音痴には辛い季節がやってきました。

 12月も下旬に差し掛かってきました。クリスマス……もありますが、そろそろ忘年会なんて言葉をちらほらと耳にしますね。

 僕にも会社や友人といくつか忘年会の予定が入っています。特にお酒が好きというわけではないけど、普段人とご飯に行く機会が少ないということもあって、多少なりともウキウキと楽しみにしている側の人間なわけです。

 だけど、昔から楽しみにしていたわけではありません。いや、厳密にいうと飲み会自体は楽しみにしていたのですが、その後に行くことの多い二次会……それもカラオケに昔の僕は怯えていたのです。まずはその理由から。

・どうしてカラオケに怯えていたのか。

 タイトルに書いてあるので察しの良い方は気付いていると思いますが、カラオケが辛い理由は僕が音痴だからです。それも超ど級のやつ。どのくらい音痴かいくつかエピソードを簡単に紹介しますね。

 一、中学の卒業式間近、音楽の授業では卒業式で合唱する歌の練習をしていました。そんなある日、僕は音楽の先生に呼び出されました。

 何かしただろうか。先生からの呼び出しというと大抵説教されるとしか思えなかった僕は、身に覚えのないことではありながらビクビクしつつ先生の待つ職員室へと向かいました。

 職員室に着き、音楽の先生のそばまで寄ると先生はこちらを一瞥した後、大きく溜息。ああ、怒られる。そう思った僕は次に先生が口を開くと同時に身構えました。そして、先生からこんな言葉が発せられました。

「クラスの女子から、ほたて君が音痴すぎて卒業式の雰囲気が壊れるから歌わないで欲しいと苦情がきてる」

 思いもしなかった角度からの言葉のボディーブローに泣きました。確かに音痴だと自覚はあったけど、そんな言われるくらい? というか教師なら僕が傷つくことを考えて伝えずに女子の方宥めろよ。

 一応、結論から言いますと卒業式では誰よりも大きく歌い、クラスの女子が激怒。同窓会が開かれた話は聞きますが、一度も呼ばれてません。

 二、社会人になって一年目の頃、友人と夜ご飯に某回転寿司屋に行きました。会社では怒られ、慣れない朝から晩までの仕事に心身共に疲弊していた僕は久しぶりの友人とのご飯に舞い上がっていました。

 その頃はまだ、その回転寿司屋では注文の際はタッチパネルではなくインターホンを押して直接声で注文するタイプでした。

 舞い上がっていた僕は意気揚々と自分が音痴だということを忘れて、オリジナルの曲調に乗せて注文しました。ね↑ぎ↓まぐろ~♪

 真イカが届きました。

 いや聞き間違えただけやろ。と思ったのですが、試しにその後、歌わずにねぎまぐろを頼むと普通に届いたので、音痴だったから説が立証されてしまいました。

 とまあ他にも色々と音痴エピソードはあるのですが、本題ではないのでこの辺りで終わっておきます。

 さて、そんな音痴な僕だからこそ昔は忘年会の飲みの後に、ほぼ確実に誰からともなく発せられる「カラオケ行こうぜ」に怯えていたわけです。

 いや、そんな音痴だからって怯えるもん?

 特に音痴でもない方々は疑問に思うかもしれませんが、めちゃくちゃ怖いです。この気持ちがわかるのは音痴の人だけです。そして、カラオケ行こうぜの後、だいたいこんなやりとりがあります。

「でも僕(私)音痴だし……」

「そんなん関係ないっしょ。プロでもないんだし好きに歌えば良いじゃん」

 そう言われたからこっちも好きに歌ったら、変なリアクションして微妙な空気にする野郎がこうのたまうんですわ。

 上手いとか下手とか関係ないっていうなら他の人が歌い終わった後と同じリアクションとれよ。そっちが想像してた音痴を上回るからって「ごめん」みたいな空気出してんじゃねえよ!!

 音痴の人はほぼみんなこれを体験してる思うので、もう誰も騙されません。音痴を安心させることができるのは他にいる音痴を見つけた時です。

 本当に音痴なんて関係ないと思うなら、カラオケが終わった後、音痴だった人に「楽しかった! また行こうぜ」と言って下さい。それだけで、「本当にこの人には音痴は関係ないんだ」と少しは気持ちが和らぎますので、ほんとお願いします。

