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寄稿:小田原への移住・起業の話(後編 起業)

旧三福不動産の山居と申します。小田原での移住者・起業者を増やしたり、空き家・空き店舗を有効活用したりすることが、この地域における社会課題の一つだと認識しており、それを公共事業としてでなく、民間の事業として経済を回しながら進めていこうと起業しました。現在会社は6期目になります。
小田原への移住・起業の事例を前後編に分けて報徳流地方創生塾に寄稿させていただきます。今回は後編になります。

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小田原は起業に向いている話

もちろん事業計画にはよりますが小田原はビジネスに向いているエリアだと考えています。
その理由としては
・交通アクセスがよい
・周辺自治体も含めると30万超の人口があり適度な規模感
・都心と比べて家賃が安い

などが挙げられます。交通アクセスのよさは、拠点は小田原に置きながら東京その他エリアに営業しやすくなったり、逆に他のエリアから顧客を呼び込みやすいと言えます。
また、人口減少傾向にあるとはいえ、県西部の中心都市であるため、ある一定の基礎集客が見込めることや、各業種が一通り揃っているため、独占にはならないものの予め市場が存在する(業種の認知がある一定されている)のはあります。
そして、家賃が都心と比べて安いことで、固定費を抑えつつ始められることもメリットです。

行政・商工会議所の取り組みの話

小田原箱根商工会議所、小田原市役所、金融機関等で創業支援のプロジェクトを推進していて、私もプロジェクトメンバーとして企画等で関わっています。

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これまで5年間で20名を超える方がここから創業されました。商工会議所や行政単独での創業支援でなく、金融機関や地元の民間企業などが共同して推進していることが特徴です。

弊社の取り組みの話

弊社としても冒頭申し上げた通り、小田原エリアでの起業を増やすべく自ら創業しているので、前章でふれた創業支援プロジェクトに関わる以外にも、コワーキングスペースの運営をしたり、本業の不動産事業において、空き家・空き店舗を活用しようと取り組んでいます。

小田原は都心と比べて家賃が安いとはいえ、それでも小田原駅前は高いです。一般的には駅近くでお店をやろうとする方が多いはずですが、弊社としては駅から少し離れた、小田原駅徒歩圏の竹の花、新栄通り、銀座通り南街区、国際通り、宮小路、青物町などの空き家・空き店舗を活用できるように所有者さんへ働きかけをしてきました。

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弊社の仲介により実際に開業した店舗が地図上の赤丸です。駅周辺にももちろんあるのですが、それよりも徒歩10分前後の家賃が安くなってくるエリアに赤丸が多くなっています。

駅から離れると人通りは減るのですが、駅前の人通りが多いところでお店をやったとしても、結局はお店に魅力がないとお客さんは来てくれません。逆に駅から離れてもお店に魅力があればわざわざ来てくれます

商売において立地は重要ですが、同時にお店の魅力づくりも重要。家賃が安い分を、店の魅力づくりに投資していくことで、上記青枠のエリアでも十分に勝負できるのではないかと考えています。

上記地図のように店舗がある程度集積してくると、集客しやすくなりますし、店同士で共同でイベントを開催するなど新たな動きも出てきました。今後にさらに期待していきたいところですし、弊社としても引き続き取り組んでいきたいと考えています。

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ちなみに、移住と同時に開業するケースはまだ少ないですが、市外から小田原に転入し、数年経って落ち着いたり関係性が築けてから開業する例はいろいろありますので、移住者が増えてくるとその流れも今後増えてくるかもしれません。

行政への要望

起業する人を増やすにあたっての公民連携の取り組みについて考えていきます。
他の自治体でよく見られるのは、開業希望者への家賃補助制度ですが、小田原においてはあまり意味がないと考えています。起業不毛の地ではなく、希望者はある一定いますし、そもそも商売は真剣勝負なので、補助がないと起業できない人は向いてない気もします。家賃を払わなければいけない、銀行へ融資の返済をしなければいけない、などが事業をブラッシュアップしていく原動力になるはずです。

コロナウイルスの感染拡大防止のため、難しい現況ではありますが、コロナ以前であれば起業したい人は大勢いました(今すぐは難しいかもしれませんが、雇用が不安定になることにより起業する人は今後も変わらずいるのではないかと考えています)。

むしろ小田原で開業しようにも物件がなくて他自治体で開業するケースがあったほどです。事業用の物件はあきらかに需要>供給でした。もちろん空き家空き店舗自体が少ないわけではなく、賃貸する意思のある物件が少ないのです。したがって空き店舗のまま活用していないオーナー向けの施策があれば、開業できる人が増えてくるのではないかと考えています。

