永い後日談のネクロニカ:ドール構築論(撃破編)

はじめに

 上の記事で、大まかにドールにどのような役割が存在するかを説明した。今回は4種類の役割の中から撃破役のドールの構築について考察していく。
 なお、上の記事ではルールブックにあるマニューバのみの構築例を載せたが、今回以降はサプリ「歪曲の舞踏」にあるマニューバも使用していく。

撃破役の役割

 まずネクロニカは戦闘のあるゲームであるからして、敵を倒せなければクリアできない。そのため、絶対に必要になるのが手駒(特に、強力なボス)を倒すことができるドールである。
 定義は複数回使える攻撃マニューバを持っていること。全てのドールはあごとこぶしを持っているため、この役割を果たす事が可能である。
 一般的にはシナジーのあるスキルが多くダメージを伸ばしやすい白兵、次いで肉弾の攻撃マニューバが選択される。
 複数回使えるとはどういうことかというと、例えば武装レベル2にある「手榴弾」はラピッドマニューバであるために、基本的には1ターンに1度しか使えず、この条件を満たさない。しかし、ソロリティスキルの「号令」、レクイエムスキルの「死の手」、ゴシックスキルの「背徳の悦び」などを用いれば再利用が可能であり、これらを活用して何度も攻撃できるのであれば条件を満たすことになる。 

 ここまでが前の記事のコピペであるが、当然基本パーツだけでは撃破役としては心もとない。強力な撃破役には、以下の3つの要素が重要となる。

①火力を出せるマニューバを使う
 いきなり身も蓋もない話だが、ネクロニカにおけるマニューバ間には確かな火力差が存在している。

 上の記事において攻撃マニューバの強さを評価する方法を考えたのだが、これら攻撃マニューバのうち、撃破役として最低限取得しておくべきなのは全体攻撃以外で評価スコア30以上のラインが目安であろう。
 初期評価スコアが30未満のマニューバであれば、出目または威力を1上げるごとにスコアにポテンシャルの値を足していき、30に達したあたりが実用ラインである。
 スコアもポテンシャルも低い群を実用レベルに持っていくのはかなりの愛が要求され、取得スキルが大きく制限される。例えばこぶしだけで戦おうというのであれば、加速する狂気+狂鬼+怪力+失敗作あたりまで強化した段階で30に達する。因みにどくばりはここまで強化してなお30に達しないため、初期作成ドールであれば手負いの獣で出目を+2以上確保するしかない。

②攻撃回数を増やす
 攻撃回数が多ければ火力が高いのは自明の理である。ネクロニカの戦闘はおおむね1ラウンド目に大勢が決する。そして、1ラウンドの攻撃回数は
(最大行動値-攻撃以外のマニューバに割くコスト)÷攻撃マニューバのコストの小数点以下を切り上げたもので表される。
 そしてラウンド内火力はマニューバのダメージ期待値×攻撃回数+ダメージを上げるマニューバとなる。
 ジェットノズル以外のダメージを上昇させるマニューバは撃破役にとってはあまり必要とされない。基本的に1ラウンドに1回しか適応されない関係上ラウンド内火力にあまり寄与しないためである。
 ダメージを上昇させるというのは上で示したスコアを上げるもの全般を指し、出目を上げる支援マニューバも含む。
 すなわち、他の役割を持とうとしなければ、撃破役は攻撃マニューバ以外は1回でも多く攻撃するために行動値を上げる事が最優先と言っていい。

③安定して攻撃できるようにする
 
これは②に付随する要素のようなものだが、どんなに高火力のマニューバであっても当たらなければ意味がない。
 これは命中率の話ではなく、攻撃する対象がいなくなるとか攻撃しようと思ったら逃げられるという部類の話である。
 火力を発揮できる状況が限定的になるほどこういった事態が起きやすい。例えば奈落への抗いによる攻撃回数増加を軸に射程0のマニューバで組んだりすると、奈落に行く手間はかかる上奈落の敵がいなくなれば機能停止してしまう。
 そういった事態を避けるためには、姉妹の指揮役にその状況への対策を搭載してもらうか、より広範に活躍できる構築を組むしかない。
 場所に縛られるスキルを取得する場合は射程のあるマニューバを使う、射程のないマニューバで戦う場合はラピッド移動で逃げる敵が出る可能性があるのであれば刹那を取得するなどが考えられる。

