東京にあるすべての公衆電話ボックスを訪ねたい

私は、自分の学生時代のことをあまり覚えていない。単に覚える気がないというのもそうかもしれないが、トラウマを思い出さないようにしているのかもしれないと薄々感じている。しかし、ふと思い出すこともある。

小学校一年生の時だった。私も含めて、男女5人くらいで下校していた。道端に、公衆電話ボックスがあった。
なんでそうなったかは覚えていないのだが、公衆電話ボックスに入れと言われて、私は入ったのだ。その瞬間、一緒に下校していた4人がかりで、扉を押さえつけられた。そう、私は公衆電話ボックスに閉じ込められたのである。私は、大声で泣き叫び、扉に体当たりしたのだが、多勢に無勢。開くはずもなかった。私を閉じ込めていた彼ら彼女らは、ゲラゲラと笑っていた。遊びのつもりでやっていたに違いない。公衆電話ボックスに閉じ込められて泣き叫ぶ姿は、さぞかし滑稽で面白かっただろう。

公衆電話ボックスは、世界から隔絶された空間である。ボックスの中に入ると分かるが、四方を囲まれたあの狭い空間の中では、街の音が非常に小さくなる。その中で、利用者は公衆電話を用いて、空間ごと電話先と交信するのである。
しかしそんな公衆電話ボックスも、携帯電話の普及により、数をますます減らしている。

私は、東京にあるすべての公衆電話ボックスを訪ねたい。公衆電話ボックスに入り、あの日、閉じ込められた私に思いを馳せる。次第に街から姿を消す公衆電話ボックスと、記憶の隅に追いやられたあのトラウマを重ねる。

それ以降、私は公衆電話ボックスを見かけるたびに中に入り、写真を撮るようになった。そして気づく。
思ったより、公衆電話ボックス多いやんけ!!!!
東京を1時間歩くだけで5~6個見つけられてしまうのだ。もっと少ないものだと思っていた。あと、バス停のそばにあることが多い気がする。
東京にあるすべての公衆電話ボックスを訪ねるのは、思ったより大変そうである。

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