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俺はこの特撮が好きだ!「仮面ライダーX」

「巨大な悪の組織に父と共に殺された神敬介は、瀕死の父の手によって仮面ライダーXとしてよみがえった。彼の恋人涼子はなぜGODについたのか?そして、霧子とは?謎のGOD機関を相手に戦う仮面ライダーX!」(オープニングのナレーションより。)



どうも、「妖」です。今回は僕が昭和ライダーの中で最も愛する「仮面ライダーX」について話します。

ストーリー解説


この「仮面ライダーX」は、前作「仮面ライダーV3」で一号、二号、V3の物語を終わらせて、新しい仮面ライダーを始めようとして作られた作品です。そのため、当初は「メカとスパイアクション」の要素を前作より押し出した作風でした。また、第二話のように人間ドラマがメインの話もあります。それに加えて、Xライダー=神敬介が変身ポーズではなく「レッドアイザー」と「パーフェクター」というアイテムを使って「セッタップ」という動作を行って変身したり、殺された父が「神ステーション」という人工知能を搭載した島になったり…….とSF要素をたくさん盛り込みました。


さらに、いつのまにか敬介の恋人、水城涼子が敵組織「GOD」の一員になっていて、敬介がその理由を探ろうとし、その前に必ず涼子と同じ顔をした「霧子」が現れる……..といった伏線も用意されていて、確実に「V3」までより対象とする年齢層を上げようとしていたようです。
でも、これがすべて裏目に出ちゃったんですよね………………………
涼子、霧子の件は子供には難解だと判断されたのか第八話で早くもネタ晴らしがされます。実は、涼子は秘密調査員で、GODの秘密を探るために仲間になったふりをしていたのです。そして、霧子は涼子の双子の妹で、GODに潜入した姉に代わって敬介を助けてしまったのです。そして、霧子は怪人アトラスの吹き矢を受けて絶命。涼子も、裏切り者ということが発覚したために元々体に埋め込まれていた爆弾が作動させられ、爆死してしまいます。


年間を通した伏線だったはずのこの設定が、序盤で明かされてしまった時点で「X」の本質は少し失われてしまったと言えます。しかし、僕が愛する「仮面ライダーX」が始まるのはこれからなのです。
涼子、霧子の死という悲劇で幕を閉じた第八話ですが、そのラストに、赤いマスクを付けた謎の怪人が登場します。彼こそ、仮面ライダーシリーズ最初のライバルキャラ、アポロガイストなのです。


彼は、白スーツに身を包んだダンディという人間体を持つ、今でも人気の高いキャラで、専用のバイクや、変身ポーズもあるところなどは後々出てくるシャドームーンなどの「悪のライダー」の先駆けにも見えます。
ですが、「悪のライダー」っぽくも、平成のライバルキャラのように「正義」にはならないところもポイントなんですよね。
それは第14話で見せたアポロガイストの最期にも表れています。
仮面ライダーXとの直接対決に敗れ、人間態に戻ったアポロガイストはハンカチでスーツをはたいた後、Xに手を伸ばして「最後の握手を……」と握手を求めてきます。Xライダーはそれに応じますが、実はそれは罠でした!その直後にアポロガイストは「アーム爆弾で死ねえ!」と叫びます。握手の為に差し伸べた手は実は爆弾が仕掛けてある義手で、それを爆発させて自分もろともXライダーを殺そうとしたのです。しかし、結局はXライダーが機転をきかせて爆死を回避し、アポロガイストだけが爆死してしまいました。
しかし、彼の人生がこれで終わったわけでは無かったのですが……….

さて、アポロガイストが第二の死を迎えた次の回から、大きく路線が変更されます。まず、代表的な変更点として、「キングダークの登場」があるでしょう。

キングダークは、GODの新基地に居座っているボス格の巨大ロボットで、世間を騒がせた悪人(ヒットラー、ジェロニモ等)を怪人としてよみがえらせた「悪人軍団」を率いてXライダーに挑戦します。
キングダークが登場するまでGODは、「GOD総司令」という謎の人物が支配していたのですが、キングダークが登場してからは総司令は一切登場していなくて、最終回で、出現したキングダークを操っていた人物、「呪博士」が総司令の正体なのかどうかは、公式サイトでもあやふやにされています。

とまあ、全体的に華やかで、印象的なキャラもいましたが、欠点や作品世界の変更が目立つ出来栄えになってしまいました。僕の中では「失敗作だけど好き」っていう位置づけの作品なんですね……..でも、「仮面ライダー」、「ストロンガー」などの成功作より遥かに気に入ってるのは確か。

