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互いのキングは睨み合う/チェス


ポーンエンディング

エンドゲームの重要性

前回、私はいささか格好をつけたようにこう述べた。

"オープニングは華々しく、
されどチェスの本質はエンドゲームにこそあり。"

チェスに関するエンドゲームの考え方は、
非常に奥深い。
盤上にピースはほとんど存在しないのにもかかわらず、
そのテクニックは複雑なのだ。

まず私はこの簡素化された盤面における、
戦略について学習したことを記そうと思う。

ステイルメイト

私はエンドゲームを理解せずに挑んだ対局で、
何度も勝ちを逃してきた。
これはかなりの苦い体験である。

チェスにはステイルメイトというルールがある。
これは簡潔にいうところの”引き分け”であり、
自分の番になっても、
動かせるピースがひとつもない状態を指す。

ステイルメイトの一例

こうなってしまっては、
いくら優勢局面であったとしても、
強制的に"引き分け"となってしまう。

だからこそ優勢なほうは確実に勝利するために、
劣勢なほうはミスを誘いステイルメイトにするために、
エンドゲームを学ぶのである。

エンドゲームのなかでも、
まず私が着手したのが、
キングとポーンだけが盤上に残された局面。
すなわち、ポーンエンディングである。

オポジション

オポジションの考え方

いかにして相手のキングを追い詰めるか――。
ポーンエンディングのなかでも、
いくつかの戦略が存在する。

そのなかでも私が今日取り上げるのが、
オポジションの考え方についてである。

<第1図>

<第1図>のように、
互いのキングが真正面にあり、
睨み合っている状態がオポジションの位置である。

基本的にオポジションの位置を最初にとったほうが、
相手のキングを追い詰めていくことができる。

<第1図>では、
1.…Ke6 2.Kg5 Kf7 3.Kf5 Kg7 4.Ke6 Kf8 5.Kf6
一例としてこの手順で黒のキングを8ランクに押しやることができる。

ポーンが残った場合

ポーンが1つでも残った場合、
優勢側はそのポーンを昇格させてクイーンにすることで、
勝利を狙う。

<第2図>は、
白側がポーンを1つ得している盤面の例である。

<第2図>

ここでも重要な考え方はやはりオポジションである。
白はKf4としてオポジションの位置をとる。

その後は先ほどと同じ要領で、
白はオポジションを維持しつつ
相手のキングを押し上げていく。

1.Kf4 Kg6 2.Ke5 Kf7 3.Kf5
ここまでで<第3図>の盤面となる。

<第3図>

続いて、
3.…Ke7 4.Kg6 Ke6 5.f4
と指すことで、
黒のキングがポーンを狙う手を牽制することができる。
ここまでで<第4図>の局面である。

<第4図>

5.…Ke7 6.f5 Kf8 7.Kf6
これで再びオポジションの位置に入り込む。<第5図>
6手目の黒Kf8は、
白Kg7としてfラインを封鎖させないようにするためである。

<第5図>

7.…Ke8 8.Kg7 Ke7
先述の通り、ここで白Kg7が実現するため、
fラインが完全に封鎖され、
黒のキングは白のポーンの昇格を防ぐことができない。
<第6図>

<第6図>

これで、白はポーンをクイーンへ昇格することに成功し、
黒のキングをメイトすることが可能となる。

オポジションを利用した、
ポーンエンディングの一例である。

さいごに

オポジションはポーンエンディングを考えるうえで、
欠かせない戦略のひとつである。

しかし、オポジションを保持していたとしても、
ポーンの配置状況によっては、
黒がステイルメイトに持ち込むことができる場合もある。
<第7図>の場合は、互いに最善手を指した場合、
必ず引き分けになる。

<第7図>

今回、考察している盤面は、
キングとポーン1つのみという非常にシンプルなものだが、
チェスのエンドゲームはこのように非常に奥深い。

"エンドゲームを制するものはチェスを制す"
といっても過言ではないのかもしれない。

             ―B.―

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