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『氷の城壁』第6巻購入・紹介・感想(その2終)

下記(その1)からの続きとなります。

第6巻単体の見どころとしては、ミナトのこゆんへの特別な感情の詳細な深まり方、こゆんがミナトに特別な感情を感じ始めるまでに至る詳細な過程が主にあげられます。
彼女のいない男子中高生はミナトになりきって、彼氏のいない女子中高生はこゆんになりきって繰り返し読むとよりこの話にひたれると思います。
加えて熱川妹の秋音が出てきたことに伴う、こゆんの中学時代の振り返りシーンがぞくぞくするほど大迫力な描き方でして、52話のほぼすべてが使われています。女子中学生必読です。
『氷の城壁』では高校入学前の場面を白黒で描いていますが、大迫力の度合いを示すものとして、単行本を別角度で見るとこんな感じになります。

右から3分の1あたりの黒いところが52話に相当し、その黒さの太さの際立ちがぁ・・・。
なお強調するために多少指で本を押しています。

あと、気になったセリフ・シーンを適宜あげていきます。


美姫「ここの治安は霧ノ島と違うんだから!!」(50話p.11)

いまは都道府県立の高校の学区が全県1区のところが多くなってきて、そう感じる若い人は減っているのかもしれませんが、自分も明天高校に似た環境の高校入学時に似たような感覚を覚えたことがあります。当時は数校で1学区でした。
霧ノ島中学校は団地(≒公営住宅または築古の公団公社)エリアかつ団地は駅徒歩圏内でない(こゆん・美姫は駅まで自転車使用)学区に位置しています。自分の体験でもこんな感じのエリアの中学校からは入学者が少なく、しかも結構気合の入った感じの子が比較的多かったと記憶しています。
明天高校みたいなポジションの公立高校に入学して、地理的要因からこういうことに気づく人だけしか気づかない点ではありますが、個人的にはこのささいな点もリアルさを増したものと感じています。

もっとも話(マンガにははっきりとは描かれていませんが)としては、霧ノ島中学校からはこゆんと美姫の2人だけが住まいからは遠い明天高校に進学しています。
いろいろあってできるだけ知らない人しかいない、ちょっと遠くで適切な偏差値の高校を目指したこゆんからここに行きたいという話を聞いた美姫が、自分も別の点から中学校で違和感を感じていて、それなりに努力しないと進学できない高校だけどこゆんと一緒の学校に行きたいと思い、明天高校近くの大き目の塾に一人で通い、ミナトやヨータと出会って今に至るという具合かと推測しています。
ここら辺の設定が、人間としての成長もテーマであることについて、更なる深みを持たせてくれています。


つっこちん「(おやおや・・・? これは・・・?)」(51話p.31) 

ミナトがこゆんに近づいて、指でこゆんのほほをつつくという場面に隣り合わせた、つっこちんの率直すぎる感想です。で、絵は完全に、YUIさんの『CHE.R.RY』ミュージックビデオの冒頭部分そのものです。ご存知ない方はYoutubeで検索して見てくださいませ。なお歌詞もそのものの内容でございまして、わかると面白すぎなシーンです。

ということでつっこちんはこの瞬間に、ミナトがこゆんに恋しちゃったんだということをわかってしまいます。このあとのつっこちんの物理的な距離の取り方やミナトから話を振られたあとの場面も面白すぎです。


(お店の名前)餃将(54話p.129) にて

こゆんとヨータが2人でごはんを食べていた店の名前です。もちろん元ネタはみなさんご存知かと思います。そういう観点からでは56話で、超越、なんてのもあります。センス抜群です。
54話では五十嵐とこゆんとの回想シーンのあと、お店の中のシーンに切り替わります。最初のコマはこゆんが餃子をはしでつまみ、ニヤニヤしながらヨータに話しかけるシーンで始まります(餃子は2人で一皿)。恋愛漫画に区分される少女マンガにおいて、男女高校生2人が食事をする場面で餃子を食べているシーンなんて絶無のような気がしますがどうでしょうか?しかもこゆんは男勝りでも男性的な性格でもありませんし。
このシーンは、いかに2人が性別を度外視して同性の親友なみの関係になっているかということを示しているものと考えられます。いくら初めての作品とはいえ、こんな描き方をするなんて、阿賀沢先生すごすぎますぜよ。


第6巻全体としては、このあとの不穏さを感じさせるところが多かれ少なかれ出てきていますが、1話の単位では52話以外は基本的に面白い方向で構成されていますので、1日1話ずつ読むなんてのもいいかもしれませんね。
単行本形式の『氷の城壁』も、ジャンププラスで掲載がさきごろ始まりました。どうやら1週ずつ無料で読めるところが1話ずつ増えていき(2023年11月20日現在12話まで)、すでに単行本として発売されている巻の最終話までは、ポイントを使えば読める形式のようです。
ジャンププラスでの『氷の城壁』は下記からご覧ください(PCからだと1話がまず最初に表示されます)。

ということでやや散漫になりましたが、第6巻については、阿賀沢先生すごすぎというのと、それぞれの読み方でお読みになって、それぞれの感想を持ってもらえればというのがわたしのまとめです。
続く単行本第7巻は2023年12月4日発売予定ですし、楽天ブックスなどでは単行本第8巻の予約も受け付け開始していますので、また時期が来ましたら感想などを書いていきたいと思います。


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