妊娠。稽留流産。自然排出。

昨日、私の身体から8週目の我が子が排出された。


※流産について生々しい描写を含みます。ご注意ください。

妊娠が分かったのは5月の中頃。
すぐに夫と母に報告した。夫は照れながらも、一緒に親になっていこうね、と話した。きてくれてありがとう、私はなんて幸せなんだろう、と思った。

母は、まだ胎嚢しか見えない4週程度のエコー写真を「可愛いなあ」と言ってくれた。「まだ早いよ」と言いながら、母の言葉が嬉しかった。

薬を飲み続けるのが不安で、たくさんあった睡眠導入剤や抗うつ剤の服用を勝手にやめた。


二週間後の診察。心拍がそろそろ見えるかな、と夫と話しながら産婦人科へ。胎嚢は2cm強になっていて、卵黄嚢も見えたが、心拍はおろか胎芽も確認できなかった。

少し不安になったが、先生からは「順調に成長していますよ」と言われたので、そのままできるだけ安静に次の検診を待った。

8週の診察日。少し大きくなった胎嚢と卵黄囊が見えるばかりで、胎芽は見えなかった。
稽留流産の可能性が高い、念の為に一週間後に再検査しましょうと言われた。
きっと私を気遣って一週間後の再検査を提案してくれていた。
今の時期に心拍が確認できないならもう駄目だろう。

近くの喫茶店で待っていてくれた夫に、駄目みたい、と伝えた瞬間、マスク越しに涙が溢れた。
心拍も見えていなくて、まだ母親の自覚もなかったのに、涙が止まらなかった。
何が悲しいのかも分からないくらい悲しい。痛い。
仕事で残業していたから?薬を飲んでいたから?
初期流産の原因のほとんどは染色体異常と分かってはいても、産んであげられなかったことが悲しい。

しばらくは気持ちの浮き沈みが激しくて、
朝はもう大丈夫、と思っても夜寝ようとすると涙がどばっと出て眠れないような日が多かった。
自分で自分の気持ちがよく分からなくなっていた。

会社の人達にはまだ妊娠報告もしていなかったので、通常通り仕事した。
気はまぎれなかったが、在宅勤務なので仕事中急に涙が出ても支障はなかった。
全く別のことを考えていたのに気がつくとお腹の子のことを考えて泣いている、ということが度々あり、仕事は全く進まなかった。

夫は夜になると泣いてる私を心配して、しばらく早めに帰ってきてくれるようになった。
母はそうかぁ、自然に任せるしかないな、とあまり残念そうには言わず、さっぱり接してくれた。

一週間後。流産が確定し、しばらく自然排出を待ちましょうか、と先生に言われた。
うちも二人の子がいますが、間に一人流産しているんですよ。皆、よくあることなんです。
訥々とそう慰められた。

それからまたしばらく待って、もうお腹の子は亡くなってしまったんだ。
もういないんだ。と私が受け入れ始めた月曜日、出血が始まった。
最初は茶色のおりものくらいだった出血が、だんだん赤く鮮血になって、みるみる生理の一番重い日くらいの量になった。

仕事の定時頃から生理痛のような下腹部と腰の痛み、貧血のような怠さが酷くなった。
生理痛懐かしいなぁ、明日か明後日自然排出されるかもしれない。
会社へ明日休む旨を連絡した。

まだ痛みが耐えられる間に、シャワーだけ浴びておこう。
そう思ってシャワーを浴び終わった頃、生理で大きな血の塊がでる時のような感触がして、胎嚢らしき組織が排出された。
初めて見る胎嚢は、正直かなりグロテスクだった。血のついた白っぽい肉片、という印象。
手にとると温かく、死んだ小鳥のような重さ、か弱さだった。

ナプキンに包み、先生に言われた通り乾燥しないように、とジップロックで二重に包んで、排出された時間を記録して冷蔵庫に入れておいた。
自然排出の体験談をネットで見ていて、痛みが酷く、数日長引く覚悟をしていたのに、本当に呆気なく終わってしまった。
胎嚢が排出されてからは子宮がたまにしくしくと痛むくらいで、生理痛のような痛みは収まった。
痛かったのも生理痛の重い日みたいなのが3時間くらい。

私の気持ちの整理がつくまで待って、もう大丈夫って見届けてから、苦しくないようにするりと出てきてくれたのかな、と思った。
痛いのが苦手な弱虫の母親に優しい、良い子だったんだな。
ありがとうね、と言いながら胎嚢を包み、父親の遺骨に手を合わせて
この子をお願いします、とお祈りした。

翌日会社を休んで病院へ行った。
排出された胎嚢は病理検査に出してもらうらしい。
エコーで見てもらうと、これまで胎嚢があった場所に歪な小さい空洞があった。
もうほとんど排出されていて、少しだけ膜が残ってる状態です
これから次の生理が始まるまでの間に排出されて子宮が綺麗になりますからね。
もう手術は必要ありませんね。
生理が一回来たら、また妊娠も可能ですからね。
と先生に言ってもらえた。

子宮収縮剤と抗生物質を出してもらい、家に帰って少し泣いたあと、しばらく眠った。

始まる前に終わってしまったような妊娠だった。
短い間だったけど、ありがとう。
最初から最後までずっと良い子だったね。
あなたの短い生が、せめて私の中で穏やかなものだったならいいな。
安らかに眠ってください。

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