Xライダー、神啓介について

さて、続いてXライダーこと神敬介について話していきます。
神敬介は、今までの主役ライダーと比べて未完成な感じが漂っています。(主役ライダー以外なら結城丈二も未完成感漂ってましたが)父とすぐ喧嘩したり、父が啓介を守るために着させた防弾ジャケットに対しても「こんなダサいの着れないよ」的な発言をしたり、少年にキツイこと言われて父に泣きついたり…………….。そして、孤独なんですね。恋人との悲しい別れを経験してますし、父も「神ステーション」になったはいいものの、息子の自立を願って自爆してしまいますし、今までのライダーには、必ず仲間のファイターがいたんですけど、それもいません。例えば、仮面ライダー1号には2号が。そして、その横には滝和也と少年仮面ライダー隊という大組織。仮面ライダーV3では少年仮面ライダー隊は秘密基地まで作って巨大化しますし、佐久間ケンや結城譲二などもいました。なのに、神敬介には滝和也や佐久間ケンに当たる仲間もいなければ、少年仮面ライダー隊もいません。おやっさんはそれなりに頑張りましたが、漢字表記もされなかったチコとマコのヒロインはいっつも捕まってるだけ。少年に嫌われたライダーなんて彼が初めてなんじゃないですか?しかも最終回直前に来てくれた一文字隼人と風見史郎は最終回にはなぜか来てくれない。他の事で忙しかったのかもしれませんが、先輩ライダー二人組は、無責任と言っちゃああまりに無責任です。
だからこそ、なんか敬介に感情移入しちゃうし、見ていてもXライダーを応援したくなっちゃうんですよね。中盤以降はだんだんファイター的な性格になっていきますが、それもそれでグッド。
一方、変身後のXライダーについてですが、七人ライダーの中では唯一明確なモチーフを持っていないライダーとなっています。
体色については、「水色」と言う人もいますが僕は銀色だと思います。ピカピカ輝いている「銀」じゃなくて「いぶし銀」って感じの渋い銀ね。

そして、彼は今までのように悪の組織で改造されたのではなく、父が自身の研究を応用して作った深海用改造人間、カイゾーグという設定です。この「カイゾーグ」という造語は劇中やエンディングテーマなどでも出てきましたが、残念ながら「改造人間」ほどは流行りませんでした。この辺でも今までのライダーとの違いを出そうとしていたのでしょう。そして、次作「アマゾン」は仮面ライダーから「改造人間」というイメージを一切消し去った作品になっています。
それよりの特色として、最初の「武器を持ったライダー」であることが挙げられます。Xライダーのベルトは「ライドル」と呼ばれ、右側に備えられたグリップを引き抜くと武器となります。

引き抜いたグリップは「ライドルホイップ」と呼ばれる基本形態になっていて、付いているボタンを押すことで「ライドルロープ」「ライドルスティック」「ライドルロングポール」の形態に変形させる事ができます。
ライダーに武器を持たせたことによって、戦闘シーンが今までとは違ったイメージの物になり、怪人も武器を持つようになり、今までとは違った怪人モチーフ(後述)と合わさって、新しい雰囲気を出してくれました。
そして、変身ポーズの件です。Xライダーは「セッタップ」という動作を行い変身することはさっきも書きましたが、後半はセッタップを行わなくなります。 
Xライダーは、怪人クモナポレオンに敗れ、重傷を負ってしまいます。ですが、そこに仮面ライダーV3、風見史郎が登場ッ。史郎は、自分の血液を全て敬介に輸血し、彼の体に「マーキュリー回路」をセットします。
マーキュリー回路をセットされた後のXライダーはセッタップの代わりに「大変身」という通常の変身ポーズのような動作を行って変身するようになり、「真空地獄車」という新しい必殺技を使うようになります。もちろんこれはテコ入れ。それにしても、「大変身」って、かなり安直なネーミングな気が……………………

怪人モチーフの変化

続いて、Xライダーと戦うGODの怪人について話していきます。
初期の怪人は「神話怪人」と呼ばれている怪人たちで、ヘラクレス、サラマンドラ、イカルスなどギリシャ神話に登場した怪物や神などがモチーフになっていました。これはある意味石ノ森章太郎らしいモチーフで、人面の怪人が多いのも特徴でした。また、神話をモチーフにしたということで、遠目で見ると彫刻のようにしか見えないという難点(?)もあります。

そんな神話怪人ですが、子供には若干分かりづらいモチーフで、記憶に残りづらいという難点がありました。そのため、キングダークが登場してからは先ほども言った「悪人怪人」が登場するようになります。
悪人怪人というのは、具体的に言うと、著名な悪人の死体を探し出し、その死体に動物の能力を加えて再生し、怪人にした……….というものなんですが、突っ込みどころ多し。一に「悪人を怪人にする必要なくね?」二に「神話どこ行った?」三に「フランケンシュタインとかルパンとか架空の悪人が紛れ込んでるのは何でだ?」 
でも、こうした突っ込みどころを発見して笑いながら楽しむのが「X」という作品なんで、温かい目で見てやってください。
それに、神話よりこっちの方が石ノ森章太郎も思いつきやすかったかもしれません。
それに、子供でも「ヒトデとヒットラーだからヒトデヒットラーだ!」とか、「ムカデと楊貴妃だからムカデヨウキヒだ!」とか結構神話怪人に比べて記憶に残りやすいんですね。
でも、一つ難点がありまして、現代で再放送するのが非常に難しいんです。実在の悪人を無断で使ってるんですから仕方ないのかもしれませんが、特に「ヒトデヒットラー」という怪人なんか再放送は絶望的でした。


