日本大学は復活するのだろうか~元理工学部OBのつぶやき~

日本大学の新しい理事長に林真理子さんが選出されました。この数年、日本大学を巡る不祥事は後を絶たず、いよいよ理事長の逮捕にまで至り、学校法人として補助金をカットされるなど、踏んだり蹴ったりの日本大学ですが、これで浄化されるのでしょうか?というお題です。

ちなみに、当方は1998年に日本大学理工学部交通土木工学科(現在の交通システム工学科)に入学し、縁あって2002年に東京大学大学院都市工学専攻修士課程に入学、2004年に修了しました。いまでこそ、他大学大学院への進学はそれほど珍しくもないですが、当時は「日大から東大って本気か?」みたいなイメージがあったのは事実です。ま、結論から申し上げますと、やる気と意欲とちょっとの向上心があれば全然大丈夫だと思います。世間的には日大と東大には大きな(偏差値的)格差がありましたが、(すくなくとも2000年当時は)学術的な差はそこまでではなかったのでは、と思うところです。
敢えて言えば、いまの大学院入試はTOEFLに移行しているようなので、一定程度以上の英語力が必要となるようですが、、、専門教育という部分で言えば、「はっきりいってしまうと」学部教育に大きな差はなかったと思います。

当時の日本大学交通土木工学科の専門教育は、土木史・土木デザインといった当時の他大学の土木系分野ではほとんど行われていなかった景観・デザイン分野の教育に加えて、公務員試験向けともなり得る力学教育や各種施工分野の実験、そして特色的な交通工学分野と、多様な専門教育が入り乱れていました。(当時、河合塾が専門教育ランキングなるものを冊子化していて、都市計画分野で東大都市工学専攻は日本1位、日大も10位以内には入っていたような記憶があります。)
さらに、理工学部全体としての教養科目もとても充実していて、レイチェルカーソンの沈黙の春やアシモフのロボット3原則をみんなで学ぶ授業があったり、アメリカ近代史から学園闘争を学ぶ抗議(これは、ある意味日大的にはギリギリだった気もしますが・・・)があって、授業の終了後には習志野の飲み屋でさらに学外講義がはじまるという、とても大学らしい展開もありました。雑感ですが、すくなくとも2000年代初頭の日本大学の教育レベルはかなり高水準にあったと感じています。

当時の学長(正確には総長だったと記憶します)は医学部長の瀬在先生、確か結構な長期政権だったかなと思いますが、当時の医学部が大赤字だったこともあり(たぶん、今もそう変わらないでしょう)、改革派となる新たな総長が求められていたところでした。
そして、当時の日本大学生ならば記憶されている方もいらっしゃるかなと思いますが、ここに一矢報いた法学部長の先生が、この赤字体制を鋭く批判した結果、法学部は暫くの間建物改修すらされなくなるという、、、なんとも冷遇された時代に突入するのです。
日本大学の創立は、1889年設立の日本法律学校にさかのぼり、法学部は創立の基となる学部にあたります。その後、理工系学部や文系学部を次々と設立し、現在の規模になっていくわけですが、その原点となる学部ですら、この扱いになるというところ、権力闘争の影となる部分が見え隠れしていたりするわけです。(ちなみに、その後に瀬在氏後の改革を進めたのがほかならぬ田中前理事長というのは、、、なんともいえぬ歴史を感じさせるところではあります。)

1960年代の学園闘争のなかでも特に先鋭的であった「日大闘争」においても、その後、あらゆる左翼的な組織が一掃された(ちなみに日大には大学生協が存在しません。これもその時の一因と言われています。)点からしても、日本大学は巨大であるがゆえに、権力抗争に巻き込まれやすい側面を持っていると言えると思います。

そして、そんな腐敗に満ちた日本大学、林さんがどこまで組織改革を図ることができるのか、かなり未知数だなとイチOBとしては感じています。恐らく、すでに林さんはやるべきことが見えていると思います。日本大学に巣くうあらゆるしがらみを一掃し、学生第一の立場から教育・研究水準の底上げを図り、ちらばった専門教育を「日本大学ブランド」のもとで一つにまとめ上げていく、そこしかないかなと思われます。
ただ、独立性の高い各学部がどこまで「日本大学」の名前のもとにまとまることができるか?大いなる課題です。とくに理工系学部(同じ大学に、理工学部、生産工学部、工学部と3学部が併存、文理学部も一部重複)や赤字体質と思われる医学部、重複する歯学部と松戸歯学部等の統合再編、リベラルアーツや国際系などの教育機能の統合的再編(国際関係学部は何故か三島にある)など、必要な施策は多々あるかなと思います。
同レベルだった東洋大学が新設学部や学科再編によって、入試偏差値・倍率を伸ばしたのとは真逆に日本大学は殆ど教育分野に手を入れることなく(せいぜい、危機管理学部をつくったぐらい・・・これもブラックジョークでしかないですが・・)現在に至っています。
日本における大学教育を大衆化したという意味において、日本大学が果たしてきた役割は非常に大きいと思います。いま、その歴史を見つめ、新しい大学教育を広げていく、その新しい発展が日本大学に期待されているところです。イチOBとしては、林理事長に期待したいと思っています。

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