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空から宙(そら)へ。オール北海道で宇宙産業を牽引し、豊かな生活を実現させたい。

みなさんこんにちは、HOSPO編集チームです!

「北海道に、宇宙版シリコンバレーをつくる」というビジョンのもと、北海道大樹町に民間に開かれた宇宙港構築を進める北海道スペースポート(以下、HOSPO)についてお伝えしていくnoteです。

今回は、HOSPOを運営するSPACE COTANのメンバーをご紹介いたします!紹介するのは、SPACE COTAN株式会社でCEOを務める小田切義憲。元々、全日本空輸株式会社やエアアジア・ジャパンといった「空」に長く務めてきた小田切でしたが、この春、SPACE COTAN株式会社が立ち上がるタイミングで「宙(そら)」に関わる事となりました。人工衛星を打ち上げられる射場であるHOSPOを通じて、生活の質の向上をしていきたいという小田切は、どんな未来を描いているのでしょうか?

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小田切 義憲(おだぎり よしのり)
SPACE COTAN株式会社 代表取締役社長兼CEO
1987年全日本空輸株式会社に入社。運航管理業務部門を経て、成田空港や羽田空港でのオペレーション体制再構築を務める。その後、エアアジア・ジャパンCEOを経て、ANA総合研究所にて地域創生等の業務に携わり、2021年4月より現職。

ーーこれまではずっと「空」に携わってきたと聞きました。

全日本空輸株式会社(以下、ANA)に入社以降、航空業界に35年くらい務めていました。最初は「運航管理業務」に関する仕事をしていました。航空機の安全で効率的な運航のための管理業務を行う運航管理者は国家資格なのですが、どんな仕事をするかというと、天候や機体の状況、乗客数などを見て、積む燃料だったり、飛ぶ高度だったり、トラブルごとの対応など、1便ごとに決めていく仕事です。その経験を元に、日本だけでなく海外の航空当局とも調整しながら、オペレーションに関する基準、社内規則を作っていました。

その後、成田国際空港勤務時にアライアンス毎に航空会社をまとめるというターミナル運用の変更に伴い、空港内で大規模な引っ越しがありました。2年がかりでANAはスターアライアンスの各社とともに第1ターミナルに移転しましたが、その際オペレーション部門の責任者業務を行いました。
2007年からは東京国際空港(通称、羽田空港)に戻り、国際線ターミナルビル(現ターミナル3)の拡張時オペレーション関連業務の責任者として準備してきました。
そして2011年、エアアジア・ジャパンがANAとマレーシアの合弁で最初に設立した際と、2回目の日本進出の際にCEOを務め、2016年の春に、ANA総合研究所に入社しました。当時はコロナウイルスの影も形もなかった頃。どのようにすれば空港を軸に人を集められるか、特にインバウンドを呼び込めるかという観点で向き合っていました。

ーーそうして、SPACE COTANのCEOに就任したんですね。

そうです。宇宙と関わる仕事は今回が初めてです。

ーーどのような経緯でSPACE COTANのCEOになったのですか?

2020年9月に、大樹町長とお会いしたのが始まりです。「空」はやったことがあっても「宇宙」は未経験。「私にそんな大役が務まるのかな?」と思いつつ、大樹町の射場やインターステラテクノロジズ(以下、IST)を見学しました。
そうすると、ISTとHOSPOの関係は、航空会社と空港管理会社(例えば全日空と成田空港株式会社)の関係性と極めて近く、頭の中で役割をすぐに整理することができました。
なので、空港管理会社の立場である私たちのやるべきことはすぐにイメージできましたね。自分の経験と親和性があると思いましたし、力になれるかなと思いました。

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他にも、過去の経験で培った人脈を使って、政府にアプローチする部分も手伝えるなと。HOSPOの手が回っていない部分や足りていない部分が、私の強みだったこともあり、やれるかもしれないと思いましたね。

ーー普段はどんな仕事をされているんですか?

政府や中央に働きかけるロビーイングや大樹町の認知度を向上させていくことが重要です。
宇宙産業は、我々のような射場もそうですが、ロケット開発、ロケットに載せる人工衛星開発、人工衛星から取得したデータを利用した事業といった企業から成り立っています。ロケット開発や人工衛星などでリードしている企業等はありますが、航空宇宙産業というエコシステムとして全体像を俯瞰して計画立案できているかと言われると少し弱いと感じています。特に射場の整備が一番置いていかれていると思ってます。

ーーでも、最近は射場も盛り上がっている気がしています。

日本には射場が4箇所あって、中でも大樹町は35年前から一生懸命やっているわけなんですが、他の射場を追い越してHOSPOが一番を目指すのではなくて、4射場がそれぞれの強みを生かし、協調していくことが重要です。協力しながら、日本に宇宙産業を根付かせ伸ばして行こうと思ってやっています。

特に大樹町は、ロケット打ち上げ環境が良い、アクセスが良い等地理的なアドバンテージがあり、「天然の良港」と感じています。10年後、20年後を見据え、様々な活動を行っていきます。

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▲北海道スペースポート VISION BOOKより

ーー大樹町に引っ越してきたと聞きましたが、普段はどこで仕事をされてますか?

