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(4)医心方 巻二十七 養生篇 養形第三 鳳凰堂流解釈


養形第三の概論が終わると、各論に入ります。

 あらゆる所作における禁忌、慎むべき事項を説明してくれていますが、当然突然始めても、習慣化するのは難しいものもありますので、参考として徐々に行うのが一番良いでしょう。

 ここでは、汗、二便についての注意事項について細かく説明してくれています。

この行動によってはこのような事になるという経験から、気がどのように動き、寒熱がどう及んでいるのかを類推するのは東洋医学にはとても大切です。

 「汗が出れば急いで粉をつけろ。汗で湿った服を着たままにしていると瘡ができ、大小便が出にくくなる」

鳳凰堂では以前、血糖値が高い人が来院された際に半年ほど咳が止まらず、咳止めも効かないと言われ、良くみるとじんわりと汗をかいていました。

次来られる時から、着替えとタオル持ってきてできるだけシャツは乾いた状態で来て下さいと伝えただけで次の日からピタリと咳が止まったと喜ばれてました。

この話では、汗が出る時は気も一緒に外へ出て行きます。その為、気の放出をできるだけ避けるように粉をつけていたのでしょう。

寒湿の邪(冷えや湿気)が表面に滞留していると、正気との闘争が長時間続き、瘡ができる事は想像に難くありませんが、それによって既に気化が表面で行われているために、二便まで出にくくなると言うところに注目したいですね。

鳳凰堂が診療した方には、原因と対処(養生法)を伝えただけです。それで治まるなら診療の必要はありません。(本来の来院目的は糖尿病と脊柱管狭窄症でしたので)


 「気候が暑い中で外から帰ってきて、顔を冷たい水で洗ってはいけない。もし水で洗うと癲癇が起きたり、立ち上がるときに眩暈がする」

 これも暑邪、熱邪(気候の暑さとそれに同調して上がっている熱エネルギー)に対応していた身体が急激に寒湿の邪を受ける事で正気(元気、本来は活動に使う熱エネルギー)が更に急激に上がった事を示しています。

正気の上がりが少なければ眩暈となり、急激で大きければ癲癇となる。どちらも強さ、速さの違いだけで気の有様は同じです。

 「足に汗をかいたままで水に入ると骨が痛んで動かせなくなる。」

 足に寒湿の邪が多くある状態で水に入ると、長時間湿気の多いところに坐っていたのと同じ状態が急速に現れます。

当然腎を傷つけ動かせなくなりますが、陽気の多い若年、中年層くらいまでは分かりにくいかも知れません。若くても虚弱体質の人は、この辺りも注意が必要です。

千金方には次のように書いています。

「疲労を少なくしようと思うなら、酷く疲れたり堪えられないことは無理にやってはいけない」

 当たり前の事ですが、自分の身に当てはめると中々難しいことですね。

仕事にやりがいを持っていれば、疲れを押して仕事をする事が偽達成感に繋がり、休むことに罪悪感を持ってしまいがちです。

しっかり休むことで心身がリフレッシュでき、結果的には効率が上がる事は中々理解しにくいことですので。

「大汗をかいた直後に服を脱いではいけない。中風になりやすく、半身不随となる」

 これも上述した事と似ていますが、気をたくさん漏らした状態では、毛穴が開いたままですので、その時に風寒の邪(冷え)を受けやすい状態をつくると気が急激に上昇したり、上で詰まったりする事を書いています。

「汗をかいた状態で、床につま先立ちで立ったり、足を高いところへかけてはいけない。血の流れが悪くなり、両足が重くなったり腰が疼くようになる」

「毎年八月一日以後は弱火で足を温め、下半身を冷やさないようにすること。」
 [意図は、常に気を下に置きながらも土までは漏らさないようにすること]

「冬の日には、足を温めて脳を冷やし、春秋には脳も足も倶に冷やす。これは一般の人がやっている常道である。」

冬は頭寒足熱ですが、春秋は冷やすと言うのが一般的には知られていない事です。

但し、軽く冷やすだけで冷やしすぎは禁物です。


 「足を挙げて火に当たってはいけない」

「尿を我慢して出さずにいると、膝が冷えて麻痺する。大便を我慢して出さずにいると痔となる」

「長い間坐っている場合は立って尿をし、長い間立っている場合は坐って尿をしなさい」

「空腹時には必ず坐って小便すること。満腹時であれば立って小便すること。この事に注意すると病気をせず、虚弱を治す」

「小便するとき、いきんではいけない。両足や膝を冷やす」

「大便をするときにもいきんではいけない。息を吐きながらしてはいけない。強くいきむと腰が痛くなり、目が見えにくくなる。よくこのことを心すること」

二便(小便、大便)はその行為だけで気化をしていますので、そこに筋力を加えると気の消耗は激しくなっています。

小さな事ですが少し心に置いておくと、ふとした時にこれが生きてきます。

小便であれば下焦(下腹部)の気が少なくなるために足膝が冷え、大便であれば上昇する気が少なくなって目が見えにくくなったり、腰が痛んだりします。

人によって現れる症状は異なっても気の有様は同じように動いていますので、どれくらい摂生、養生できるかを詳細に記してくれています。

ここまで考えていたことに感心するばかりです。

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