インド旅行記 総括
こんにちは。レインボーマンには成れなかったアラ還ツーリストのホタテマンです。
さて、無事旅行記も完結し総括したいと思います。がしかし、今回のインド旅行は手強いです。よく英語圏の人は「インドで自分を見つける」と言う表現を使います。また、日本人旅行者ではインドにハマるか絶対再訪しないかの二者択一だと聞きます。私もどちらになるかなと考えながら旅行をしていました。今回ラッキーだったのは現地に義理の親戚が居たことにより、初めての訪問にもかかわらず、かなり深い考察が出来たことです。しかし考察が深まれば深まるほど沼にハマって行くような感覚に襲われる感じもしました。
私は大学で経済学を勉強しました。経済学はざっくり分類するとマクロ経済とミクロ経済に分けることができます。マクロ経済は大きな世の中の流れを経済的にとらえるもの。例えば株価とか為替とか国の財政や貿易収支がもたらす影響とかです。逆にミクロ経済は企業単位の経済を紐解くものです。厳密には間違っているかもしれませんし、既に40年前に習得した学問なので現代では色々変わってきているのかもしれませんが、でも基本は一緒です。
その経済学、特にマクロ経済学の知識をもとに色んな場所の成り立ちやあり用を自分なりに理解しようといつも務めています。そして、結果的に間違っていたとしても、その時点では自分なりの納得の行った結論を導き出していると思っています。しかし、インドに関してはその結論がさっぱり見えてきません。「たかが一週間で何がわかるのだ!」と怒られそうですが、しかしながらたった一週間でこの迷路のような世界に引きずり込んでしまうインドの懐の深さにビビッてまっているのも事実です。
データでインドを見て行きましょう。
面積:328万平方キロメートル(世界第7位で日本の9倍)
人口:14億人(世界第1位で日本の10倍以上)
言語:連邦公用語はヒンディー語、他に公認されている州の言語が21言語
宗教:既に記載済み
識字率:73%(日本はほぼ100%)
軍事力:予算 約651億ドル(核兵器保有国)世界4位(日本は約460億ドルで8位)
主要産業:農業、工業、IT産業
GDP:3.5兆ドルで5位(日本は4.9兆ドルで3位)
GDP/1人:2,257ドル(日本は35,385ドル)
GDP成長率:7.2%(日本は1.7%)
インドは肥沃な大地と温暖な気候から力強い農業生産力がある。食料品は街中に溢れ、毎日大量に消費されている。国土の6割が農地(日本は13%)で食料自給率は100%以上(日本は38%)。特にコメや小麦の生産量は世界でも中国に次ぐ第2位。国内で消費しきれない分を輸出してる状況。14億人を食わせて行ける農業力がインドの安全保障に大きく貢献していることは明白。
インドは意外と工業大国でもある。繊維産業やアパレル等から始まり、鉄鋼や化学工業、医薬品や自動車の生産も行っている。コロナ渦ではいち早くワクチンを大量生産・輸出していたし、インドの有力財閥であるタタ・グループは化学、製鉄、エネルギー、工業(自動車等)、情報通信、日用消費財、小売り、サービス(航空会社、ホテル、ケータリング、ファイナンス、不動産、物流)等、日本の旧財閥に勝るとも劣らない大企業グループである。
ITに関しては世界の下請けをしており、かなり安価でシステム開発を請け負っていることからノウハウがどんどん蓄積されている。また、英語が使える人口も多いので英語圏のコールセンター業務も有名。特に最近はチャットで対応する場合が多いことからインド訛りもあまり問題にならなくなっている。
軍事面でも、印パ戦争により核保有国となり、核拡散防止の観点から西側諸国に袖にされるとロシア(ソ連)から兵器を調達したり、中国とはガチンコで国境紛争の継続やダライラマの為に暫定チベット国家を支援したりと頑張っている。また、予備役兵の数は6億人も居るなど、人材は豊富。
インド全体をデータで見るととても立派で、数年後には4位のドイツや3位の日本を抜いてGDP世界第3位になると言われています。しかし、街中を見て回るととてもそんな先進的な国とは思えない。街中には人と動物が入り乱れ、ごみが散乱し、道路はクラクションが鳴り続いており、交通法規は有ってないような状態。テロ対策は一説にはアメリカより進んでいるとの意見もあり、911の後はアメリカからインドに研修しに来てたりしたようだが、その7年後にはインドでも同時多発テロが発生したりで決して抑えきれているとは言えない。
先進技術と混沌としているように見える社会構造の相反する現実が共存するインド。このような国は世界でもインドだけだと思う。米国や欧州、日本や中国などはその過程こそ違えど、GDPを押し上げた経緯や要因は何となくわかる。
米国は資本主義と民主主義を軸に発展した。その原動力として自由(宗教の自由等)を求めて欧州から渡って来た移民からスタートしているので独特の機会均等を求める性質を持っている。
中国は有史来、様々な王朝が勃興・衰退を繰り返す国であり、現共産党も王朝の一形態と捉えて考察すると色んなことが理解できる。
