見栄や興味で買い、痛い目にもあった。

「ひとまず否定する」という態度によって、純粋に広告を楽しめなくなってしまったが、突発的な出費が減ったので、家計には優しい。

そんななか、書店で目にとまったのが『営業と詐欺のあいだ』という本。

20代のころに読みたかったと唸らせる本で、ビジネスにおいて営業と詐欺の境目について探究する書籍だ。

天才と狂人は紙一重というが、営業と詐欺も表裏一体であるというがわかる。

営業や広告にかかわる人はもちろん、詐欺に騙されたくない人にも俄然オススメ。

自分でお金をつかう機会が増えると同時に、詐欺が身近に近づいてくるであろう、高校卒業後の人や大学生のうちに読んでおきたい本だ。

「より多く売る方法」と「詐欺に騙されない方法」の両方を学ぶことができる。

本書ではまず、営業と詐欺の本質的な違いについて解説。

営業は、商品やサービスを提供することによって、相手方の利益を追求することが目的。

一方で、詐欺行為は、相手方に不利益をもたらす行為であり、自己の利益を追求することが目的だ。

このように、営業と詐欺の根本的な目的が異なることが、二つの行為の本質的な違いとなる。

つぎに、モノが売れない時代でも、モノを売りまくる一流の営業マンのスキルについて解説。

たとえば、一流セールスマンが伝える三つのことは、「あなたは幸せになれます」というメリット、「この商品こそがあなたが求めているものです」という信頼、「適正な価格です」という価格。

彼らは、絶妙なタイミングで商品を薦め、必殺の決めゼリフを持ち、いつの間にか絶大な信頼感を勝ち取ることができる。

さらには「あなたは特別な人だ」と自尊心をくすぐりながら相手を気持ちよくさせ、必要のないモノまで買わせてしまう。

商品説明をしなくとも、顧客は満足し、騙されたと訴えることもない。

詐欺師と一流の営業マンは、まさに紙一重ということが分かる。

また、本書では詐欺行為が行われる社会的背景についても探究。

詐欺行為は、社会的弱者や孤立している人々を狙うことが多く、社会的格差や孤独感が背景にあることが多いと著者は指摘している。

前半では騙されないコツや、人格といったものを説明。

後半では、振込め詐欺をはじめ、名簿詐欺、愛人詐欺、教材詐欺、副業詐欺、被害者の会詐欺といった様々な手口がリアリティーのある実例として紹介され、撃退法も掲示している。

とくに、カルト宗教の「洗脳を加速する原理」を読み、恐怖感をおぼえた。

そして、騙される人はカモリストに入っているので連鎖的に詐欺にあうということも本書で初めて知り、詐欺集団の手口を知ることが、自分を守るための最大のディフェンスになると思わされた。

著者は大手企業の買付バイヤー。

多くの商売人を相手にした体験から本書を書いている。

本書の中で頻繁に出てくる「お金を奪い取るには」や「商売とは、金の奪い合いである。」といった刺激的な語彙をあえて使うことにより、読者への注意喚起をうながしているように思う。

まとめると、本書の「営業と詐欺のあいだ」とはまさに言い得て妙。

たしかに「営業や広告なし」に売れ、売れるべきである「本質的に良好な商品」は究極だ。

しかし、人がものを買うとき、本質的ではないできごとに心踊らされていても、ときに本質的ではなく、表面的であることが人間の本質。

そういった事実を踏まえて読め、良質な発見にみちた本だった。

そして本書は、ビジネスにおけるトラブルや問題を解決するための指南書であると同時に、社会的な問題についても警鐘を鳴らす意義を持っている。

読者は、この書籍を通じて、自己のビジネススキルを高め、騙されないためのマインドセットを得ることができるだろう。

現実的な問題を扱っているため、誰にとっても有用で、ビジネスマンだけでなく、消費者や一般人も、詐欺行為を見抜くための知識を身につけることができる。


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