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寄稿:小田原への移住・起業の話(前編 移住)

はじめまして。株式会社旧三福不動産の山居と申します。小田原での移住者・起業者を増やしたり、空き家・空き店舗を有効活用したりすることが、この地域における社会課題の一つだと認識しており、それを公共事業としてでなく、民間の事業として経済を回しながら進めていこうと起業しました。現在6期目になります。
小田原への移住・起業の事例を前後編に分けて報徳流地方創生塾に寄稿させていただきます。

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社会増減の話

前回の記事にもありましたが、小田原市の人口は毎年(毎月)減っています。ただし昨年は+81人の社会増(転入>転出)でした。自然減(死亡>出生)が人口減の要因です。一昨年までは社会減でもありました。大企業の撤退などもこの社会減の要因でしたが、昨年は大規模な撤退等がなかったことも社会増には影響がありそうです。転入者は、この4年で増加傾向にあります。社会減の要因でもあった、大企業の拠点の縮小・撤退などがあったにも関わらず転入者が多いのは、いわゆる移住希望者が増えているといえるかもしれません。

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では、それら転入者が実際どこから転入しているのか。昨年のデータではなく、2015年(平成27年)国勢調査によると、44%が県外、56%が県内からの転入となるようです。

市外からの移住希望者の話(旧三福不動産の場合 )

あくまで弊社の場合ですと、問い合わせの8割は都内など市外からになっています。多くの不動産仲介会社では、HOME’S、SUUMO、at homeなどのポータルサイト等で集客しているところ、自社ウェブサイトがメインになっています。したがって同業他社と傾向が異なる可能性もあり得るので、小田原の不動産業界全体での傾向はわかりません。

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もちろん市外から来られる方は、小田原近郊へ就職する場合を除けば、物件だけでなく、そもそも小田原、二宮、大磯、茅ヶ崎等々とエリアを比較検討されるので、実際に契約に至るのは市内/市外が半々くらいにはなります。体感としては、市外からの問い合わせは増えていそうです。

小田原への移住が増える理由

小田原が選ばれる理由としては
・交通アクセスがよい
・自然も豊か
・買い物にもそんなに困らない
・都心部と比べると不動産が安い

などが挙げられます。都心部へのアクセスの良さから、仕事を変えずに暮らしを変えることができるのは大きいです。もちろん人によっては、都内に直行できずとも、もっと田舎の風景がいいと考える方もいらっしゃると思いますが、バランスの良さは多くの人に選ばれやすいのではないでしょうか。

以下弊社ウェブサイトにて小田原の魅力を語っているページの抜粋です。
https://93estate.com/iju/

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ちょっとわかりにくいですが、通勤でかかる新幹線代を自腹で払ったとしても、新幹線代+小田原の不動産価格は横浜や茅ヶ崎の不動産価格と比べても安くなるんですね。それを考えると安く広く東京にも時間的には近い家を持つことができます。この辺りを知って小田原を選ぶ方が増えている印象です

行政への要望として

今後、日本全体として人口減少する社会の中で、小田原市における減少を極力防いでいくためには、公民連携で取り組んでいく方が効果的です。民間としては我々のような不動産事業者が担っていくとして、行政には我々とは違った関わりを期待していきたいところです。公(マクロ)-民(ミクロ)施策とでもいいましょうか。
2019年の実績として転入者は7,255人でした。仮に行政がやる移住政策の目標値として、転入者を5%増やすと設定すると、362人となります。これを実現させるためには、1人1人増やしていく施策では達成が難しそうです。そういう行政の施策が意味を持つのは人口数千人、年間の転入者も数〜数十人といった小さい自治体であり、小田原市の規模では違う施策を考えていく必要がありそうです。

空き家所有者の意思確認

よくある施策の一つとして空き家バンクが挙げられますが、小田原市においては意味ないとまでは言いませんが懐疑的です。その理由は市内に170を超える不動産業者がいることなどからもわかるとおり、不動産が一般に取引されている地域だからです。不動産の流通がない地域であれば行政が代わりに仲介していく必要がありそうですが、小田原市においてはそこまでしなくても大丈夫なはずです。不動産業者は一般に信頼されていないので、売買・賃貸意思を迷う空き家オーナーに対して、行政が働きかけるところまでは担っていただき、活用は市場に任せるのでも十分ではないかと考えています。

