グリーンズの積極出店についてぼんやり考える
このタイミングなので、普通であればプリンスホテルについてぼんやり考えそうなものだが、あえてグリーンズについてぼんやり考えてみる。
コロナ禍における日本のホテルマーケットで、存在感を発揮しているのは早々に「マイクロツーリズム」という表現を広めた星野リゾート、相変わらずの強さを見せつけるアパホテル、そして、積極的にオペレーターチェンジ案件に取り組むグリーンズの3社だろう。この中では、星野代表や元谷代表といった顔が明確な2社に比べると、グリーンズはやや地味である。グリーンズの過去のプレスリリースを遡ってチェックしてみたけど、コロナ以降で、以下のような新規出店(開発案件除く)の状況だった。地味ながら頑張っている。
2020年8月発表(同11月開業済) ホテルメリケンポート神戸元町(元HOTEL meet Me神戸元町)
2020年9月発表(2021年1月開業済) コンフォートイン東京六本木(元ザ・ビー東京六本木)
2020年12月発表(2021年5月開業済) コンフォートイン福岡天神(元ザ・ビー福岡天神)
2021年1月発表(2021年5月開業済) コンフォートイン京都四条烏丸(元ホテルWBF京都四条 錦邸)
2021年2月発表(2021年7月開業済) コンフォートイン那覇泊港(元レッドプラネット那覇)
2件目と3件目のザ・ビーはいずれもユナイテッドアーバン投資法人の物件、5件目のレッドプラネット那覇も野村マスター投資法人の物件だが、既にJHR、星野、いちご、インヴィンシブルと大江戸以外のホテル系REITに組み込まれている実績を有するグリーンズはREITとしては望ましいテナント候補と言える。
グリーンズは東証一部に上場する三重県本社のホテル会社である。やや分かり難いのが、2ラインでホテルビジネスをおこなっていて、ザックリ言うと世の中的に比較的メジャーな「コンフォート」と「それ以外」という分け方になる。
今回は5軒中4軒が「コンフォート」ブランドでの出店だが、全て「コンフォートホテル」ではなく「コンフォートイン」となっている。以前どこかで書いた気がスルガ、東横インやルートインが大量に存在する日本において、●●ホテルと●●インを比較すると(●●は同じ前提)、ブランドイメージの点で、ホテル>インという関係が一般的だと思っている。
そのため、自分がオーナーやAMの立場だったら、コンフォートはいいけど、インはねぇ~と難色を示す気がする。ただ、実際にインでの出店が相次いでいるので、僕の発想が古いのかもしれないし、コンフォートの場合はホテル<インなのかもしれないし、オーナー側としてはどっちでもいいからとにかく入って賃料途絶えさせないで!(きっとこれが正解)ということなのかもしれない。
コンフォートインブランドの良し悪しはさておき、気になるのが、こんなに出店してるけど、そもそも既存店の業績は大丈夫なの?という点だろう。コロナ禍における、営業利益の四半期推移は以下の通り。
2020年4-6月期 ▲3,064百万円
2020年7-9月期 ▲2,173百万円
2020年10-12月期 ▲1,464百万円
2021年1-3月期 ▲2,716百万円
いちごホテルREITに含まれているいくつかのコンフォートホテルの業績動向を見る限り、本年4月以降も業績は目立っては改善していないと思われるので、1年経って、結局また元の状況に戻ってしまった感がある。そして、そんなさなかの2021年5月13日に中期経営計画の取り下げが発表されているが、コロナ禍では直近期の業績すら見通しが立たないので、中計の取り下げはそりゃそうだよね、と。
こうなってくると、さらに気になるのは、そもそも資金繰り大丈夫なの?という点だろう。直近の第3四半期のBS(2021年3月31日時点)を見てみると、現預金が約47億円あって、コミットメントラインも引いているので大丈夫そうだ。ただ、BSで目を引くのは純資産合計の▲約6億円。上記の通り、毎四半期の営業利益で数十億円の赤字というボディブローを食らい続けていれば、営業外で多少のコロナ支援金をもらったところで、自己資本が尽きるのは時間の問題なので、ある意味では順当な結果と言えば順当な結果。
この純資産のマイナスからの連想で気になるのが、コベナンツへのヒット状況で、以下のようなコベナンツが設定されている。①は分かり難いけど、おそらくは要するに、純資産+35億円(下記シローンのトランシェB30億円+商工中金の劣後ローン5億円)がマイナスにならなければよいということかと思われます。その理解が正しいとすると、後約29億円の余裕?があるわけけど、前述の営業利益水準からすると、結構微妙な気がするのは僕だけでしょうか(②は来年度から判定対象になる話なので、今は一旦、無視)。
(財務制限条項)
当社と株式会社三菱UFJ銀行、株式会社三井住友銀行、株式会社みずほ銀行、株式会社百五銀行、株式会社第三銀行、株式会社商工組合中央金庫は、2021年3月26日付で「シンジケートローン契約」を締結しており、借り換えを行った短期借入金5,600,000千円、長期借入金6,000,000千円には、下記の財務制限条項が付されております。
①2021年6月決算期を初回とする各年度決算期の末日における借入人の連結の貸借対照表における純資産の部の金額及び劣後タームローン貸付の元本残高及び本契約上で規定した劣後タームローン貸付以外の金融機関によって資本性が認められる劣後ローンの元本残高の合計額を、ゼロ円未満にしないこと。
②2022年6月決算期を初回とする各年度決算期に係る借入人の連結の損益計算書上の営業損益に関して、それぞれ営業損失を計上しないこと。
毎年本決算は8月7日に発表されているようなので、今年ももう1週間ほどで発表になるんだろうけど今回の本決算の内容には良い子のみんなは要注目だね。
(2021年8月15日追記 以下、有料部分)
毎年発表されている8月7日から1週間遅れでようやく決算が発表された。ところが、決算だけではなく、諸々発表された。
一つ一つ見ていきましょうかねぇ。
サポート→ホテルで使う→note→サポートというサイクルが回ると素敵ですね。