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17年ぶりでも変わらぬ2人の声に深く感動させられる 『The Tipping Point』 TEARS FOR FEARS

ティアーズ・フォー・フィアーズ(TFF)といえば50歳前後の方々にとってはかなり大きな存在ではないでしょうか?

CMに「Shout」が使われていたり、「Everybody Wants To Rule The World」で文字通り世界を支配していた80年代半ばのTFFが洋楽の原体験という方もきっと多いだろうと思います。

私にとっての最初のTFFは、まだわけも分からぬままにMTVで観た「Everybody Wants To Rule The World」でした。

「世の中にはなんと美しい曲があるものなのか⁉︎」と感動したのを覚えていますし、今でも「美しいポップソング ベスト100」を作ればリストに入ると思っていますが、その後にCMで流れていた「Shout」もTFFの曲だと知って驚いたものでした。

それもそのはず、「Everybody Wants To Rule The World」はカート・スミスが、「Shout」はローランド・オーザバルがヴォーカルを担当していたので、最初は同じグループと思えなかったのです。

これに加えて「Head Over Heals」や「Mothers Talk」も収録されている『Songs From The Big Chair』(1985年)の破壊力は半端じゃありませんでした。

そんな『Songs From The Big Chair』の大ヒットの後、TFFは少し時間がかかったものの1989年に『Seeds Of Love』をリリースします。

当時、高校生でHM/HRに熱を上げていた私にはいささかしっとりし過ぎているように感じたものですが、またしてもCMに使われた「Sowing The Seeds Of Love」はもちろんのこと、他の曲も後々に好きになり、今となっては「Woman In Chains」が一際再生回数の多い曲になりました。

トータルで聴くべきでもあった『Seeds Of Love』を最後にカートがいなくなり、ローランド=TFFとなった時代は聴いたり聴かなかったりだったのですが、2005年にカートが復帰して『Everybody Loves A Happy Ending』を出した時には本当に驚き、喜びました。1曲目の冒頭で目覚まし音の後、Wake Up!と歌われた時には鳥肌が立ったものでした。このアルバムも美しい曲ばかりで、長く聴き続けている1枚です。

しかし、そんな『Everybody Loves A Happy Ending』も(繰り返しになりますが)発売されたのは2005年。もう17年も前のことで、この先TFFの音を聴くことはないのかと思っていましたが、この2022年に7作目となる『The Tipping Point』をリリースしてくれました。ひたすら感謝する以外にございません。

私は(恥ずかしながら)今でもiTunesをベースに音楽を聴いており、このアルバムも予約注文という形で購入しました。

そうすると ⑴ No Small Thing 、⑵ The Tipping Point 、⑷ Break The Man が先行配信されましたので、変わらぬ2人の声やハーモニー、美しいメロディを嬉しがりながら、どんなアルバムになるのかと心待ちにしておりました。そして、2月25日に全曲ダウンロード可能となったのです。

こういう場合、多くは先行配信された曲が断然良くて、他の収録曲は今ひとつということも少なくない(←失礼)のですが、俺たちのTFFにそんなことがあるはずありません。

むしろ他の曲の方が美しく、静かに深く感動するものばかりでした。特に ⑹ 以降の流れには17年かかった今のTFFが反映されているように感じます。全10曲、42分というのも素晴らしい。

私は英語ができませんので歌詞を理解できているわけではありません(ダウンロード購入だとブックレットも対訳もついてこないんですよね)が、年齢を重ねて知る現実や無情、ある種の諦めを歌いつつも、それらを越えた先に見えてくるものがテーマのようです。

この辺りはもう少し聴き込んで勉強しますが、リリース情報と合わせて公開された、白いソファの両端に2人が座った写真からもそんな感じを受けるのです。

このアルバムの音が新しいとか古いとかはわかりませんが、私にとっては間違いなくTFFによる音楽になっていて、「2022年は良い買い物から始められた」と喜んでいます。

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