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プロデュース作品に通じる魅力であふれる 『Shine』 DANIEL LANOIS

音楽を好きな人であればきっとダニエル・ラノワがプロデュースしている作品に遭遇したことがあると思います(言い過ぎだったらすみません)。

U2の名盤と呼ばれるアルバムの多くには彼の名前がありますし、ピーター・ガブリエル、ボブ・ディラン、エミルー・ハリス、ロビー・ロバートソン、ニール・ヤング、ザ・キラーズ、ウィリー・ネルソン(『Teatro』は素晴らしいす)など、そのプロデュース業の質をアピールするには充分過ぎる名前ばかりです。多くの仕事でブライアン・イーノと一緒なのも、その能力を証明するものになっていると思います。

そんなダニエル・ラノワですが彼自身も結構な数のアルバムを出していまして、私は『Shine』(2003年)をよく聴きました。決して派手なアルバムではありませんが、彼がプロデューサーとして関わってきた作品群に通じる魅力にあふれています。

⑴ I Love You の始まりから「随分と雰囲気のある曲が始まったな」と震えますが、コーラスで入ってくるエミルー・ハリスの声で「ヤバいな、こりゃ」と持っていかれます。⑵ Falling at Your Feet ではボノが歌いますので、豪華ゲスト満載アルバムかと思わされますが、⑶ からはラノワ自身の世界が繰り広げられていきます。⑹ Transmitter は何度聴いてもウットリさせられます。

どの曲も美しく、ラノワのヴォーカルもペダル・スティール・ギターも良いのですが、何といっても素晴らしいのはアルバム全体を通しての音の響きです。

演奏者が部屋にいて、一緒に演奏することで響き合う音、その空気が捉えられているように感じます。スマートフォンのスピーカーは小さい割には良い音ですし、最近のBluetoothスピーカーは本当に素晴らしいですが、ここは是非とも2つのスピーカーで、少し大きめの音で鳴らしてみてほしいです。

ラノワは自伝「ソウル・マイニング」も出していて、ありがたいことに翻訳されています。レコーディング中の様々なエピソードなども書かれていますので、彼が関わった作品が好きな人にはこちらも是非読んでみてもらいたいですが、とにかく良い音を録音することへのこだわりは異常で、だからこそ一流ミュージシャンとの仕事が成り立つのでしょう。

本作の収録曲ではないのですが、「Sonho Dourado」という曲を演奏している映像がまた感動的です。馬鹿みたいな感想で申し訳ないですけど、楽器を演奏できる人って本当にすごいですね。

私のようなただの音楽好きが語るにはいささか敷居の高いダニエル・ラノワでしたが、『Shine』は本当に素晴らしいと思いますので書いてみました。

これと『Acadie』、プロデューサーとして関わっているウィリー・ネルソンの『Teatro』、エミルー・ハリスの『Wrecking Ball』あたりと合わせて聴くとより彼の音楽性、録音へのこだわりみたいなものが感じられると思います。

ウクライナ情勢だったり、宮城・福島の地震だったりで、こんなこと書いている場合なのかと思いますが、他にできることもなく、ひたすら平和と日常が戻ることを願っております。

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