札幌、東京に月1〜2回程行っていますが、このご時世ですから。基本は大樹町の自宅で仕事をして、打ち合わせの多くをウェブ会議で行います。

札幌では、北海道への働きかけに力を入れています。大樹町が35年前構想に着手し、実現しようとしてきたスペースポートですが、大樹町だけで進められるものではありません。「オール北海道」として取り組むことに意義があると思ってます。
 北海道では2015年に538万人であった人口が2045年には4分の1程度減って、推定人口400万人になるという調査があり、私は大きな危機感を持っています。その時には従来4人でやってたこと仕事を3人でこなさなければならない。例えばここ十勝には広い農業用地がありますが、先取りして効率化、省力化を加速し収穫量や収入を維持しなければなりません。一方、海外は人口増加に伴い食糧危機も予想されていますので、収穫物に付加価値をつけて海外へ売っていくことなども考えるべきです。ここに宇宙産業が寄与できる領域は大きいと考えています。宇宙は、多くの産業との掛け合わせということなんです。

ーー他産業との掛け合わせ、例えばどんなことがありますか?

例えば、夜中に自動運転で野菜を収穫し、その日の朝一番の便で輸送すれば昼には東京の一等地で販売することができるんです。「北海道で今朝採れて、生でも食べられるとうもろこし」だなんて、人気が出ないわけがないですよね、1本700円以上でも売れますよ。精度の高い人工衛星のデータを利用して、自動運転のトラクター等を使えば、「採れたてとうもろこし」という付加価値をつけ、新たなビジネスに繋がるわけです。

農業・漁業に関して、人工衛星を利用して更に効率化を目指そうと、いろんな企業が立ち上がってきています。でも、まだ全体的なネットワーク構築には課題があると感じています。例えば農協が「農協人工衛星」を打ち上げられたら、農協に属する農家さんが効率化できて儲けが増える、効率が上がるところに繋がります。
そういう、ニーズに合わせた人工衛星を打ち上げられる場所として、HOSPOがあるんです。

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▲北海道スペースポート VISION BOOKより

ーーHOSPOでは、今後どんなことをやっていくんでしょうか?

全日空で経験した運航管理は、天候を考慮して飛行機の飛ぶ高度、乗客数を予測して機体に積む燃料の量、天候不良の際にどこの空港に行くかまで、1便を飛ばすために本当に全てを知らなければならない仕事でした。ですから、エアアジア・ジャパンを立ち上げるのも、こういう仕事がこういう時に発生するな…と、イメージがしやすかったんです。航空機のオペレーションというのは、何かトラブルが発生した時に大事にならないために事前に可能な限りのダメージコントロールを考えて仕事をすること。それはロケットも同じだと思っているんです。現在、HOSPOの射場を使っているのはISTのみで、ISTがすべてのオペレーションをやっています。でもゆくゆくは、ロケットを打ち上げるために本質的に必要な部分をISTが担い、射場管理をする我々SPACE COTANがやるべきところは役割分担を明確にして担って行こうと思います。
それは、近隣の住民の方や、農協・漁協など、射場の周りの方々への理解促進や調整業務も同じです。そうやって、ロケット打ち上げに関するコーディネーション業務を我々が全うし、毎回何も問題なく、安全かつ円滑にロケットを打ち上げられるように環境を整えていきたいと考えています。

ーー航空会社でオペレーション業務に長く携わってきたからこそですね。

ロケットの打ち上げに際しても宇宙関連の企業の皆さんだけではなく、一般の方にも見てもらうために、コロナ禍からの回復後を見据えて、打ち上げ見学場所を皆さんに開放していきたいと思います。ただ打ち上げを見て終わりではなく、子供向けの宇宙関連イベントをやったり、ご飯を食べたりできるようにし、町にも貢献していきたいですね。
これはISTの話ですが、2024年には年間10回程度、つまりほぼ毎月ロケットを打ち上げるる計画と聞いています。その頃には、ロケット打ち上げを十勝地域における重要な観光産業の一つとして運用したいですし、きっとその頃には大樹町に新しいホテルができたり、飲食店が増えたり、町もにぎやかになると思います。
それと日本としても取り組みを開始しましたが、P2P(Point to Point)と言われる、有人宇宙輸送についても積極的に関与したいです。航空会社の視点から見ても、時間価値の高いビジネスパーソンは利用すること間違いありません。日本からニューヨークまで宇宙経由40分で到達できる時代が来る。ニューヨークに行って仕事して、ブロードウェイでミュージカルを見て、ステーキ食べて日帰りできる未来なんて、楽しみ以外の何でもないですよね。

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ーー町が良い意味で変わりますね!