企業誘致

空き家バンクよりも、企業誘致をして従業者(および居住者)を増やす施策の方が重要だと考えています。従来のように工業団地や西湘テクノパーク等への大規模な事業者の誘致だけではなく、中小規模のサテライトオフィス等も考えられます。三密を防ぐべき、リモートワークを推進していくべき、となっているコロナの状況下においては、いかに拠点を分散させるかも企業の命題となるかもしれません。4/20付の日本経済新聞にて、日本電産の永森会長も企業はサテライトオフィスを作るなど抜本的に環境を改善すべきと仰っていましたし、
https://r.nikkei.com/article/DGXMZO58252910Q0A420C2SHA000?unlock=1&s=3
いわゆるサテライトオフィス含め、企業誘致は従来よりもしやすいし小田原は向いている状況、環境であるといえます。

シティプロモーション

あとはプロモーション。前章で触れたように、小田原にはアクセス、自然、商業などのバランスが整っています。便利だから合理的に小田原を選ぶ人は増えるはずです。それらをプロモーションしていくことで、自然と成果は出てくるのではないでしょうか。実際ある一定の成果はすでに出ていると言えます。あとは子育て通勤層、早期リタイア層など、どの層をメインターゲットに据えるかで、具体的な施策・メッセージは変わってきます。その辺りは多少議論が必要になるかもしれません。

上記以外にも都市計画の施策により空き家空き店舗の活用を推進する等も行政の役割として考えられそうですが、それについては次回の後編で改めて整理していきます。

ではでは。後編へつづく

山居是文 Yamai Yoshifumi
株式会社旧三福不動産 共同代表。
1978年、小田原生まれ。大学卒業後、都内の会社に勤務した後、小田原市に入庁。市役所を3年で退職後、再び都内でWeb等の企画・ディレクションの会社を創業。2012年から拠点を小田原に戻し、商店街の空き店舗をリノベーションしたコワーキングスペース「旧三福」を運営。
2015年3月、空き家、空き店舗など、新たに何か始めたい人がチャレンジしやすい物件を提供すべく株式会社旧三福不動産を設立。物件仲介、リノベーション、プロデュース、ブランディングなどをしつつ、小田原でごきげんな起業・移住を増やすのが仕事。
https://93estate.com

皆さんいかが思われましたか?小田原の人口は本当に維持も増やすこともできないのでしょうか?今回は、実際に不動産業を営みながら着実に市外からの人々を小田原市内に移住させている山居さんに、日々仕事をしながら感じている小田原の可能性やリアルなお話を、多くの市民の皆さんに知っていただきたく寄稿していただいています。
なるほど、空き家対策なら売買・賃貸意思を迷う空き家オーナーに対して、行政が働きかけるところまで担ってもらうことなどは、農業でいえば耕作放棄地対策で行われている農地中間管理機構の仕組みのようでいいですよね。現在市で行われている空き家バンクの取り組みを、もっとブラッシュアップできれば効果が期待できるのではないでしょうか。
公と民が協力しながら(公民連携)小田原の魅力を伝えることができれば、小田原の人口はもっと維持増加させることができると、私たち報徳塾は考えています。それには、公は公の役割と、民は民の役割を、双方でより明確化し、きちんと成果に結びつけるまで連携しながら推し進めることが必要なのではないでしょうか?次の続編が楽しみです。

*この投稿全体は報徳流地方創生塾 小田原特別編 実行委員会(報徳二宮神社・(株)FM小田原)が行っており、この記事は報徳塾のメンバーである山居是文が寄稿しています。
*これらの投稿は当初予定しておりましたセミナーがコロナウィルス感染拡大防止の為中止となったことから、WEBを活用して小田原の多くの市民の皆さまを対象に配信しております。
*また、私たちは元々ライターではありませんし、現在コロナの影響も甚大に受ける中で記事の作成投稿をしています。本来あるべき丁寧な校正作業もままならないまま投稿しておりますことお許しください。万一事実と異なる内容あれば速やかに訂正・お詫び申し上げます。

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