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ヴィジュアル系インサイドセールスが書く「ホッとする」ノート:彼女と私の選択~1章~

このnoteは、2022年7月26日に配信した「ホットリンクのメルマガ」のバックナンバーです。メルマガ講読フォームはこちらhttps://service.hottolink.co.jp/mailmag/

こんにちは。ホットリンクのヴィジュアル系インサイドセールス、つつみです。





私は過去に、約10年間お付き合いをした女性がいました。
彼女と結婚をし、人生を共に歩んでいくと信じていましたが、それは実現しませんでした。





大人になるにつれてすれ違ってしまった感情、お互いの夢、捨てなければいけなかった選択・・。
今回はそんなお話をしようと思います。






高校3年生の夏______。





私の中学時代の親友が通う高校に、ヴィジュアル系バンドが好きな女の子がいました。
親友は「絶対気が合うから!」と、私たちを引き合わせてくれました。





彼女と初めて会った場所は図書館でした。
学校帰りに図書館で勉強をしているような、とても真面目な女の子でした。





私たちは「ヴィジュアル系バンドが好き」という共通点で、すぐに仲良くなりました。
お互い持っているCDを交換したり、それを理由に会う度に惹かれ合っていきました。
好きなバンドのライブにも一緒に通うようになりました。





私はプロを目指しギターを練習し、曲を作っては彼女に聞いてもらいました。
「すごい!良い曲だね!絶対売れるよ!!」
いつも彼女は私に自信を与えてくれました。





以前に「ガリ勉男子高校生、化粧に目覚める」の回で書きましたが、私は自分が通う高校に友達がいませんでした。
そこで経験した、いじめ、登校拒否、鬱病で感じた悲しみと孤独、自分の弱さ、乗り越える為の強さ・・。
全てを音楽に乗せて、未熟ながらも魂を込めて作曲していました。





だから、その曲を気に入ってくれる事は、私を理解してくれるようで本当に嬉しかった。





彼女はメイクの練習にも付き合ってくれました。
憧れているヴィジュアル系バンドマンのメイクを真似しては見てもらい、アドバイスをもらっていました。





「すごくメイク上手くなったね!カッコいい!」





男が化粧なんて気持ち悪い、と言われ続けていた私のメイクを、初めてカッコいいと言ってくれたのも彼女でした。





当時の私は、高校でのネガティブな体験から心を閉ざし、女性に対しても積極的にコミュニケーションが取れるタイプではありませんでした。
彼女はそんな私を理解してくれる、とても大切な存在となっていきました。






高校3年生の冬______。





卒業後の進路を決める中で、私は大学進学はせず、音楽の道へ進むと決めていました。
大学へ進学する彼女とは生活が変わり、今の関係のままではいられなくなるかもしれないと思いました。





私はこの先も彼女と共にいたいと強く思い、ずっと伝えられなかった想いを、勇気を出して話す事にしました。





当時私はコピーバンドでライブをしていたのですが、観に来てくれていた彼女に、ライブ後に告白しました。
人生初めての告白で、私はものすごく緊張しながら彼女に伝えました。





「ずっと好きでした。僕と付き合ってください・・!」





冬の寒い夜だったからかもしれませんが、彼女は頬を真っ赤に染めて、喜んでくれていました。





この時私は「必ずヴィジュアル系バンドでプロになる」と約束しました。
彼女も「絶対になれるよ!ずっと応援する!カッコいいバンドマンになってね!」と言ってくれました。





こうして私たちは付き合う事になりました。お互い、初めての恋人でした。






高校卒業後______。





私は本格的にバンドの世界へ飛び込み、幸運にも19才でプロとしての活動をスタートしました。
彼女は大学に進学し、勉学に励んでいました。





私がバンドマンとして有名になっていく程、彼女は喜んでくれました。
バンド好きな友達にも、自慢の彼氏だったようです。





彼女は高校生の頃と変わらず、いつも無邪気にヴィジュアル系バンドの話をして、
流行りのバンドのCDを聞かせてくれました。





また、大学卒業後の進路を考える中で、私の生き方にリスペクトを持ってくれていました。





「夢を叶えて好きな仕事をするって本当に幸せだよね。カッコイイと思う」





しかし、音楽業界でプロとして活動する厳しさを知り始めていた私は、時にその言葉が辛く感じるようになっていきました。






当時、私のバンドは所属事務所の力で、全国各地でソールドアウトしているライブイベントに出演できていました。
共演相手はガゼットやナイトメア、アンティック-珈琲店-といった、後にメジャーになる強豪バンドだらけでした。
高校生の頃にCDを買い、憧れていたバンドとも共演するようになっていきました。