例えば老朽化した物件の修繕リスクを恐れて賃貸しないケースもあるため、この辺りへのケアをしていくことなどが挙げられます。
また、行政としても空き家空き店舗を有効活用したい意向がある中で、都市計画上の用途地域の制限によって、事業が何もできないケースも多いです。仮にエリアを限定してでも用途の制限を緩和できれば、さらに起業の流れが進むのではないかと考えています。そうやって活用できる物件が増えれば、あとは民間である不動産業者が開業希望者を募るのみ、です。皆さん、協力してがんばっていきましょう。

では。

山居 是文 Yamai Yoshifumi
株式会社旧三福不動産 共同代表。
1978年、小田原生まれ。大学卒業後、都内の会社に勤務した後、小田原市に入庁。市役所を3年で退職後、再び都内でWeb等の企画・ディレクションの会社を創業。2012年から拠点を小田原に戻し、商店街の空き店舗をリノベーションしたコワーキングスペース「旧三福」を運営。2015年3月、空き家、空き店舗など、新たに何か始めたい人がチャレンジしやすい物件を提供すべく株式会社旧三福不動産を設立。物件仲介、リノベーション、プロデュース、ブランディングなどをしつつ、小田原でごきげんな起業・移住を増やすのが仕事。
https://93estate.com

山居さん、ありがとうございました。皆さんいかがですか?このような実践事例をみると小田原にもまだまだ可能性があると思いませんか?東京都内でも清澄白河や蔵前・馬喰町界隈などに若手起業家のSHOPが多く集まる一因も、一等地よりも手頃でチャレンジしやすい家賃だからですよね。

最近の事例では山居さんたちは板橋で88年続いたお豆腐屋さんの思いや温もりを感じさせる建物を、こだわりのお茶づくりに挑む若きご夫婦が営むお茶工房カフェに承継する橋渡しをしました。ごく一般的であれば「古くてもう無理。借り手が見つかるわけがない」と多くの人が決めつけてしまいがちな古い建物の見方を変え、ここにしかない新たな価値を見出しています。

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行政がしていること・民間がしていること

今回の山居さんの寄稿(前編&後編)をじっくり読んでいただければわかるように、移住においても起業においても、こうした事例は単なる自然発生的に起こっていることではありません。1件1件最初はゼロから1、1から2へとまさに報徳でいう積少為大の努力で民間企業が積み上げてきた成果です。
また行政ではプロモーションを例に挙げれば、小田原市では広報広聴課が中心となり、これまでもデザイン性のある優れた冊子を発行したり、魅力的な写真を使ってSNSなどを通じて小田原の魅力を高め広めるシティプロモーションを展開したり、単発的ながらセールスプロモーションなども実施しています。*ただ、申し訳ありませんが空き家バンクの物件情報は少ないですし競売物件情報のようで残念なので、余計民間不動産屋さんと連携したほうが良い気がします。

オダワラボ
http://odawalab.com/iju/
小田原市空き家バンク
http://www.city.odawara.kanagawa.jp/lifeevent/residence/unoccupied-house/rent.html

他方、旧三福不動産ではない、市内の多くの不動産屋さんや家を売ったり建てたりする地元の建築屋さんは、移住者に向けて全国の不動産物件を紹介するポータルサイトに毎月多額の広告費を使って多くの物件を掲載したり、グループに加盟してお金を払っています。雑誌等も同様です。
ですので例えば市(公)がシティプロモーションとして小田原の良さを伝える役を担いながら、市内の不動産・建築屋さんたち(民)と連携して、実際に小田原へ移住を検討している人をターゲットに、費用対効果のある、単発ではない継続的なプロモーションがWEBサイトやイベントで展開できるスキームを作れば、人口減少対策に対し、これまで以上に効果を発揮できる公民連携が生まれるのではないかと報徳塾では考えています。(民間は年間広告費を削減⇔市は以前よりも予算かけずに民間から広告料徴収し予算削減)
皆さんはいかが思われますか?
自分たちの街の未来は、自分たちの手で。みんなで大いに議論してみてください。

*この投稿全体は報徳流地方創生塾 小田原特別編 実行委員会(報徳二宮神社・(株)FM小田原)が行っており、この記事は報徳塾のメンバーである山居是文が寄稿しています。
*これらの投稿は当初予定しておりましたセミナーがコロナウィルス感染拡大防止の為中止となったことから、WEBを活用して小田原の多くの市民の皆さまを対象に配信しております。
*また、私たちは元々ライターではありませんし、現在コロナの影響も甚大に受ける中で記事の作成投稿をしています。本来あるべき丁寧な校正作業もままならないまま投稿しておりますことお許しください。万一事実と異なる内容あれば速やかに訂正・お詫び申し上げます。

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