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無名の人の時代

わが石川県には二つの文学賞がある。金沢市が主催する泉鏡花文学賞と、金沢学院大学が主催する島清恋愛文学賞がある。今年から後者の選考委員に藤田宜永氏の後を受けて島田雅彦氏が加わることになった。その島田雅彦氏の意見か分からないが、これまで東京のホテルで行われていた選考が学生傍聴のもとで金沢学院大学で行われるようになった、ということだ。文学志望の大学生が生の作家の批評に接することになったわけで、とても素晴らしいことに思えた。芥川賞や直木賞は大手出版社が主催し選考は東京の料亭で行われて、選考の結果はマスコミに大掛かりに報道される。時代の趨勢は特権的な文学賞から普通の市民的な文学賞に広がっていくと思う。小説は特権的な作家や職業的な編集者の仕事から、誰もが関わることのできる市民参加の芸術になった。本屋大賞という文学賞もある。それは文学の衰退ではなく、文学の発展ではないだろうか?

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