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生後2週間の子猫を拾った。1日目。

出社予定の朝。
いつも電車が混むのが嫌で、6時くらいに家をでる。
身支度をしていると、外から甲高い猫の叫び声が聞こえてきた。
発情期だから近所の雌猫がまたイジメられているのかな、助けちゃろと思い外に出ると、二羽のカラスが握り拳大の何かをつついている。
咄嗟に走り寄ると握り拳大のものを咥えて飛んでいってしまった。そのまま全力疾走で追いかけると20mくらいでポトリと落としていった。最近朝走っててよかった。

近寄ると、目も開いていない子猫の赤ちゃんが足をバタつかせている。
「大丈夫、大丈夫」と言いながら両手の平で包んで連れて帰った。
目は目やにで塞がっていて、毛並みはパサパサで、顔は茶色く汚れている。


ちなみにうちには既に猫を2匹飼っている。
両方死にそうだった子猫時代に拾った子たちだが、そういう猫に巡り合う相なのだろうか。

2匹の先輩猫たちもこの死にそうな子猫を見たら母性が湧くのでは…?と淡い期待をもっていたが、箱入りお嬢様の2匹は案の定シャァーと大人気ない威嚇をしてきた。
飼い主が新しい猫を連れてくるというのは、人間で言うと配偶者が愛人を連れてきて「今日から一緒に住むから」と言われるようなものらしい。ごめんなあ。
感染症や寄生虫をうつしてしまう恐れもある。

取り急ぎ段ボールにタオルケットをひき、カイロをタオルで包んで一緒に入れた簡易的なケージに入れて、洗面所に隔離する。
子猫は体温が高いが、自分で体温調整ができない。夏だとしても自分の体を温められるようにカイロか湯たんぽを入れてあげないといけない、らしい。

まだ寝ていた夫に「子猫がカラスにつつかれてて…」と声をかけると、
「可哀想に…」と返された。言い方が悪く、死体を持って帰ってきたと勘違いしたらしい。
生きてるよ、というとじゃあ良かった、とまた寝てしまった。なんでや。

会社には「すみません急用で今日在宅勤務にさせてください」と連絡し、取り急ぎいつも家の子を診てもらっている動物病院へ向かった。
えらいこっちゃ、と焦る気持ちとは裏腹にやたらと快晴の朝だった。
開院前の動物病院の前で全然動かなくなった子猫と待つ。

拾ったときはあんなに大きい声で鳴いてなのに…
結構な高さから落とされたから内臓とかやってる…?と心配しながら待っていると、大きな猫を連れたおばあさんがいらっしゃった。
「ねこちゃん?」と聞かれたので、子猫を拾って、カラスに襲われてて、と話すと
カラスはねぇ、頭だけ残して全部食べちゃうからねぇ、
つついて食べるから最後まで苦しむのねぇ、と誰も幸せにならない話をされた。
なんでなん。
いうても拾ってもらえてよかったねぇ。と世間話をしていると、病院が開いた。

病院で目の周りを洗ってもらうと、くっついて開かなくなった目からどろっと黄色い膿が出た。
200g。生後約2週間らしい。
拾った時には気づいていなかったが、カラスに既につつかれていたらしく足の付け根が裂けていたので、小さい針で縫い付けてもらった。
寄生虫対策も感染症の検査も小さすぎてまだできないらしい。
こうやって排泄補助してあげて、こうやってミルクをあげて、と教えてもらって、哺乳瓶とミルクをもらう。
このくらいの子はねぇ、2時間おきにミルクあげておしっこさせてあげてね、とさらっと言われてビビる。
占めて診察料金1万円弱也。世知辛い。

急いで帰って絶対でないといけない会議に出てお客さんに怒られたり社内に怒られたりなんやかんやした後、上司に「ちょっとご相談が…」と切り出す。
「え、本当に?」と何回も言われたが、事情を理解してくれて数週間の在宅勤務のお許しをいただく。ありがとう上司。

律儀に2時間おきにミルクを作って飲ませようとしたものの、名無しの子猫は病院でミルクを飲んでからとんと動かなくなり、哺乳瓶の先を咥えさせてもイヤイヤと吐き出してしまう。
そしてこんこんと眠る。
死ぬんじゃないかといよいよ不安になる。

夜になり、帰ってきた夫に「ずっと寝てる」と見せると、
100円のUFOキャッチャーの景品くらいのサイズやね、と倫理観的にどうなんだろう、というコメントをされる。

長くなってしまったので1日目の話はこの辺りで。
取り止めもない日記のような記事ですが、読んで下さった方、ありがとうございました。

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