【ホツマ辞解】 〜大和言葉の源流を探る〜 ⑱「かも」「あも」と「みたらし」 <104号 令和元年8月>
前回の「あま」と「あめ」を考察しましたが、それに関連する重要語句として、「かも」そして「あも」の用例を考えます。
「かも」は、鳥の「鴨」や(鴨の泳ぎから発案された)「鴨船」を意味する用例の他に、「天地/天下/上下:陰陽/夫婦」を意味する使い方があります。
『沖つ鳥 カモを治むる 君ならで 世の事々を えやは防がん』ホ26
『かみしも恵む 神となる 国の名もこれ 「カ」は上の 遍く照らす 「モ」 は下の 青人草を 恵まんと』ホ38
26アヤのウタは、家出していたトヨタマ姫がウツキネ(ホホデミ/山幸彦)の元に戻った時のウタで、「カモ」は姫の出自である六船魂一族とともに「天下」を意味しています。夫婦と天下が掛けられています。
38アヤのウタは、景行天皇によるニニキネへの称え詞です。ここも前段に
『日の山の 朝日にいなみ 妻向かひ (かみしも恵む 神となる)』とあり、やはり「夫婦相和」と「天下泰平」が両輪の如く強調されています。
「かも」はさらに(上下)賀茂神社の社や地名を指す言葉にもなりますが、この地には、やはり「夫婦」と「天下」の「安寧」の象徴として「いせ」に通じる【思想としての「かも」】が刻印されているのです。
「あも」も同様の語句であり、
『あもにふる 吾が身の瘡ゆ シムのミキ 三千日間で 荒ふるおそれ』ホ9
これは、ソサノヲの懺悔のウタですが、「あも」が「天下」(の騒乱)を意味し、同時に「男女」(のもつれ)を暗示しています。
ところで、「みたらし」といえば下鴨神社境内の御手洗川、御手洗池が有名ですが、ここは(かつての)禊場だったので「手洗」と漢字を宛てられていますが、元の意味は、「満ち足らす/垂らす」です。天から下々をゐやすく(安寧に)満たすと云う意味。
『汝オシヒト 我が代わり 常のよさしも みたたしそ』ホ11
一方の伊勢には「御裳裾川(五十鈴川)」が流れます。この「みもすそ」は、ホツマの重要語句ですが、「もすそ」は、腰から足元を意味して、やはり「天から(貴賤を問わず)下々に寄り添う心がけ」を寓意します。この語句に関しては、項を改めてまた考えてみましょう。
(駒形「ほつまつたゑ解読ガイド」参照)
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「あま」「あめ」が、「天」のみならず「陰陽」を意味することを前回の辞解で考察しましたが、今回は、「かも」と「あも」、さらに関連して「みたらし」を取り上げました。
上賀茂神社と下鴨神社は、京都を代表する神社の筆頭ですが、ホツマを読まないとご祭神がよくわからないお宮でもあります。ともに、「かも」が冠されるのですが、この「かも」が、極めて多重的な語源と所縁をもつ言葉で、そこを整理することはとても大切です。「古代カモ族」などと取り上げられますが、けして一系ではないのです。
「みたらし」は、禊ぎの「手洗い」のように理解されていますが、禊ぎの意味もありますが、それだけではありません。「お手洗い川」ではないのです。
上記の「ことだまチャンネル」は、大変丁寧な説明で好感が持てます。ただし、説明内容は古事記日本書紀に基づいていて、ホツマ愛好者には味気ないところが目立ちます。この下鴨神社の説明をこの動画の流れでホツマ的に紹介できたら、きっと素敵なものになるでしょう。
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ところで、私ごとですが、明後日神奈川方面に転居しますので、書斎を撤収します。膨大な古書類を整理しなければなりませんので、しばらく投稿をお休みするかも知れません。ではまた。