構築方法

 ポジション選択

 ポジションはドールの性格傾向に関わるため、やりたいロールに合わせるのが一番である。
が、性能として撃破役向きのポジションはホリック、ジャンク、オートマトンの3種である。
 ホリックは何と言っても加速する狂気によって状況を問わず出目+1補正がかかるのが強い。修羅、業怒も単発とはいえ強力な火力補助であり、瞬間火力、ラウンド火力共に優れる安定したポジションである。
 ジャンクは出目に関わるスキルが3種類も存在するが、どれも癖が強い。しかし手負いの獣はリスクこそ大きいものの出目補正が最大常時+3と他に類を見ないほど強力であり、地獄の住人も立ち位置こそ制限されるものの射程があればカバーでき、十分実用レベル。立ち回りに難はあるものの高いラウンド火力を期待できるポジションである。
 オートマトンは無茶による圧倒的な振りなおし回数が魅力であり、出目の補正が低いときの命中率の担保や、強引に大成功を出して攻めに行くなどの使い道がある。パーツがコストであるため考えなしに使うと痛い目を見るが、ラウンド火力の底上げと安定化が見込めるポジションである。
 どれも強力であり好みで選んで差し支えないが、強いて言うのであれば後述するクラスで高い出目補正を期待できるのであれば無茶は腐らせがちになるためホリックかジャンク、逆に出目補正が低く+1だけでは命中が不安定となればオートマトンかジャンクがいいだろう。
 なお、キャンペーンまたは初期寵愛などで寵愛点20以上の取得が見えている場合は、無茶と手負いにシナジーがあるためオートマトンかジャンクから始めるといいだろう。

 クラス選択

 クラス選択はドールの構築に大きく影響するため、使いたい攻撃タイプを効率的に強化できるスキルの揃ったクラスを選択すればいい。
 白兵を使うならメインクラスはタナトスであり、死神は必ず取得するべきである。姉妹の同時攻撃が見込めるならば殺劇、見込めないならば刹那が候補に挙がる。ただし刹那を取得すると姉妹の支援を受けられない点には気を付けること。
 肉弾を使うならメインクラスはバロックであり、狂鬼と怪力を取得するべきである。この二つは状況を問わず火力を増加させる効果であり、バロックスキルでこれら以上に火力に貢献できるものはない。
 射撃を使うならメインクラスはレクイエムであり、銃神と子守唄を取得するべきである。子守唄で出目の補正が下がるが、コスト軽減の恩恵はその比ではない。
 砲撃だけはメインクラスをあまり縛られない。と言えば聞こえがいいが、砲撃を得意とするクラスがないだけである。あまり縛られないとは言っても結局ステーシーかタナトスの2択くらいである。
 サブクラスはメインで足りない強化値を補う事と目的に応じたスキルから選択する。撃破以外の役割を持つ場合も、基本的にサブクラスを利用する。
 以下のそれぞれのサブクラスとしての特徴を上げていく。
ステーシー
 迷ったらステーシーでいい。サブクラスとしての安定感は随一である。
失敗作は無条件の出目補正であり、さらに武装1変異1とおよそあらゆる攻撃タイプに適応できる強化値を持つ。失敗作以外では、防衛の役割を持つために庇うを取得する事なども考えられる。庇ったダメージを手負いの獣によって火力に変換する動きが強力である。

タナトス
 状況は選ぶがステーシーよりも攻撃的である。姉妹の協力が必要になるが大きな火力補助となる殺劇、手駒の抵抗を許さずに火力を押し付ける刹那が強い。武装1改造1の強化値の使い勝手も悪くない。ただし白兵の場合タナトス/タナトスは初期状態では有用なものの、特化スキルの無限解体が弱いため、無限解体に拘りがあるのでなければCPでは避けた方がいい。

ゴシック
 撃破のサブクラス向きとは言えない。切断武器であれば悪食が有効になる場面があり、また出目補正が高ければ完全捕食が使える可能性がある程度である。こぶしやあごの攻撃を強化するなら引き裂きはとても強いが、他の攻撃手段があれば不要である。変異1改造1という強化値から武装3の取得が遠く、白兵向きでないという事情もある。

レクイエム
 射撃以外でサブクラスに選ぶ意味はあまりない。集中はコストがある分失敗作に劣り、死の手は強力なもののほとんどの場合はよぶんなうでのほうがより強力かつ取得も容易である。射撃に限っては特化スキルの魔弾が非常に強力であるためにレクイエム/レクイエムにする意味がある。ただし武装2という強化値が仇となり武装が4まで上がってしまう。基本的に攻撃手段ばかりの武装は3以上に上げる意味が薄いため、1レベル分の損失といえる。

