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レビュー『五輪書』宮本武蔵

日本人ならだれでも知っているであろう宮本武蔵。

しかし、武蔵が本を残していることを知っている人は、意外と少ないのではないでしょうか。

その本が1645年に発刊された『五輪書』です。

彼独自の兵法観を語ったものですが、その知恵と洞察力は時代や文化を超越し、個人の成長やビジネスの発展を求める人々に知見をもたらしてくれます。

孫子』ほど人気ではないものの、「勝つこと」を主眼においているため応用が効き、戦略、哲学、武道に関する古典的な論考となっています。

概要

晩年、熊本藩主・細川忠利に客分として招かれていた武蔵。

死を目前にした彼が、熊本城下の西方にある金峰山の雲巌寺の洞窟・霊巌洞に一人こもり、渾身の力をふりしぼって書き残した兵法書が本書です。

内容は武蔵の思考と経験を凝縮させたものとなっており、構成は以下の「地水火風空」の五巻からなりたっています。

・「地之巻」は兵法や二天一流の概略
・「水之巻」は太刀筋や剣術の極意
・「火之巻」は実戦に勝つための要諦
・「風之巻」は他流派との比較
・「空之巻」は二天一流の到達した境地

宮本武蔵の二天一流が、いかに「勝つ」というただ一点を合理的につきつめて到達したものなのかということが分かります。

自己啓発に関して

本書は適切な心構えと態度をそだてるための貴重なガイドを提供しています。

武蔵は、自己認識、適応力、そして自分の強みと弱点を深く理解することの重要性を強調しています。

これらの原則は直接的に個人の成長に応用でき、限界に立ち向かい、変化を受け入れ、絶え間ない改善を追求することを奨励しています。

たとえば、「たへず稽古有るべき事也」(地之巻)と、継続の重要性を訴えていたり、「能々(よくよく)工夫すべし」(水之巻)と、みずから工夫することの重要性を述べ、「けふ(今日)はきのふ(昨日)の我にかち...」(水之巻)と、つねに自身を更新せよと語りかけています。

ビジネスへの応用

ビジネスの発展にも武蔵の洞察力を活かすことができます。

たとえば、相手をよく観察し、極限状態でも自身の平常心を保ち、心理戦を制し、環境を利用して先手を取る、といったおおくのアイデアをくみ取ることができます。

起業家やプロフェッショナルは、彼の教えをもちいて効果的な戦略を立案し、情報を元にした決定を下し、市場の複雑さに立ち向かうことができます。

とくに武蔵の「タイミング」の概念は重要であり、機会が訪れる際にはそれを掴むことを奨励しますが、必要な場合には忍耐も行使するよう促します。

また、「他流の道をしらずしては、我一流の道慥(たしか)にわきまへがたし」(風之巻)と、ライバルや競争相手に学ぶことをすすめています。

おわりに

まとめると、『五輪書』は宮本武蔵による永遠の傑作であり、個人の成長、ビジネスの発展を求める人々に共鳴するものです。

武道の哲学、戦略的思考、深い知恵の融合は、現代の世界の課題に適用できる貴重な教訓を提供しています。

本書はやや難解で比喩的な言葉を用いていますが、この特性こそが読者の内省と批判的思考のプロセスを奨励し、深く内容と関わるように招いてくれています。

自己認識、適応力、タイミング、バランスといった概念を取り入れることで、読者は個人的成長を加速させ、ビジネスの取り組みに新たな知恵と戦略的洞察力を持って取り組むことができるでしょう。


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