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変わらずロックしてくれている姿に目頭が熱くなる 『So Happy It Hurts』 BRYAN ADAMS

ブライアン・アダムスが15作目となる『So Happy It Hurts』をリリースしてくれました。先行して何曲かがYouTubeで配信されていましたが、1曲目から通して聴きたかった私は視聴を回避しながら待機しておりました。

ここ数作、軽快かつコンパクトなロック・アルバムが続いていましたが、本作はもう少しロック・テイストを強くしたような印象です。マット・ラングと一緒にプロデュースしていますので、その影響もあるかもしれません。

曲の共作者にはマット・ラングに加えてジム・ヴァランス、グレッチェン・ピータースという、これまでに何度もクレジットされてきた名前が勢揃いしており、ファンにとっては間違いのないアルバムになっていると思います。

⑴ So Happy It Hurts が始まった瞬間から「ブライアンだわー」と安心しながら高揚するという意味不明の状態になり、⑺ Kick Ass など、コロナ禍での停滞感を吹き飛ばしてくれるような曲が多いです。

もちろん、ブライアン的ラブ・バラードも収録されていますが、そこでもかなりロック調です。全12曲の40分はあっと言う間で、繰り返し聴いています。今更ですけど、ほんとにいい声してますわ。

私のお気に入りはアルバムを締めくくる ⑿ These Are The Moments That Make Up My Life です。そのタイトル通り、日常の何でもない瞬間への感謝を高らかに歌うといった感じなのですのが、こちらとしてはコロナ禍においても変わらずにロックしてくれるブライアンの姿を思い浮かべて「いやいや、あんたこそが俺の人生のあらゆる瞬間を彩ってくれたよ」と目頭が熱くなります。

ブライアンはコンスタントに作品を提供し続けてくれていますので、どの時代のどの瞬間でもその時のアルバムというのが存在しており、私にはそれぞれのアルバムとともに思い出があります。

『Reckless』には洋楽に触れ始めた頃の高揚感、『Into The Fire』には真新しいWデッキラジカセ、『Waking Up The Neighbours』には輸入盤が入っていた縦長の箱を飾っていた部屋、『18 Til I Die』にはラジオだけだった営業車でCDを聴けるようになった頃の喜び、『On A Day Like Today』には引っ越しで少し広くなった部屋、『Room Service』には転職による中途研修中(まさにホテル暮らしでした)の不安な気持ち、『Shine A Light』には退職して主夫になることを決めた時の様々な出来事、それぞれが蘇ります。

こんなことからも、寡作なアーティストより親密に感じるのが私にとってのブライアンです。

ブライアンはヒット曲が多い上にラブ・ソングの比率が高いことから、いささか軽んじられているように感じる時があります。もっと評価されてもいいんじゃないか(音楽誌で全ディスコグラフィー徹底解析とかやってほしいです)と思いますが、映画に関係した曲も多いですから、深掘りして語られることが少ないのは仕方がないのかもしれません。

だからといって曲の価値が損なわれるではありませんし、こんなにも多くの曲で人生の様々な瞬間に寄り添ってくれたブライアンには感謝しかありません。

本作もコロナ禍で続いた鬱々とした日々を吹き飛ばしてくれた一枚として振り返ることになりそうです。一生ついて行くよ、ブライアン。

本作でブライアンは再びベースも弾いているようでして、ライブDVDの「Live At Slane Castle」が思い出されます。キース・スコット、ミッキー・カリーとのトリオで行われたこのライブも本当に素晴らしい映像になっていますので、こちらも多くの人に観てほしいです。最後の「Please Forgive Me」大合唱はヤバいです。

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