バロック
 あまり撃破のサブクラス向きではない。怪力は肉弾白兵のどちらにも効果があるものの、強化値が変異2であるため白兵においてはメインタナトスでは武装3に届かない事が難点となる。連撃主体の肉弾の火力を上げる手段として凶化器官は適さず、特化スキルの異形存在も弱くはないが積極性に欠ける。歪極でよぶんなあたまなどの変異3を取りたい場合などは考えられる。

ロマネスク
 機械仕掛けによってガントレットを取得できるため、特に肉弾においては意外と悪くない。白兵では改造2の強化値が災いしてメインタナトスでは武装3に至らない…ライトセイバーやパイルバンカーという選択肢はあるが。射撃に寄与する改造3はないため射撃には全く向かない。ただし基本的に火力に寄与するスキルが少ないため伸びしろには乏しい。

サイケデリック
 論外
…と言いたいところだが一応虚空の玉座によって支援を受けつつ妨害を無力化することが可能。強化値を1損失するほどの価値はない。

 マニューバ選択

 役割の①~③を考慮し、十分な火力を出せそうかを確認した上でマニューバを取得していく。具体的にどれだけのダメージを出せそうか気になった際は以下の記事を参考に1回あたりのダメージを出し、最大行動値とマニューバのコストから1ラウンドに何回攻撃できるかと合わせて考えるとよい。
 基本的に肉弾は変異3、それ以外は武装3が採用されることが多い。

構築例

 上に挙げたような点を踏まえた構築の例を紹介していく。

例①白兵
ポジション:ホリック…加速する狂気
メインクラス:タナトス…死神、殺劇
サブクラス:ステーシー…失敗作
武装:3…カンフー、発頸、単分子繊維
変異:1…しんぞう
改造:1…リミッター
 およそ環境トップの最強アタッカー。最低+2、最高+4の補正を持ち、抜群の安定感を誇る。未練に恋心を持っていれば「恋心リミッター」というテクニック(※NCによっては使えないこともある)によって最大行動値も13確保でき、攻撃回数も申し分ない。

例②肉弾
ポジション:オートマトン…無茶
メインクラス:バロック…狂鬼、怪力
サブクラス:ロマネスク…時計仕掛け
変異:3…しっぽ、けもみみ、にくむち(腕装備)
改造:2…ジェットノズル、エナジーチューブ、ガントレット(時計仕掛け)
 けもみみとしっぽがついている。切断対策をされた手駒に対しても威力4~5を押し付けることが可能。低い出目は無茶でカバー。最大行動値は13あり、攻撃以外にコストを使わなければ1ラウンド目には5回攻撃が可能である。ジェットノズルは常用すると基本パーツが枯渇するため、ここぞという時のもう一押しに。

例③射撃(制御兼任)
ポジション:ホリック…加速する狂気
メインクラス:レクイエム…銃神、子守唄
サブクラス:タナトス…殺劇
武装:3…カンフー、ショットガン、アンデッドガン
改造:2…リミッター、エナジーチューブ
 ショットガンに特化した射撃ドールは撃破役としても優秀である。驚異の最大14回攻撃に加え、出目の補正も最大+3あり、大成功も十分に狙える。アンデッドガンは射程の長さから殺劇を載せにくく、この構築では少々使い勝手が悪いが、武装3の枠で取得するものとしてはやはり最も有用である。

例④砲撃(防衛兼任)
ポジション:ジャンク…手負いの獣
メインクラス:ステーシー…庇う、失敗作
サブクラス:バロック…歪極
武装:1…火炎瓶
変異:3…しんぞう、けもみみ、だるま、よぶんなあたま(歪極)
改造:1…リミッター
 姉妹を庇い、腕脚に受けたダメージをだるまで各部位に割り振り、手負いの獣で火力に変換していく。頭→脚→胴の順に損傷しなければならず、真っ先に胴を潰されると詰みかねない不安定さを抱えているが、準備が完了すれば最大で行動値15ぶんの火炎瓶を+3の補正で投げる強力な砲台となりうる。

おわりに

 先行研究の二番煎じをできるだけ避けようと考えているうちに2週間も経ってしまったが、撃破役はネクロニカの華であり、それ故に研究も進んでいる分野である。この記事のみならず、様々な意見や記事を見た上で、火力を出しつつドールの個性を表現していく構築を考えるといいだろう。

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