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本音で話す練習をはじめます。

昔から本音で話すことが苦手だった。
自分の言いたいことを言おうとすると、胸のあたりがきゅっと締まるように苦しくなって言葉が出てこなくなる。

だから、今の今までずっと「会話のテンプレート」を使いこなしながら生きてきた。「こう言われたら、こう答えよう」と相手との会話の内容を予測しながら、あらかじめ返答を用意してながら話すのだ。

多くの大人は、自分の意見をすべて言うのではなく、なんとなく相手を不快にさせないような当たり障りのない話し方が板についているように思う。普通では話せないような愚痴を友達の前で話す、家族の前では本音をこぼしてみる、そんな切り替えをしつつコミュニケーションを楽しんでいる。
社会の荒波に揉まれるうちに、自分の本心と建前の両面をパタパタと裏返したり、表返したりするのが上手になっていくのだ。

私の場合、そんな「当たり障りのなさ」が尋常ではない。
というか、そもそも調節ダイヤルがバグっているせいで、建前のほうのボリュームをぐーんと上げすぎて、本音が出せなくなってしまった。
とにかく相手が聞きたいこと、話したいことに合わせて会話をしようとしてしまうから、人と話しているときの頭のなかはいつも「相手はいま何を考えていて、どう話したら喜ぶだろうか?」という考えでいっぱい。

楽しいコミュニケーションどころか、自分から勝手に「楽しませ役」になって、勝手に疲れてしまう。そうしているうちに、人と会うのが辛くなって、次第に家から出ることも少なくなった。

在宅ワークができるからいいのだけれど、人間社会で生きている以上、誰とも会わないで生きるなんて難しいし、なにより人と出会わないのはつまらないと思うようになった。

当たり障りのない言葉は、誰の心にも響かない


私が本音で話せるようになりたいと思う理由は、もっと楽しく話したいという気持ち以外に、もう一つ理由がある。

それは、建前だけ話す言葉の薄っぺらさに、もううんざりしていることだ。

そりゃあそうである、テンプレで喋っているときは、本気で相手に向き合っていないし、本気で自分と向き合えてもいない。
しかも、思いを言葉にする瞬間って、その思いが否が応でも具体化されて、自分のなかでもっと色濃くなる。
それが私の場合、「話さない」ことでいつのまにか自分の気持ちがなかったことになって、結果的に「話せない」に退化していくのだ。
気持ちを言葉にするって、本当は素晴らしい行動だとわかっているのに。

コミュニケーションが、いつも教科書通りの正解を導き出す時間になってしまっている以上、会話は常にコピーアンドペーストの作業でしかなくなる。そうすると、私も会話がつまらなくなるし、たぶん私と話している相手もたいそう味気ないだろう。

このままでは、きっと誰かの心に響くような言葉は生み出せないままだ。

私の仕事はライター。書くことで今日のご飯を食べているから、ちょっとまずい。

「嫌われたくない」気持ちがコミュニケーションを作業にする

この前、親しくなった人に「君は周りに気を遣いすぎだね、我慢が習慣になってしまっているね」と言われて、なんだかすごく納得してしまった。

余談だが、私は五人姉妹の三女で、生粋の真ん中っ子。
上からは押しつぶされ、下からは押し上げられ、いつも誰かの仲介をしながら育ってきた。
しかも早くに離婚した両親を繋ぐ伝書鳩を兼業していたのだから、後の祭りだ。
自分の過去を探ると、「人の顔色を伺う」性質の要因がわかる気がした。

結局のところ、私は誰にも嫌われたくなかったのかもしれない。
あるいは全員に好かれたかったから、相手の顔色をうかがいながら話す。
相手が喜びそうな言葉を選び取って、適切に投げる。

でも、これって本当に会話だろうか?
それが本当に誠実なコミュニケーションだろうか?

「嫌われたくない」という個人的な願望のために、せっかく出会えた誰かの言葉や気持ちをないがしろにするのは、もうやめたい。

本音で話す練習をしよう

ここでタイトル回収。私は本音で話す練習を始めようと思う。
自分の思っていることを、考えていることをちゃんと語る練習を。

本音で話すっていうのは、なにも思っていることをやたらめったら全部吐き出すという意味ではなくて、もっと相手と深いコミュニケーションをとるように働きかけたいという意味だ。

人生は短い。私がいま、たった一人の誰かと向き合える瞬間は、けっこう素晴らしいめぐり合わせなのだ。

もしも、私と同じ悩みを持っている方がいたら、ぜひ私と一緒に本音で語る練習をはじめましょう。今日からできなくたっていい。すこしずつすこしずつ、自分の心を開く練習をはじめれば、きっと見える世界も変わってくると思うのだ。

(了)

最後までご覧いただき、ありがとうございました。
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