 さて、そんな音痴君な僕ですが、ここまで何度か書いたようにカラオケに怯えていたのはもう過去の話なんです。

 今では怯えなくなりました。上手くなったわけではありません。未だに音程とかわかりませんし、ド~(ファ~)なんてことざらにあります。

 それじゃどうして怯えなくなったのか、それはいくつか自分なりの対処法を見つけたからです。

 おそらく音痴の方は今頃「音痴 カラオケ」と検索して、この時期に行われるであろうカラオケ会の対処を必死に考えている頃でしょう。

 しかし、いくら検索しても出てくるのは「音痴のなおし方」という即効性はなく持続することで効果が得られるものばかり。

 もちろん、音痴を気にしている方はそちらをちゃんと実践しながら、来年以降の二次会カラオケで、磨かれた美声を披露していただけたらと思います。

 ここでは音痴のなおし方ではなく、今年のカラオケはこうやって乗り切れ! という方法を書いていきたいと思います。先に断っておきますが、100%乗り切れる保証はありませんので参考程度にしておいて下さいね。では、その方法をまずは一言で書きます。

 歌声以外の部分に注目させろ。

 はい、これです。

 ん? と思われた方もいると思いますが、ここから説明していきたいと思います。

 そもそも音痴というのは歌声なわけです。だから、その歌声をしっかりと聴かれることが嫌なわけです。

 逆に言うと、一緒にカラオケに行ったメンバーが自分の歌声以外の部分に注目するようにすれば、多少なりともあなたの歌声は印象が薄くなるというわけです。ここからは僕が実際に行っている方法を紹介していきますね。

・勝負はカラオケ行こうぜの瞬間から始まっている

 忘年会一次会、飲みの会計も済ませ店を出る。まだ帰りたくないメンバーから「この後どうする?」的な空気が流れ始める。すると、どこからか出てくる「カラオケ行こうぜ」の声。

 これが気心の知れた友人となら問題なくカラオケに行けるでしょう。しかし、カラオケが怖いということは一緒に行ったことのない人もいるということ。そんな時、音痴のあなたが発する言葉は「いいけど、僕(私)音痴で……」ではいけない。勝負はもう始まっているんです。あなたはメンバーの中からカラオケに行ったことのある音痴ではない人を探し出し、こう言うのです。

「〇〇歌上手いよな~!」

 ここはもう特に上手くなくてもいいです。自分より上手ければ後でどうにでもなる。こう言うと上手いと言われた人間は本当に上手ならテスト前勉強したけど、してないことにして高得点とって周りにチヤホヤされたい理論から「そんなことないよ」と謙遜し、普通くらいなら本気で否定します。

 そこであなたは初めて「僕(私)、音痴だからうらやましい」と自分が音痴であるアピールをするのです。

 こうすることで、実際にあなたのターゲットにされた人が普通くらいだったとしても、「まあ、あの音痴からしたら上手いか……」と周りが納得してくれます。しかし、これはあくまで事後処理、この〇〇上手いよなアピールの本来の目的。それは、

人は下手なものより上手いものに惹かれやすいということ。

 つまり、この時点ではあなたがどれくらい下手かより、ターゲットにされた人がどのくらい上手いかに他の人の興味がいくわけです。

 ここであなたの音痴具合が気になっている人は、音痴で仲間を見つけたという嬉しさから興味が湧いているのであなたの仲間になります。やったね!

 こうして〇〇上手いよなアピールすることによって、カラオケに行く前の下準備は整いました。この時点であなたの音痴に気をとられる方は音痴仲間だけで、他の方はターゲットの上手さに興味津々ですので、気兼ねなくカラオケに行って下さい。

全員初めて行くメンバーだった場合は、この方法は諦めて下さい。

・とりあえず最初に歌え

 下準備も無事済ませ、カラオケに到着。みんなのドリンクも注文して最初誰から歌う?と牽制が始まる。これまでならできるだけ歌わないでおこうと歌う順番を引き延ばそうとしていたかもしれませんが、それではダメです。
とりあえず一番に歌いましょう

なんの曲が良いか……最初は盛り上がる曲が基本、そこで選ぶのはダンスナンバー一択

何故ダンスナンバーなのか、それはあなたが踊るにしろ、周りの誰かが踊るにしろ、誰かが踊る曲は歌声よりもダンスに注目が行きがちだからです。それも踊ってくれるのが女の子なら尚良。踊る女の子は可愛いと相場は決まっているのでみんなそっちに注目します。あなたの歌声なんてどうでもいいのです。

 こうすることによって最も緊張する『みんなの前で歌う最初の歌』問題はクリアしました。

・歌詞に注目させろ

 さて、最初の歌問題もクリアしました。ダンスナンバーによって女の子が踊りみんなが可愛い可愛いと女の子を称賛、あなたの音痴は誰の意識にも残っていません。

 しかし、カラオケというものはだいたい順番で歌っていき、そしてまたあなたの番がやってきます。一周終わったということでカラオケに入る前にあなたのターゲットにされた人の歌声が割と普通だったということもバレて、下準備の効果はもうありません。

 さあどうする。よく聴いている流行の曲をいれますか?