G7の西側諸国や旧東側諸国も歴史を紐解けば現在に至った経緯やその要因を想像することは容易である。
しかしインドの場合はパッと見では理解できない。社会が混沌としているようで様々なプロトコルがちゃんと存在している。しかしそのプロトコルも言語化できる部分と暗黙で理解している部分があるように思える。インドの長い歴史において沢山の外的勢力に支配されることはあっても、自らの勢力圏を広げる努力はほとんど見られない。
インドは自らの地域を南アジア経済圏と呼んでいる。定義は色々だが、主要国はアフガニスタン、パキスタン、インド、ネパール、ブータン、バングラディシュ、スリランカ、そして小さい国ではモルディブ等である。この中でもインド、パキスタン、バングラディシュとスリランカが過去インドの最大勢力圏であった程度である。
そんな中、欧米企業のトップにインド系が着くケースが増えている。一方、日本人が同じように採用されたとはあまり聞かない。日本人とインド人は何が違うのか。ここからは私の独断と偏見で語ってみたい。
マイペース:兎に角、自由でマイペース。周りを気にする素振りもなく、自分のやりたいように物事を進める。こらはアメリカでもレジで後ろに人が多く並んでいても平然とレジ打ち(スキャンする今では死語?)と顧客が話し込んでいるところを何回も目撃している。
お話好き:本当に良く話す。立ち話が延々と続く。人通りの邪魔になろうと関係なくずっと話している。
交渉好き:何をするにしても先ずは交渉。周りの状況や常識など関係なく、自分が求める結果に対して直線的に交渉を続ける。これが物を買う際の吹っ掛け&値切りをどの商店でも常態化させている要因。私はインドでの買い物をアメフトなどと同じフルコンタクト・スポーツと定義している。
数学に強い:これは特にIT関連に大きく影響していると思うのだが、インドの算数は16*16までを日本の九九のように暗記している。これはコンピュータプログラミングの際に使う2進法との親和性が高い。
宗教が根付いている:ヒンズー教徒が8割近く居る。その他宗教も沢山ある。信仰心はパワーである。
食事を大事にしている:ベジタリアンが多いが、素材から作り込むインド料理は時間がかかる。しかしながら、宗教的理由やその他の理由で素材から作ることをたいへん好む。
温厚な性格:クラクションが鳴り続ける交通事情からは想像もつかないが彼らは決して怒っているわけではない。周りがあまりにもマイペースな為、後ろや横からくる車は常に自分の存在を相手に知らしめる必要がある。この為のクラクションであり、「どけ、コノヤロー!」ではない。
色々書いてきたが、まだはっきりとした結論にたどり着けない。一つインドの不思議を紹介したい。
ご存じの方も多いと思うが、インド、特に私が訪問したムンバイにはダッパーワーラーと言うものがある。これは家庭で調理した弁当を個別に集め、おフィスワーカー(サラリーマン)の勤務先に届ける弁当配達システムである。理由は朝の超満員電車で弁当を持っていくのが大変だったり、暖かい状態で食べさせたいとか、宗教的に禁忌に触れる食材が心配なのもあるが、カースト制により、誰が作ったかにもこだわるのである。
このシステム、実に毎日17万5千個もの弁当を、延べ4~5千の人間で回収、配達している。しかもほとんど間違いなく時間通りに毎日届けられているのである。その正確性と効率性があまりにも神秘的なため、色んな研究機関や大手物流会社等が研究している程である。あの、混沌としたインド人社会において、何故このような芸当が可能なのか。摩訶不思議である。
インドでは既に廃止されているカースト制が今なお根強く存在する。(厳密にはカーストを前提とした差別を禁止しており、カースト制自体は禁止していない。)この制度はヒンドゥー教における身分制度で、その内容は、今生の者は前世の業の報いによりその身分のもとに生まれ、生涯役目を全うすることによって来世の福が保証されるという、徹底した宿命観を篤く信仰しており、この概念が色んな場面でインドの社会システムを繋ぎ止めていると私は感じている。
ここまで考えをまとめながら書いてきたが、全くまとまらない。それがインドなのだろう。よく、人が二人いれば交渉が始まり、三人いれば政治が始まるというが、インドではそれがミクロ単位で毎日至る所で行われており、国力の源になっているのだと思うが、その実態を外部から来たものが再現しようとしても多分不可能だろう。でも、だからこそ、インドは面白いのだと私は思う。
最後に今回の旅行の戦利品。
スパイスやお菓子がメイン。あまり過激では日本人に喜ばれないので選ぶのが難しかった。また、暑すぎて交渉したくなかったので積極的に買い物をしなかった。下の方には娘に買って来たビンディが数個あるが、着ける機会は多分ないだろう。
機会があればまたインドには行きたい。特に首都のニューデリーやコルカタ、バンガロールにチェンナイ等、行きたい場所が沢山ある。がしかし、絶対冬にしたいと固く心に誓うホタテマンでした。
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