私はHOSPOに関わると決めてから、目指したいことがあるんです。今、大樹町の人口は5,500人弱ですが、宇宙関連産業に従事する人口を同じだけ増やしたいと思っています。そうなると約11,000人。この数字は、昭和30年の11,296人という大樹町のピーク時人口とほぼ同じになるんです。そこまで人が増えたら、地元大樹高校に宇宙航空学科等ができたり、小学校も1つじゃ足りなくなるかもしれないですよね!
化石燃料を使用する自動車業界の変貌がこのところ著しいように、企業のメイン事業も、時代とともに変化を求められる中、柔軟性が乏しく、変化に対応できない企業は市場から消えていくことは必定です。
例えば富士フイルムはデジカメ、スマホの登場前に、かつてカメラ、フィルムを作っていましたが、その技術をヘルスケア、化粧品分野に移転し成功してます。最近のニュースではHONDA技研もロケット開発に参入していますよね。

ーー他に宇宙によって、我々の生活ってどう変わるんでしょう。

宇宙は、夢とか憧れの存在という時代から、我々の生活の質を高め、より効率的な生活を送るために必要な手段になってきています。便利になって楽をしたいのは人間の本質です。楽をするために、まず何が不便かを考え、徹底的に深掘りすることです。その不便なことの多くは人工衛星を使って解決できると思います。移動ということに注目すると、私が中高生の時には、頻繁に利用する駅の電車時刻表(名刺大程度)を持ち歩き、それに合わせて電車に乗り遅れないようにするのが当たり前でした。また、旅行する際には、大判の時刻表やロードマップを持ってそれを調べつつ悩みながら目的地にたどり着いていました。それらは今では全く過去の出来事ですが、当時はそれが当たり前でそこに改善策があるとは思えませんでした。しかし今では人工衛星とIOT、AIを組み合わせて不便を解消できる方策は山のようにあります。

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▲北海道スペースポート VISION BOOKより

現実面で言えば、一日も早く普段利用する自動車全てが自動運転になって欲しい。そうなると広くて移動が大変な北海道で生活することがすごく楽になりますよね。
私はいつも、帯広から札幌に行く際にJRを使うか車を運転して行くかとても悩みます。JRは本数が少なく、車の時間的優位性は高いのですが、3時間の間運転以外何もできません。やっぱりその3時間仕事等できないのは惜しいです。でも、自動運転になったら、生活が変わりますよね。自動運転も当然人工衛星を使うので、まさに宇宙の活用です。
生活が楽になると、空いた時間でこれまでにできなかったことがどんどんできて、よりおもしろい世の中になっていくと思います。みんなで考えて、みんなで豊かな暮らしにしていきましょう!

北海道宇宙サミット2021のお知らせ

「宇宙って面白そう!」「でもどうやって知ったら良いの?」と思った皆さんに、とっておきの機会が待っています!
2021年11月4日〜5日に、北海道にて「北海道宇宙サミット2021」が開催されます!もちろん、オンラインでも配信しますので、現地に来なくても大丈夫。
宇宙を、様々な切り口から読み解くこのカンファレンス。最新動向や未来予想、宇宙を軸にした北海道の地方創生など、宇宙ビジネスのキーマンとともに熱く議論していきます!

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DAY1 11月4日(木)

アジア初の民間にひらかれた宇宙港「北海道スペースポート」をまるごと体感できる特別なオンラインツアーを開催します。JAXAや大学、民間企業の航空宇宙実験が行われている滑走路、インターステラテクノロジズのロケット打上げも行われているロケット射場、ロケット工場などのスポットを、インターステラテクノロジズ ファウンダーの堀江貴文をはじめとしたツアーガイドのアテンドと共に巡ります。本ツアーは、日本旅行の宙ツーリズム専門ブランド「sola旅クラブ」とのコラボレーション企画として実施いたします。民間の宇宙開発の最先端をご体感ください。

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名称
北海道スペースポートまるごと体感オンラインツアー
Supported by 日本旅行

日時
2021年11月4日(木)10:00-11:45

開催方法
オンライン

参加費
4000円/1名

内容
北海道スペースポートの施設(ロケット射場 Launch Complex-0、滑走路)やインターステラテクノロジズの工場やロケット射場設備をオンラインにてめぐるツアーです。

申込方法
Peatixからチケットをお申し込みいただきます。ツアー日が近づきましたら、オンラインツアーのURLをPeatix上にてお送りします。
https://hokkaidospacesummit2021onlinetour1104.peatix.com
※チケットに関する注意事項:チケットお申し込み後のキャンセルについてはお受けできません。ご了承の上、お申し込みをお願いいたします。

DAY2 11月5日(金)

名称
北海道宇宙サミット カンファレンス

日時
2021年11月5日(金)10:00-17:00 (開場 9:00〜)

開催場所
ベルクラシック帯広(北海道帯広市西2条南35丁目1番27号)

開催方法
現地開催
※新型コロナウィルス感染症拡大防止の対策を行い、開催いたします。
※オンライン配信も同時に行います。概要については後日お知らせいたします。

参加費
無料

申込方法
Peatixからチケットをお申し込みください。
https://hokkaidospacesummit20211105.peatix.com
オンライン配信の視聴はチケットのお申込みは不要です。
※チケットに関する注意事項:チケットお申し込み後のキャンセルについてはお受けできません。ご了承の上、お申し込みをお願いいたします。

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詳しい情報はこちらを御覧ください!
https://hokkaidospaceport.com/summit/

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