 ダメです。流行の曲の場合、どこからかこんな悪魔の一撃が飛んできます。

「この曲好き~」

 はい、もうあなたはその曲をいれたことを後悔したでしょう。あの子が好きだと言った曲を自身の音痴で汚してしまう後悔。どうしてこの曲を入れたんだと、これほど自分に憤ることはない。

 だから流行の曲はNGです。他の歌が上手い人に任せましょう。

 ここで僕がオススメする曲はこちら。

 B-DASH「ちょ」

 知っていますか? 10代や20代前半~半ば辺りの若い方だと知らない方も多いかもしれません。それより少し上の僕と同年代の方は知っている人もそこそこいるかな? くらいの認知度の曲。

 この曲をオススメする理由それは二つ。

一、歌詞がめちゃくちゃで知らない人はだいたいそっちに気がとられる。

 どのくらいめちゃくちゃか、こちらをご覧いただければ理解していただけると思います。

 どうでしたか? 凄いですよね。でもこれでめちゃくちゃカッコイイんです。マジで。オススメの曲なので気になった方は是非一度聴いてみて下さい!

 話を戻しまして、この曲を僕が歌った後の他のメンバーの感想としては「凄い歌詞やな」の一択。みんな歌詞に気を取られて音痴だということなんて気にしていません。ちなみにB-DASHのめちゃくちゃ歌詞の曲は他にいくつかありまして、個人的オススメはSECTORなので是非!

 さて、歌詞にメンバーが気をとられて音痴に気が向かないことは説明しました。しかし、僕がこの曲をオススメする理由は二つと言いました。そのもう一つを説明させていただくと、似たようなリズムが続くので歌いやすく覚えやすい。ということです。音痴にとって覚えやすいというのは凄く大事なことだと個人的には思っていますので、オススメした理由に入れさせていただきました。

 ちなみに、B-DASHはもう解散していますが、ボーカルだったGONGONさん。ボーカルだけあってめちゃくちゃ歌が上手いので真似しようとは思わないでくださいね。

・本人映像に注目させろ

 さあ、ダンスナンバーとB-DASHというメイン技を上手に織り交ぜながらここまでやってきたカラオケ会。そろそろ歌詞に注目させろという弾も尽きてきた頃合い。次にあなたが選択するのは、本人映像がある曲です。

 これにはいくつかオススメがあります。例えばレミオロメン「3月9日」

 堀北真希さんが制服姿で出演していてとにかく可愛い。

 back number「ハッピーエンド」

 出演している唐田えりかさんがめちゃくちゃ可愛い。

 never young beach「お別れの歌」

 小松菜奈さんのガチ彼女感が凄すぎてマジで自分の彼女だと錯覚する。

 等々、色々とありますがこれはどうしたって男目線で見た感想で、女子の意見は僕にはわかりません。そして、どれも音痴には鬼門とも言えるバラード調で例え他のメンバーが画面に気を取られていたとしても、歌うのは少し気が引ける。

 じゃあ、どの曲を歌えば……。そうお悩みのあなたに朗報です。安心安全の本人出演映像を出している歌手(ユニット)がいます。

それは、こちら~~!!

 H Jungle with t

 知らない方に何故オススメなのか説明しますと、なんとこの歌手、あの国民的お笑いコンビと言っても過言ではないダウンタウンの浜田雅功さんとTKサウンドでお馴染み小室哲哉さんのユニットなんです。

 どの曲も歌詞はしんみりとくるものではありますが、曲調がどちらかというとポップでバラードが苦手の音痴の方でも歌いやすいんです。

 しかも本人出演映像があり、若い浜田雅功さんがカラオケの画面で流れ、H Jungle with tを知らない方は「浜ちゃんだ!」と目が釘付けになり、知っている方も「若いな~!」と映像から目が離せなくなること必至!

 もう誰もあなたの歌声なんて聞いていないも当然!

 これでまたあなたの順番は問題なくかわすことに成功しましたね!

・最後はみんなで歌える曲を入れろ

 さあ、ここまでくるとそろそろカラオケも終わりに近づき、次で最後かな? となった頃。またあなたの順番がまわってきました。

 ここはもうこれ!という曲はありません。とにかくみんなで歌える曲を入れること。みんなで歌えばあなたの歌声は他の人にかき消されますし最悪口パクでも大丈夫。

 その時々の年代でみんなが好きな曲をいれるのが良いでしょう。

 ちなみに僕の年代だと、Mr.Children「シーソーゲーム~勇敢な恋の歌~」を入れると、勝手にみんな入ってきて大合唱の大盛り上がりで終えることができるので、オススメしておきます。

 以上が、この時期に行くことの多い忘年会後のカラオケで音痴がなんとか乗り切る方法になります。

 確実に乗り切れるとは保証できませんが、実際に僕はこの方法で今まで乗り切ってきました。つい先日も初めての人と行き、この方法を実行した結果、音痴だとは気づいていないと思われます。試しに、その方に聞いてみますね!

すいませんでした。

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