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入院中に変わった質問してくれた人

つい先日、カーテン越しにとつぜん声をかけられた。
声の主は向かい側のベッドの60代くらいのご婦人。
「今大丈夫ですか?ちょっとお聞きしたいことがあるんですけど」
年上の患者さんに、ごくたまにスマホの操作について質問されることがあるけれど。はい、なんでしょう。
カーテンを開けて対面し、聞かれた。
「どうして毎日そんなに元気なんですか?」
何だ何だ、想定外の質問。

入院最長記録更新でほとほとうんざりしてる私。
私史上一番弱ってる。
終りなく繰り返すイレウス、手術もリスクありと言われている今の私には、昨年受けた抗がん剤治療はちょっとハードなハイキングくらいに思う。
毎回がんばって坂道を登った後は、元気に青空の下でお弁当食べれた。思い返してみるとそんな感じ。

質問主のご婦人によると、点滴棒にたくさんの管ぶらさげてガツガツ病棟をウォーキングしている私は、ど根性のかたまりのように見えるらしい。
→3度の食事なしは1日が途方もなく長いので、歩くくらいしないと身がもたないだけ。

医師に、この管抜いてあの管にして、どうせCT撮るならレントゲンすっとばして早く撮って、とか要望するのも「なんて逞しい人」となるらしい。
「先生に色々言ってらっしゃるから、ご職業は看護師さんなんですか?」
→まさかまさか、めっそうもない。痛みに臆病なので、とにかく苦痛を回避しようと必死なだけ。
イレウス管を鼻から挿入するときも、絶対薬で眠らせてから入れて、とちょっとウソ泣き入れながら懇願しているくらいなのだ(医師によっては、挿入中トラブルあったときに眠っていると分からないと難色示すから)。

そして看護師さんとバカ話をして笑っているのは「なんて元気な人」。
→ちょびっと主治医の悪口なんか言うと看護師さんもノッてくるので、ストレス発散にしゃべっているだけ。

「私、病院食が口に合わないだけで気分が落ち込んで辛かったけど、何か月もご飯抜きのあなたがウォーキングしてるんだものね。なんて元気で根性のある人なんだろうって‥‥。」とご婦人。
自分もくよくよしていられないと励まされた、と言ってくれた。明日退院するので、元気の秘訣を聞きたかったと。
→「秘訣」 ???分からない。

痛い目にばかりあうと、心の方はもってくれるだろうかと不安になることもある。
でも他人から見た私の姿を知って、なんだ、全然大丈夫だとむしろ励まされてしまった。

励ましの定義

それでこの歳にして遅すぎるけれど、気付いた。
誰かを「励ます」って、前向きにいこうとか、頑張ってとか休んでとか、相手に課題を与えることじゃなくて、その人の価値を伝えることなんじゃないか。それは、その人のことをちゃんと見ていないと難しい。

私、振り返ってみたら、数少ない友だちからも、家族からも、純度100%の励ましを受け取り放題もらってきた。
逆の立場だったら同じようにできたかどうか。自信がない。
ああ、「元気の秘訣」は私の闘病ライフがほぼ「ありがとう」成分でできていることなのかも。
そのことに、さらにありがとうと思う。

どこかでやっていた花火大会が病室の窓から見れた。
たまに良いことがある入院生活。










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