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【承前】 「どういうことですか? 兄ィ」 「兄ィはやめろ」 あと前向け、とタマガサは首を…
【承前】 「あ?」 無意識のうちにダッシュボードにリュウノジョウの手が伸びる。その上に…
【承前】 「おい、弟よ」 「なんじゃい、兄さん」 開け放された窓から聞こえた声に、リュウ…
【承前】 「クルマヤせんせえ、それはどういうことです?」 タマガサが眉間にシワを寄せて…
【承前】 「なるほど、興味深いね」 男は口角をくいと釣り上げた。手のひらの上には試験管…
【承前】 雨宿通り奥 ☓☓教宗教施設 街の他の通り同様に荒廃し、略奪と崩壊に満たされた…
【前】 ガヂリと音がモモミヤの右耳に響いた。一瞬の間を置いて痛みが襲いかかってくる。 「う、がぐがぁー!」 叫び声を上げ、耳に手をやる。ぬるりと濡れた感触。手に目を落とす。赤黒く染まった手が見える。 ぺっ、と地面に薄平べったい半円が転がる。赤と肌色のまだら模様。 「そこまでは、鍛えられねえよな」 遠くに声が聞こえる。声だけではない。右側の世界の音が全て遠い。 モモミヤは腕を大きく振り回す。襲撃者は腕を軽く躱す。動揺と耳の喪失により、位置をつかめない。荒く呼吸をして
【前】 「なんすか?」 ノグラが問いかける。タマガサと文則は答えずに立ち上がる。 「毎度…
【前】 「あんだと? てめぇ、なめてんのか?」 「ノグラ黙ってろ」 いきりたつノグラを手…
【前】 「なんだ、てめえは? 怪我したくなきゃ引っ込んどけ!」 男たちのうちの一人、と…
男たちは一言も発することなく、文則を取り囲んだ。 「それで、お兄さんたちは誰さんたちだ…
薄暗い廊下をミタケの大きな背中に背負われて進む。瓦礫をよけるときに少しだけ傾ぐ。萎え切…
【前】 病院での日々は恐怖と苦痛に満ちた日々だった。看護婦が古ぼけた台車を押して廊下を…
【前】 誰かに呼ばれた気がして、文則は目を覚ました。目を開く。自分がベッドの上に横たわっているのに気がつく。切れかけた蛍光灯がひび割れた天井を照らしている。 体を起こす。崩れかけた壁、なにかの汚れが染み付いたベッド。 病室だろうか? 自問する。 部屋には文則の他に誰もいない。 誰もいない? ――沙亜耶! 手の中、失われているぬくもり。叫んだ名は音にならずに消えた。口が動かないのに気がつく。混乱。動転。慌てて口元を触る。ザラザラとした手応え。糸の手触り。乱暴に、