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どう伝えるかより、いかに伝えるか。帝京平成大学のアプローチから、あらためて考える。入試広報が重視すべきこと。

大学に限ったことではないのですが、広告を打つうえで、何を伝えるのかと同じくらい、どう伝えるのかというのは重要です。帝京平成大学は、この“どう伝えるか“について、かなり徹底した方針がある大学だと以前から感じていたのですが、この夏に公開した動画を見て、あらためて、ほんとそうだと感じました。

では、この夏に公開した動画がどのような動画なのか、これは見てもらうのが手っ取り早いので、まずご覧ください。

どうでしょうか。軽快な音楽、イマドキのキャラクター、青春を感じさせるストーリーと、すごく見やすくキャッチーなアニメーションに仕上がっています。情報として伝わるのは、薬剤師になれる、救急救命士になれる、ぐらいしかなく説明的な要素は潔く削りとっています。私がはじめて見た時の素直な感想は、高校生はこういうの好きなんでしょ?を、ものすごくストレートにぶつけてきたな……というものでした。

帝京平成大学は、このアニメーションだけが特別にこういう路線かというとそうではなく、他もこの路線でけっこういっています。

なかでも象徴的なは、ファミリーマートの店内放送CMです。今年はアニメ「ONE PIECE」のナミ役で有名な岡村明美さんを起用しており、過去には洋画の吹き替えを数多く手がける大塚明夫さんや、アニメ「ポケットモンスター」のピカチュウ役で知られる大谷育江さんなど、これまでに数々の人気声優を起用しています。CMの終わりに「帝京魂!」という締めのひとことがあり、聞いたことがある人も多いのではないでしょうか。帝京平成大学は、2016年からずっとこの店内放送CMをやっているようです。

ターゲットが興味を持ってもらいやすい表現に徹底するというのは、広告を打つうえで、すごく当たり前のことのように思えます。でも、実際やるとなると、けっこうなハードルがあります。大学であれば、大学はこうあらなければいけない、みたいな自己定義みたいなものが、意識的にも、無意識的にもあります。たとえ現場の担当者が、それを打ち壊してでも高校生に伝えることを優先したいと考えていても、学内の全員がそう思っているわけではないので、けっこうな数の抵抗勢力とぶつかり合い、勝たないといけません。

また、大学とはこういうものだというのは、大学側だけでなく高校生(それに保護者)のなかにもあるわけです。高校生たちは、大学が自分たちの感覚や視線に合わしてくることで情報がスムーズに入るようにはなるけれど、予想以上に合わしてきたら、大学らしくない、と感じる可能性があります。この大学らしくないというのは、ネガポジ両方ともありそうですが、ネガティブな意味合いで大学らしくなく、かつ情報が受け取りやすくなると、そのプロモーション施策は最悪なことになってしまいます。

大学らしさと伝わりやすさ、ふたつの塩梅をどうするべきかというのは、入試広報の難しさの一つです。さらにいうと、大学らしさは偏差値やブランド力などによって、大学ごとに異なるし、時代によっても変化します。そういったなかで、自大学の大学らしさを理解し、高校生に伝わりやすい情報発信を行わないといけない。これってとても悩ましいはず……なのですが、帝京平成大学はバランスを気にしないというか、徹底して高校生の感覚や視線に合わせた情報発信を行っています。ためしに1年間とかじゃなく、知っている範囲だとずっとです。

帝京平成大学がターゲットとする層が、そういうことをあまり気にしないのか、それともそもそも高校生は大学らしさなんて気にしていなかったのか、などなど。この大学の入試関連のプロモーションを見ていると、いろいろと疑問や興味が湧いてきます。答えはわからないものの、これだけ徹底した入試広報ができていること自体すごいことだし、続けられているということはそれなりに結果が出ているからなのでしょう。表現やプロモーション企画としてだけでなく、もっと根本部分の入試広報のスタンス、みたいなものを考えるうえですごく参考になるように思います。伝えることだけに徹底していいわけがない。勝手にそう思っていましたが、それはもしかしたら思い込みなのかもしれません。

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