加賀谷さんは、1番合わない職業を選びましたね。

はじめての入院時、廃人と言う状態があるのなら、僕は半ば廃人として入院しました。

入院後しばらくして、落ち着きはしないものの、保護室で段ボール箱に載せて摂る食事に慣れた頃、主治医に言われた言葉です。

それは、

お笑い芸人なんて、加賀谷さんにとって1番合わない仕事を選びましたね、

というものです。

この言葉を聴いた当時、僕はまだ安定しているとはとても言えない状態にありました。

それでも当時の主治医の先生が、これからの僕の人生を考えて言ってくれていることはわかりました。

真っ当に考えるなら、主治医の言うことは、ど正論と言えるでしょう。

そもそも僕は人前で何かを表現したり、ましてや笑っていただいたりなんて、考えてもいない学生生活を送っていました。

もちろんクラスの人気モノな訳でもありません。

そんな僕が、それこそ文字通り一念発起してならせていただいた芸人なわけですから、向いていないことはこのうえもありません。

つまり主治医の言う通りなのです。

が、大事なのはここまでが机上の空論で語られている点です。

実際の社会は、量子もつれが続発する複雑系です。

これは目の肥えた演芸ファンの方も同様で、単なるクラスの人気モノなど、改めて金を払ってまでみるまでもないわ!
もっと魂燃やしてる芸人が観たいんじゃ!

と言うカオス理論が炎上しまくっている現実が、僕を迎え入れてくれたのです。

つまりこんな僕でも居てもいい空間があった、もしくは無理矢理捻じりこんで居座ったようなものなのです。

とは言えクラスの人気モノは強いです。間やテンポをなんとなくわかっています。

しかしクラスの人気モノが芸人を目指して集まった場合、どうなるかわかりますか?

そうです。飽和状態を起こします。

違う味付けを欲しがるものです。人間なんてモノは。

つまり机上の空論では1番向いていない職業も、現実では、

逆に張る、

ことにある程度成功していたのです。

そのことは常に胸にあった僕は、主治医のこの言葉を聴いて、

よし!

と隠れてガッツポーズを取っていました。

そりゃ、そう見えるわな、と言うわけです。

現在僕は中野の実家に戻って、読書の傍らたまに入る仕事をして過ごしています。

昔は僕も芸人なんだから、実家でぬくぬくしてはいけない、と言うステレオタイプに踊らされて頑張っていた時期もありますが、今はもう開きなおったもので、だって中野育ちだもーん!
と堂々としております。

気がつけば、僕をからかったり、ある時はたしなめてくれる先輩も随分少なくなってしまいました。

なお一層身を引き締めて、日々の生活を送らねば、と考えています。

ハウス加賀谷

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