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ある老人の溜息と液だれ事情 #2

初めての一人暮らしから3ヶ月にして、福岡で暮らすことになった。

福岡に友達なんていない。
学生時代の知り合いはいたが、親しい友人と言える関係でもない。
年賀はがきでしかやりとりがないので、もし訪ねてこられたとしても何をどういう風にこなすか、まがもたない気がする。

てんてこまいのうちに福岡暮らしが始まった。
購入したての自宅マンションは、賃貸で貸している。
おかしなもので、借主は福岡の方で横浜に転勤で来られた方だった。

自分の福岡での住まいは、すぐに決まった。
家賃は横浜よりも若干安いな、ともうけど大差なかった。
それでもいい物件だったので、即決だった。
急行停車駅で駅から徒歩3分。
大きな通りを挟んで深夜まで営業しているスーパーが3軒もある。
おまけに駅周辺は遊歩道が完備されていて、電柱も地中化されていた。
案外進んでいるのだ。

10階建マンションの4階。
隣は、焼き鳥屋さん。
この焼き鳥屋さんに毎日通うことになる。
何しろ友達なんかいないけど、手っ取り早く知り合いを作ることに時間は掛からなかった。

仕事が終わってから自宅に帰って、まずシャワーを浴びて普段着に着替えてからでも浮いていた。
そのせいで、その焼き鳥屋の客たちは僕がどんな職業なのかだれも気づかなかった。
気づいてくれなくていい、僕はここでは自由人だから。



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