でも、TOKYO MXで「仮面ライダーX」が再放送された際には、ヒトデヒットラーの回も難なく放送!MXさん、ごりっぱ。

シリーズを通した縦糸の変化

「仮面ライダーX」は、三回もシリーズを通した縦糸が変わってます。そういうのって、普通変わんないと思うんですけど…まあ、見ていきますか。
第一話~第八話の縦糸は、神敬介の人間を捨ててカイゾーグになったことへの葛藤と、涼子がなぜGODについたのかの謎、そして霧子の謎です。結果的には涼子はGODに潜入捜査をしていたというネタばらしがされますが、涼子は劇中で本当にGODの味方になったかのような冷酷なこともしているので、涼子がGODについた理由は別に考えられていたのでしょうか?今となっては分かりません。
第九話~第二十一話までの縦糸は、Xライダー最大のライバル、アポロガイストとの終わりなき戦いです。「X」を最も盛り上げた存在と言えるアポロガイスト。今までのライダーと同じく「悪の中間管理職」的な立場のキャラでありつつも、演じた打田康比古のキャラクターと、独特の位置づけが手伝って、「X」の雰囲気を壊さない程度に番組の勢いをぶち上げてくれました。
第二十二話~第三十五話までの縦糸は、巨大ロボット幹部、キングダークが送り込む「GOD悪人軍団」との戦闘と、キングダークを自由に動かすのに必要な「RS装置」の九枚の設計図をめぐる争奪戦です。キングダークは、ビジュアル的には新しかったかもしれませんが、キャラ的には今までのショッカー、ゲルショッカーなどの「首領」と変わりはなく、僕の中では「X」で一番印象の薄いレギュラーキャラかもしれません。
一方、悪人軍団の方は、最初っからビジュアル的にも、迷走っぷりも良くて、どの怪人も好きです。特に、最後の方の怪人は、怪人ごとにそれぞれ服装を変えた戦闘工作員を連れていたりして、迷走感120点。(ムカデヨウキヒは中国服を着た戦闘工作員、サソリジェロニモjrは羽飾りを頭に付けた戦闘工作員など)「なんでこのタイミングでその設定を入れてくるのか?」という疑問もわきつつ、「でもそこが良いんだよねー」となんとなく設定変更を受け入れちゃってる自分がいるので、まあ良しとしましょう。

ということで、全体的にちぐはぐに見える三つの縦糸ですが、いざ見てみるとこの路線変更の数々がクセになるんですよ。そして、作品全体を見ても他のライダー作品より盛り沢山な感じの作品になってるので、別に路線変更が悪かったというわけでもないでしょう。

「仮面ライダーX」お気に入りエピソードベスト5

では最後に、「仮面ライダーX」の中で特に気に入っているエピソードを五個紹介します!
第五位……第31話「立て!キングダーク」
第四位……第2話「走れクルーザー!Xライダー!!」
第三位…..第14話「アポロガイスト くるい虫地獄」
第二位…..第1話「X.X.Xライダー誕生!!」
第一位…..第35話「さらばXライダー」

第五位はその無茶苦茶な感じが見ててクセになる回です。GODの騎馬部隊とXライダーの対決….が一応見せ場だと思うだがGODの馬がたった二頭なので予算が無いの見え見え。
第四位は、Xライダーが当初目指していた路線をハッキリ打ち出したエピソードです。ラストの神敬介のセリフ「人間じゃないってのも、いいもんさ…..」が印象的です。
第三位は、アポロガイストのキャラがしっかり堪能できる回。再生怪人の方がメインになっちゃってる第21話よりも、こっちの方がアポロガイストの最期としては印象的です。
第二位は、ご存じの通り第1話。真面目に作ってるんだけど、どこかB級感漂ってる雰囲気が初っ端から視聴者を虜にしてくれます。
そして堂々の第一位は最終回。前回と前々回に登場した先輩ライダー2人はついに来ませんでしたが、最後はやはり「ロンリー仮面ライダー」で終わらせましょう、ということでしょうか。「仮面ライダーシリーズ」で初めて心から好きになれた最終回でした。

まとめ

やはり、「仮面ライダーX」はその独特の世界観が魅力です。今までの仮面ライダーシリーズとは一味違った作品に仕上がっており、序盤、中盤、終盤のどこを見てもその雰囲気はヒシヒシ伝わってきます。どうしてもライダーが揃ったりするとマイナー枠に回ってしまうXライダーですが、この記事を元に、「X」ファンが増えてくれたら嬉しいと思っています。



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