最新の成立法律や法改正の情報をお届け!『法律の動向』Vol.7
『法律の動向』では、法律実務家向けの隔月刊誌「法律のひろば」や、自治体職員向けの月刊誌「地方財務」の掲載記事から、最新の成立法律や法改正に関する情報を厳選してお届けします!
※本記事は、「地方財務2023年7月号」の「最新法律ウォッチング」に掲載のものです。
最新法律ウオッチング―新型インフルエンザ等対策特別措置法及び内閣法の一部を改正する法律
新型インフルエンザ等対策特別措置法及び内閣法の一部を改正する法律
2023年の通常国会において、内閣感染症危機管理統括庁の設置等を行う、新型インフルエンザ等対策特別措置法と内閣法の一部改正法が成立した。
新型コロナウイルス感染症への対応を踏まえ、感染症の発生・まん延の初期段階から効果的に対策を講じ、国民の生命・健康を保護するとともに、国民生活や国民経済への影響が最小となるよう、感染症の発生・まん延の防止に関する施策の総合調整等に関する機能を強化する必要があると指摘されている。
このため、政府は、感染症の発生・まん延の初期段階から新型インフルエンザ等対策本部が迅速かつ的確な措置を講ずるための仕組み等を整備するとともに、内閣官房に内閣感染症危機管理統括庁を設置することを目的として、前記の改正法案を国会に提出し、成立した。
内閣感染症危機管理統括庁の設置等
●内閣感染症危機管理統括庁の設置
内閣法を改正し、内閣官房に内閣感染症危機管理統括庁を設置することとした。
内閣感染症危機管理統括庁は、感染症の発生・まん延の防止に関する施策に係る司令塔機能を強化するため、新型インフルエンザ等対策本部長である内閣総理大臣を助け、行政各部の対応を強力に統括することとした。具体的には、新型インフルエンザ等対策特別措置法に規定する政府行動計画の策定・推進に関する事務、全大臣で構成される新型インフルエンザ等対策本部に関する事務、学識経験者で構成される新型インフルエンザ等対策推進会議に関する事務のほか、行政各部の施策の統一保持上必要な企画・立案や総合調整に関する事務のうち感染症の発生・まん延の防止に関するものをつかさどることとした。また、内閣感染症危機管理統括庁に、内閣官房長官を助けて庁務を掌理する内閣感染症危機管理監(内閣官房副長官の中から指名)等を置くこととした。
●新型インフルエンザ等特措法の改正
新型インフルエンザ等対策特別措置法を改正し、新型インフルエンザ等対策本部長は、新型インフルエンザ等のまん延により、国民生活や国民経済に甚大な影響を及ぼすおそれがあるにもかかわらず、総合調整に基づく所要の措置が実施されない場合は、新型インフルエンザ等まん延防止等重点措置に係る事態や新型インフルエンザ等緊急事態に至る前であっても、新型インフルエンザ等対策本部が設置されている間において、指定行政機関の長や都道府県知事等に対し、必要な指示をすることができることとした。
また、地方公共団体の事務の代行等について、新型インフルエンザ等対策特別措置法の規定により実施する措置に加え、感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律の規定により実施する措置についても代行等が可能となるよう対象事務を拡大するとともに、新型インフルエンザ等緊急事態に至る前であっても、新型インフルエンザ等対策本部が設置されている間において代行等を行うことができることとした。
さらに、新型インフルエンザ等まん延防止等重点措置に係る事態や新型インフルエンザ等緊急事態において、都道府県知事が正当な理由なく要請に応じない者に対し命令を行うに当たって勘案する事項を政令で明確化することとした。
このほか、新型インフルエンザ等対策に係る費用について都道府県や市町村の負担を軽減するために特別の交付金の交付に関する規定を設けるとともに、地方債の起債の特例を設けることとした。
●施行期日
この法律は、公布の日(2023年4月28日)から6か月以内で政令で定める日から施行される。ただし、地方財政措置に関する改正は、2024年4月1日から施行される。
国会論議等
国会では、内閣感染症危機管理統括庁の設置の意義について質問があり、政府から、2022年5月から6月にかけて開催された新型コロナウイルス感染症対応に関する有識者会議において、一元的に感染対策を指揮する司令塔組織を整備することが必要との指摘がなされたところ、内閣感染症危機管理統括庁は、このような感染症危機対応における司令塔機能を担うものであり、平時の準備、感染症危機発生時の初動対応、政府対策本部の事務等に係る司令塔機能を一貫して統括庁に集約し、意思決定を一元化、迅速化するとともに、厚生労働省との一体的対応を確保しつつ、新たに専門家組織として設置される国立健康危機管理研究機構の質の高い科学的知見を踏まえて感染症危機に対応することとしており、これらの司令塔機能の発揮を通じ、国民の生命・健康の保護と社会経済活動との両立を図りながら、感染症危機に迅速的確に対応することが可能になるとの説明がされた。
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