はたらくってなんだろう? ~野﨑まど「タイタン」より~

こんばんは。蛍智宏です。

noteを始めたばかりの私、ワクワクした気分でnote内をうろうろしていたら、面白そうなコンテストを見つけました。Panasonicとnoteがコラボした「投稿コンテスト『#はたらくってなんだろう』」です。

なぜ、私がこれに惹かれたかというと、私にとって実にタイムリーな話題だからです。私には、交換ノートをする仲の友人がいて1週間くらいの周期で交換しているのですが、偶然にも今週が私の番で「仕事とは何か」ということについて考えていたからです。

では、なぜ「仕事とは何か」というテーマの話を展開していたかというと、年の瀬ということで私が今年読んだ本の中からおすすめの本を紹介していたからです。そしてその本こそタイトルにもある、野﨑まどさんの「タイタン」という本なのです。

さて、この本の紹介をしましょう。舞台は2205年、至高のAI・タイタンがほぼ全ての仕事を肩代わりしてくれている時代。この時代ではほとんどの人が仕事をしておらず、主人公をはじめとする多くの人は「仕事」を社会科の授業で習った事柄として認識しているほどです。そんな中、タイタンが機能不全に陥り、趣味で心理学を学ぶ主人公にタイタンの復旧作業の手伝いの依頼が来ます。そして、タイタンやタイタンに関わるこの時代には珍しい仕事をしている人と出会い、「仕事」とは何かを考えていくという物語です。

ここで、みなさんにとっての「仕事」って何ですか?いろいろ答えはあると思いますが、一番分かりやすい回答は「賃金を得るための手段」ではないでしょうか。ですが、この作品ではこの回答は封じられています。なぜなら、この時代には貨幣経済が崩壊しているという設定だからです。詳しくその理由は書かれていませんが、AI・タイタンの台頭で職を失った人が激増し賃金としての貨幣の供給が無くなったこと、消費者が得る財・サービスをAI・タイタンが供給するようになったことで大量生産が可能になり希少価値がなくなった結果対価としてのお金を渡す必要がなくなったことなどの理由が考えられるかと思います。そして、貨幣経済が崩壊した結果、この時代の人々はショッピングではなくコレクト、つまりほしいと思ったものはお店からタダでもらえるというシステムを使って、財・サービスを得ています。そのため、「賃金を得るための手段」という回答は成立しないのです。

このようなわけで、この本の「仕事とは何だろうか」という問いは、難しく本質的な答えを探していくわけです。この本の出した答えは皆さんにぜひ読んでいただいて知ってほしいのですが、おそらく今皆さんの考えている答えよりもシンプルで、でもそこにたどり着くまでの経緯が突飛で、しかもこの答えが出てからの展開はさらに常軌を逸したものになっていると思います。

ここで、やっと私の意見を言うターンにしようと思います。私は「タイタン」という本を読みながら、主人公と一緒に「仕事とは何だろうか」と考えていました。もちろん貨幣経済は崩壊しているという前提で。そして、「自尊心を保つための手段」だと思いました。「仕事」という言葉の定義には、他人に対する働きかけという前提があると思います。私は自分の部屋をどれだけ片づけようと家族のためにご飯を作ろうと「仕事」にはなりえませんが、バイト先で机を拭いたりドリンクを運んだりすれば「仕事」になります。

そして、人間というのは社会的な生物で、他者の役に立つことを良しとします。例えば、複数人でファミリーレストランに行ったときに、他の人の分のドリンクを用意してあげる人の方が、自分のドリンクだけ用意する人よりも優しく見えます。もちろん、他の人のドリンクを用意しない優しさも存在しますが、伝わりにくいですよね。逆に、自分が他の人の分まで用意すると、善いことをしたなという嬉しい気持ちになります。

また、世の中の仕事は、常にだれかの役に立っています。例えば、水道局の人はその町の人が水を使うことの役に立っていますし、メガネ販売会社の人は目が悪い人の役になっていますし、YouTuberの人は視聴者が楽しむことにおいて役に立っています。

つまり以上の3点より、人は「仕事」をすることを善しとし、「仕事」をしている自分も善しとみなすのです。そして自分を善しとみなすことは、自己肯定感の上昇につながり、自尊心が保たれるというわけです。

この回答の背景には、私の経験があります。私は中学生のときに生徒会役員を務めていました。そして2年生の時の文化祭は運営委員の中心として、企画を考えて、広報のポスターを作って、当日には司会も務めました。この時私は、一緒に活動していた他の生徒会役員、文化祭を楽しもうとしている多くの生徒の役に立っていたと思います。が、3年生の時には生徒会役員を引退していたので、クラスのメンバーとしてただ合唱コンクールに参加して一日を終えました。そのときに、「私は文化祭に貢献できなかったな」と中学生ながらに生徒会引退の寂しさと申しけなさを感じました。

最後に、「はたらく」という行為は「『仕事』を行っている」ということだと思います。だから、「はたらく」って自尊心を保つために誰かの役に立つこと、なんじゃないかなと思います。

#はたらくってなんだろう

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