珍しく漂うバンド感も嬉しい 『Eclipse』 YNGWIE MALMSTEEN
イングヴェイ・マルムスティーンといえばやっぱり1stアルバムでしょうし、なんだかんだ言ってもギターを手に取ったら弾けるようになりたいインストの全てはここにあるというのが本音です。
他に代表作を挙げるのなら『Trilogy』や『The Seventh Sigh』、ジョー・リン・ターナーが歌っている『Odyssey』や、コージー・パウエルが叩いている『Facing The Animal』を選ぶ方もいるでしょう。それぞれが間違いなく名盤ですが、私が好きなのは『Eclipse』(1990年)です。
私は『Alchemy』までしか聴いていません(すみません)が、そこまでで考えてもきっと本作の優先順位は高くないと思います。
しかしながら本作は私が多感な時期にリリースされているうえに、買ったり借りたりしたものは大切に繰り返し聴くしかない環境だったこともあって擦り込まれていまして、いま聴き返しても「やっぱりいいな」と思う1枚です。
まずなんと言っても、アルバム・ジャケットが良いです。彼のような音楽ではこういう部分も大事だと思うのですが、もうちょっとやりようがある気がするジャケットが多い中では抜きんでて良い出来だと思います。当時もこのポスターは天井に貼っていました。
バンドとしてはジョー・リン・ターナーというビッグネームが抜けた後であり、後任へのハードルは高くなっていましたが、ヨラン・エドマンが選ばれました。線が細く感じるところはありつつも、とても合っていたと思います。
冒頭の ⑴ Making Love 、⑵ Bedroom Eyes には若干の「これじゃない」感が漂います(←もちろん私の感想です)が、ここを乗り切っていただければそこから先は文句のない世界が拡がっています。
⑶ Save Our Love はイングヴェイ楽曲の中でも屈指のバラードだと思いますし、⑸ Devil In Disguise はイングヴェイ流のへヴィネス様式美にヨランの歌唱がとてもハマっています。
⑹ Judas は世界観を壊さない程度のキャッチーさがある良曲で、⑼ Faultline は(たぶん)これまでになかった曲調で、美しいメロディを持ったヘヴィ・メタルだと思いますし、ここでのソロは素晴らしいです。
このアルバムでのイングヴェイはギターをフルートやトランペットのように聴かせたりもしていますが、それも曲調に合う形で使われていると思います。
そして、⑷ Motherless Child 、⑻ Demon Driver 、⑽ See You In Hell (Don't Be Late) はまさしくイングヴェイ印の曲で、どれもアホほど聴きましたね。
特に⑷のドラマチックさには心底感動しました。冷静に見ればギター・ソロが長いのですが、聴いてる時はそれが気にならないくらいにハマっていて、これ以外のソロはないという感じです。またキーボードが効果的に使われていて、よくもインギーがこれを許したなと思います。
イングヴェイといえばキーボードはイェンス・ヨハンソンだった訳ですが、このアルバムからマッツ・オラウソンが担当し、全編を通じて良い仕事をしてくれています。イングヴェイも彼を気に入ったのか、兎角メンバーが変わりやすい中でマッツは長らく在籍することになります。2015年に亡くなったのはとても残念でした。
そして、本作の最後はインストの ⑾ Eclipse で締めくくられます。イングヴェイには神インストがたくさんありますが、⑾ も相当カッコいい。疾走感がエグいのはギターはもちろん、バンドによる部分も大きいと思います。
本作からバンド全員がスウェーデン人となったのがどのくらい影響しているのかわかりませんが、他のアルバムに比べて珍しくバンド感が(ほのかにですけど)薫るのが私は嬉しくて、だからこれが好きなのかもしれません。
イングヴェイは傲慢な言動から、その音楽とは切り離されたところで判断されてしまっていることが少なからずあると思いますし、「どれも同じじゃないか」という指摘もあると思いますが、諸々ハマった時にはそのカッコよさに抗うことは出来ません。
あれこれ言ったところでそのテクニックはとんでもないですし、そこから生み出される旋律は美しい限りです。本作は決してギターだけじゃない曲も並んでいると思いますし、これをリアルタイムで体験できたことにとても感謝しています。
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