しかし、私は少し前までコピーバンドをやっていたアマチュアなのです。実力が全く伴っていませんでした。
プロの現場は仲良しこよしではない、全バンドが生き残りを賭けた戦場で、想像以上のプレッシャーがありました。





所属事務所からは、私の実力不足が課題として度々あがっていました。
ライブ後には常に社長やマネージャーから怒られていました。





コピーバンドをやっていた高校生時代は、周りと比べてやる気が強かった為、この気持ちさえあれば絶対に成功できると自信を持っていました。





しかしプロの世界では、やる気がある事など当たり前で、自分にはない才能を持つバンドマンがゴロゴロいました。
私は、自分に才能や実力がない事を痛感し、自信を失っていきました。





高校生の頃から人に心を開くのが苦手だった事もあり、プレッシャーを1人で抱え込んでしまいました。





私は過密スケジュールによる疲労と、極度のプレッシャーでライブ直前に嘔吐してしまう事が増えていきました。
日常でも食事が喉を通らなくなりました。
当時、私はものすごく痩せていたのですが、それはダイエットではなく、食べると吐いてしまう症状があったからです。






そんな私を見て、彼女はヴィジュアル系バンドの話をする事が少なくなっていきました。
私が明らかに、休日に聞きたくないという反応をするようになってしまったからです。





「ごめん・・今はバンドの話はしたくないんだ・・疲れていて・・」





私は高校生の頃のように、純粋なファンとしてヴィジュアル系バンドを語る事ができなくなっていました。
今流行りのバンドは全てライバルで、勝たなければいけない・・。休日にまで思い出していたら気が休まらない・・。






彼女は大学卒業が近付き就職活動が始まりました。
その頃に「好きな仕事をするってやっぱり幸せだと思う」と私に話す事がありました。





もちろん私も、最初はそう思っていました。
名だたるバンド達と接するのは本当に刺激的だったし、憧れていたステージに自分が立てている事に幸せを感じていました。
しかし経験を積めば積むほど、憧れや好きな気持ちだけでは生き残れない世界だという事も痛感しました。





「・・好きな事を仕事にしたら、純粋に好きなだけではいられなくなるんだよ・・」





正直私は、学生の彼女には理解できないと思っていました。
サークル活動や勉学に励む彼女を、遊んでいるように見てしまっていました。





この頃もまだ彼女は、私をリスペクトしてくれていました。
自慢の彼氏、カッコいいバンドマン、憧れの生き方・・・。





「絶対カッコいいバンドマンになれるよ!」





告白した時に彼女が言ってくれたこの言葉に、私も応えたかった。
だからこそ、なかなか悩みを打ち明ける事ができませんでした。





今思えば、彼女にこそ、本当は心が折れそうな事を素直に相談すれば良かったのかもしれません。





私はある時、ついに感情を彼女にぶつけてしまいました。





「好きな事とか簡単に言うなよ!!俺より凄い奴なんてゴロゴロいるんだよ・・。憧れだけで仕事はできない。いいよな、学生は気楽でさ・・」





彼女は悲しそうに言いました。





「気付いてあげられなくてごめん・・そうだよね、経験していない私には分からないよね・・」





それから彼女は私に気を使い、自分からバンドの話はしなくなりました。





私たちはもともとヴィジュアル系バンドが大好きで、お互い好きなCDを交換したり、ライブに一緒に行く事で惹かれ合った2人でした。
今思えば、そういった話を私が遮断してしまったこの頃から、私たちの心は離れ始めていたのかもしれません。






その後______。





彼女は大学を卒業し就職しました。
大学時代に勉学に励んでいた事や、サークル活動で身に付けたコミュニケーション能力を活かし出世していく姿を見て、
私は彼女がただ遊んでいたわけではなく、努力していた事に気が付きました。





彼女の仕事への向き合い方から刺激を受け、リスペクトを感じるようになりました。





私もバンドマンとして成長してメンタルが安定し、
お互いまた良いコミュニケーションを取れるようになっていきました。





付き合って7年。
共通の友達からは「絶対に別れない2人だよね!結婚式呼んでね!」なんて事も言われ始めていました。
この時は私も、その未来を信じていました。





私たちは20代半ばになりました。
社会に揉まれ大人へ変わっていく彼女。まだ大人になり切れずバンドの夢を追い続ける私。





この後、私たちは現実という波に呑まれながら大きくすれ違い、それぞれの選択を迫られることになるのでした。





~2章へ続く~



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