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実際の障害者殺傷事件を題材にした映画「月」を観ました

「月」は2016年7月26日相模原市にある県立の知的障害者施設「津久井やまゆり園」で、入所者19人が殺害された事件を題材にした作品です。

障害者と関わりたいと思って再チャレンジした重度訪問介護ですが理想と現実の相違に疲れ気味の時に知った映画です。観たいと思いつつマイナーで会場と上映時間のタイミングが合いませんでしたが、急遽入った休日で期せず見に行けました。


映画紹介

ストーリー
そして、その日は来てしまった。深い森の奥にある重度障害者施設。ここで新しく働くことになった堂島洋子(宮沢りえ)は"書けなくなった"元・有名作家だ。彼女を「師匠」と呼ぶ夫の昌平(オダギリジョー)と、ふたりで慎ましい暮らしを営んでいる。施設職員の同僚には作家を目指す陽子(二階堂ふみ)や、絵の好きな青年さとくん(磯村勇斗)らがいた。そしてもうひとつの出会い――洋子と生年月日が一緒の入所者、"きーちゃん"。光の届かない部屋で、ベッドに横たわったまま動かない"きーちゃん"のことを、洋子はどこか他人に思えず親身になっていく。しかしこの職場は決して楽園ではない。洋子は他の職員による入所者への心ない扱いや暴力を目の当たりにする。そんな世の理不尽に誰よりも憤っているのは、さとくんだ。彼の中で増幅する正義感や使命感が、やがて怒りを伴う形で徐々に頭をもたげていく――。そして、その日はついにやってくる。

ムビチケ

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感想

見終えて感じたのは余りにも現場とリンクし過ぎで、いつもなら直ぐに書きたいと思う気持ちがショックが大きいかったせいか手につかずに昼食を終えてクールダウンして立ち寄ったカフェで書きました。

聾者の登場と思い出

私が障害者支援(介護)に関わるきっかけに聾者との出会いがあります、聞こえない(聞こえにくい)ために話す事が出来ない方も少なくありません。

凶行に及ぶ元職員のさとくんの彼女は聴覚障害で読話(唇の動きで話しを読み取る)が出来ます。その彼女の耳元で凶行に及ぶ事を伝えます。その行為が思い込みにしろ正義感から出るものだったら正面きって話して、彼女に止めるきっかけが出来たように思います。

聴覚障害者向けの手話ボランティアをしている時に言われたのは「酔っていても可能な限り手話をする」そして「時には意見の相違で対立してもいいが聴こえの保障(手話)は止めてはいけない」でした。
 
我々健聴者は仲違いしてお互い無視する事もあるけどそれは相手の存在を認めた上で話さないと言う選択、聴こえない障害を持つ人から音の情報を断つ事は相手の存在を認めない事たから絶対やってはいけない行為でした。
それはスキル不足で上手く伝わら無い事とは全く別次元の話しです。  

真っ暗な部屋でベッド生活の方の場面

施設の最初の場面に光の届かない部屋でベッドに横たわったまま動かない「きーちゃん」が登場しました。「目が見えず」「落ち着く」ために真っ暗な部屋でベッドに寝ていたきーちゃんの姿が印象的でした。

全盲の方で夜間に照明をつけない方もいますが、晴眼者が夜間訪問すれば照明をつけてくれたりします。きーちゃんは暴れる為にベットに絞り付けたので歩けなくなりまし。
 
高齢者施設でもありがちです。暴れたり転倒リスクの高い方を車椅子やベッドに半強制的に縛り付ける風景も見られます。
理由は圧倒的なヘルパー不足が要因で安全に過ごすため行われている所も多いようです。

話せない人との交流を感じて

新しい障害者施設に非正規で務める主人公の堂島洋子がきーちゃんに話し掛ける姿を(きーちゃんの)お母さんが喜ぶ見て場面に見て胸が熱くなりました。
 
高齢者介護に関わる方は「ありがとうの言葉が嬉しい」と聞きます。話せない重度の障害者と関わわる1人として「感謝の言葉や表情は求めていない、(思い込みかも知れないが)いっときでも心が通じた」と感じた瞬間の喜びが忘れられずに関わっているように思います。

暴れて部屋に入らない方の場面

力づくで部屋に入れる場面がありますが現実的に起きる事です。誰しも突然腕を掴まれて引っ張られれば抵抗します、丁寧に説明して対応する事が建前ですが障害ゆえに理解出来ずに職員も人数等の関係から時間的な余裕が無くついついは力づくで行っていた事が習慣化してしまうことがあります。

弄便(便まみれ)の男性の場面

認知症のお母さんをお世話する家族さんが「帰宅したら家中便まみれで愕然とした」話しを思い出しました。

さとくんが夜間に便まみれの男性の姿を見て何か取り憑かれたように決意してしまう場面でした。
障害者施設のスタッフ一人一人に満たされない思いがあり、ここで働くしか無いといった悲壮感がありました。

記事から強度行動障害について

「強度行動障害」とは 不適切な支援が障害を招く
渡辺 そもそも「強度行動障害」とは何かというと、自分の顔を叩くなどの激しい自傷行為や、物を壊して大暴れするなどの他害行為やパニックが頻繁に起こる状態をいい、主に自閉症の人たちに起こりやすい現象だとされています。

 ただし大切なのは、彼らは生まれつき行動障害だったのではなく、その背景には特有の音や光、触覚などの感覚過敏があって、その不安感や不快感を周囲に伝えられないストレスが積み重なって起こると考えられていることです。

これは強度行動障害の支援者養成研修のテキストの最初に必ず書かれていることです。

市川 私に情報提供してくださった職員の方々がおっしゃるのも、まさにそのことです。強度行動障害といっているけれども、それは不適切な環境に置かれているからひどくなるのであって、暴れるからといって、ただ拘束したり閉じ込めたりするだけでは何も解決しないと

渡辺 その証拠に、津久井やまゆり園では「大暴れして手がつけられない」と判断されていた平野和己さんや吉田壱成さんが、横浜市内の別の施設に移ったところ、まったく見違えるように変化してしまったことです。

Y!ニュースやまゆり園障害者殺傷事件から5年、大規模施設の内部告発が相次ぐことで事件の本質が見えてきた

千差万別ある不安や不愉快の原因を見つけるのは時として辛抱強く探し続ける根気と覚悟が必要です。それは研究者の如く今の世に求められるコスバ至上主義とは相反するものです。

障害者(者)·施設と関わって

介護職に関わらずどんな仕事でもそこに携わる人が似たような背景でも会社そのものを破壊しようと思い行動する方はめったにいません。

生身の人間と対面する事は「人の醜さ」と向きあう事かと感じています。先輩から「介護はドロドロさを見るのではなく、人が生きて行く上での生々しさを感じてほしい」と言われた事が記憶に残っています。

「お金を稼ぐ為」「仕事」と割り切って介護に就く方は虐待に走るケースも多いですが、誠意を持って関わっている人もいつしか疲弊して心を殺して前者になったり離れていくのはとても残念な事に思っています。

その為に自分に出来る事は当時者の障害者の支援は元より、関わるスタッフに寄り添い心の叫びを聴き取り少しでも支えられればと思っています。

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