1年間の研修医生活③ ~痛くない点滴を目指して~
こんにちは、堀田です。
今日も研修医時代の話を書いていきたいと思います。
研修医時代は、いろんな科をローテーションするのですが、僕の最初のローテーション科は呼吸器内科でした。
呼吸器内科に入院している患者さんは、半数以上が点滴をしていました。
そのため、研修医の業務の一つに、病棟での点滴当番というものがありました。
点滴当番とは、主治医の先生が出した指示に従って点滴を作り、患者さんの元へ点滴をしに行きます。
僕は、看護師さんが選んでくれた、血管がしっかりしていて点滴が入りやすい患者さんたちを担当しました。
もちろん、点滴自体ほとんどやったことがなかったのですが、学生時代、研修先のT病院で出会ったS先生が実践していた「痛くない点滴」を一日でも早くできるようになることが、すでに僕のテーマになっていました。
だから、点滴当番初日の月曜日は、
「点滴が上手になれる機会がやっときた!」
と朝からとても張り切っていました。
担当することになった6人部屋に向かい、明るく挨拶をしてから、
「今から点滴をしますね!」とみなさんに伝えました。
上手にできれば、6人の点滴を30分くらいでできるはずなのですが、なんと、午前中いっぱいかかってしまいました・・・。
特に僕は「痛くない点滴」を目指していたので、皮膚に針を刺す瞬間に、刺さったことに神経が気づかないようできるだけ早いスピードで針を挿入するようにしています。
うまく血管に入れば痛くないのですが、細い血管や逃げてしまう血管(自分が逃がしてしまっているのですが😓)などもあり、当時は3回に1回くらいしか成功できませんでした。
同じ患者さんに2回針を刺しても入らなかったら看護師さんに交代してもらう、というルールもあったので、それに従って行っていました。
月曜日・火曜日と6人部屋で点滴をさせてもらい、迎えた水曜日の朝。
「おはようございます!」と部屋に入っていくと、一番元気な患者さんが「急に用事を思い出した!」と言って部屋を出ていきました。
また戻ってくるかな、と思いながら次の患者さんに声をかけると、「あ、用事を思い出した。」と言ってまた部屋を出て行ってしまいました。
その患者さんに続いて、自分で動くことのできる患者さんは全員病室からいなくなってしまい、残ったのは寝たきりの患者さんだけになってしまいました。
木曜日、再び病室を訪れ、点滴をしようと患者さんたちに声をかけたところ、この日もみなさん急に用事ができて、部屋からいなくなってしまいました。
部屋から出ていくときに、ある患者さんが教えてくれました。
「確かにあなたの点滴は痛くない。びっくりしたよ。だけど、入らなかったら意味ないもんね。」
それ以降、この病室で私が点滴の担当をさせていただけたのは、寝たきりの患者さんだけになりました。
その後も僕はめげずに点滴の練習を続けました。
その結果、針を刺すときは痛くないように、そして血管にもきちんと入るように点滴できるようになりました。
どうして点滴を痛くないようにしたい、というこだわりがあったのか。
その理由を改めて考えてみると、「人に迷惑をかけてはいけない。」と小さい頃母親から言われていたことが影響しているように思います。
そして、どうして学生時代、点滴が上手だったT病院のS先生に感銘を受けたのか。
それは、「患者さんから慕われる立派な医師の理想像」というものが僕の中にもともとあったのですが、点滴を痛くないように行い、患者さんから喜ばれていたS先生の姿が、僕の医師の理想像と重なったからです。
無意識に握っていた「人に迷惑をかけてはいけない」という価値観と、医師としての理想像。
少なくともこの2つが影響して「痛くない点滴」にこだわっていたのだということがわかりました。
だから、「痛くない点滴」のために技術を磨きたかったし、その技術によって患者さんの期待に応え得る医師に僕はなりたかったのだと思います。
この「痛くない点滴」のために努力することで、僕の点滴の技術は確かに磨かれていきました。
今では、僕の点滴の技術を気に入ってクリニックに来てくださるようになった患者さんもいらっしゃいます。
「点滴を痛くないように」というのはクリニックのポリシーにもなっており、日々スタッフ一同技術を磨いています。
点滴の技を教えてくれたT病院のS先生と、失敗はしたけれどいろんなアドバイスをくれた患者さんたちには感謝の思いです😌
それでは、今日はここまでです。
お読みいただきありがとうございました✨
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?