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内部告発者の末路

 後悔先に立たず

 大学生の頃、「愛という名のもとに」で中野英雄が演じたチョロの末路を見て、証券会社だけには就職したくないと思った。

 喉元過ぎれば熱さ忘れる

 人の記憶は当てにならないもので、前述のドラマも月9と思っていたが、木曜日の10時であり、大学生ではなく高校生だったようだ。

 そして、親の脛を齧って遊び呆けた挙句、就職活動も適当だったので、証券会社に就職することになり、約二十五年間勤務することになった。

 朱に交われば赤くなる

 証券会社の定着率は低い。

 一部に現場の苦労を知ることのない腰掛けの存在はいるものの原則、弱肉強食だ。

「数字が人格だ」や「殺人や強盗以外なら何をやっても数字を出せ」などは日常茶飯事に耳にする。

 ジャイアンばかり採用する証券会社にのび太が放り込まれた状態だった。

 課長よりも課長代理が怖かった。

 角刈りに半袖、パンチパーマにベルサーチのスーツに趣味の悪いロレックスなど一般社会では眉を顰めるような服装だった。

 人の行く裏に道あり花の山

 同期も新規開拓に出ると喫茶店に屯してお茶を濁していたが、一線を画して行動した。

 表彰セールスの行動を見て、行動パターンに気が付いた信用取引を利用した回転売買が主力なので、数少ない顧客だけで数字を上げていた。

 山一廃業の影響も僕には追い風になった。

 今回の趣旨とは外れるから詳しく書かないが、僕は徹底して非常識な行動で成果を上げることに成功した。

 僕の人事発令の一部をここに示す。

1996年5月名古屋支店営業部

1998年12月名古屋支店営業部法人営業課

2001年3月蒲田支店

2004年3月堺支店

約九年間で三回の異動、上司との衝突はありながらも順風満帆な船出であった。

2004年5月首都圏営業部第一課

2005年9月首都圏法人部

2006年休職・シンクタンク出向

2008年9月復職・人事部(外資系親会社出向予定)

2008年10月休職・外資系親会社出向

2009年4月復職・錦糸町支店

2009年8月企業情報部業務課

2010年1月第五企業情報部事務局

2010年1月兼コンプライアンス統括部

2010年1月兼第六企業情報部業務課

2010年3月企業情報管理室大阪事務局

2011年3月企業情報管理部大阪コンプライアンスオフィサー

2012年10月第三公益法人部大阪公益法人第二課

2013年3月第三公益・法人営業部大阪公益・法人営業第二課(機構改革)

2014年4月第三公益・法人営業部大阪公益・法人営業第一課

2014年9月事業法人営業部大阪事業法人営業課

2015年3月プライベート・バンキング管理部大阪駐在

2015年8月法人業務部

2016年3月決済業務部デリバティブ業務課

2016年8月決済業務部エクイティ業務課

2018年9月産業調査部

2018年10月産業調査部財務戦略課

2019年3月人事部

2020年4月フロントサービスセンター池袋サービスセンター

 約十三年間で二十四回の異動、ここに何があったかを明らかにしていく。

 

 内部告発の保護要件

真実性・真実正当性

通報対象事実、つまり告発内容の正当性を立証できる根拠、証拠があること。

ただし、労使間の情報の非対称性に鑑み、告発内容の根幹的な部分について真実であるか、真実と信じる相当の根拠があれば足りるとされる。

目的の公益性

公益性があり、自分の私的利益追求の目的や加害目的がないこと。

社内の権力争いが目的であったり、企業を脅迫して利益を得る目的がある場合は認められない。

正当性

告発手段・態様が正当であること。

企業内の公益通報窓口(ヘルプライン)が有効に機能している場合は、まずは企業内部での改善努力を求める意味で、最初にそれを用いた内部通報が選択されるべきとされる。

外部に告発する場合も、その方法や情報を伝える相手の選択などにより裁判例上判断が分かれている。

告発すべき情報の入手方法も問題となり、多少の無断コピー程度であれば問題ないとした裁判例はあるが、企業秘密を社会的に相当でない方法で侵す態様での情報入手までが保護されるかは異論がある。

 

 公益通報者保護法に基づく公益通報(2019年7月6日)

ご担当者様

いつもお世話になっております。

掲題に関して、長期にわたる事案を通報させて頂きます。

発端は、外資系子会社時代の生命保険についての不正問題を社員組合に通報したことです。

社員組合担当者が被通報者(蒲田支店在籍)と懇意であった為、パワーハラスメントの対象となりました。

社内通報への通報の結果、堺支店へ異動となりましたが認知症夫婦の投資信託の短期乗換を通報することで、以降は会社が結託してパワーハラスメントを助長しました。

お仕置き部屋と呼ばれる首都圏営業部へ異動となりました。

その後、シンクタンク在籍時は、社長によるお手盛り出張及び中国人留学生を虚偽により永年非正規雇用としていたことを社内通報に通報しました。

ここまでは10年以上前になるので会社として保存されていない可能性があります。

2010年に企業情報管理部在籍時は、メガバンク出向のY執行役員からTOBに関する進捗資料作成を拒否し、F常務による執拗な脅迫も拒否した為、大阪担当に転勤させられ、

不祥事発覚後の第三者委員会からの聞き込みも対象外とされました。

社内通報も「威力業務妨害で逆に訴える」と脅迫され、大阪公益法人営業部へ異動となりました。

大阪公益法人部在籍時は、メガバンク担当者との個人携帯利用、A学院、B大学、C神社等の口座に関して、法律上認められないメガバンクによる関与を指摘しました。

社内通報の裁定も問題ありで、組織を混乱させたということで大阪事業法人営業課へ異動となりました。

当時の人事部D副部長は、「過去の経緯も含めて、当方の言い分が正しいので過去の人事は変更できないが、今後人事部がフォローする」と言って、形式的にはメガバンク協働に関するルールの厳格化を指示しました。

メガバンク融資先から見返りで仕組債を購入する事例(E組、F産業等)ばかりであり、

新規公開や公募株もG副部長のプライベート・バンキング時代の顧客であるH優先であり見返り接待も目に余った為、

社内通報に通報し、メガバンク外資系共同会社管理室に異動となりました。

メガバンク外資系共同会社の存在は、言語道断でメガバンクが優越的地位を濫用して仕組債を販売し、当社は事務代行という扱いでした。

人事部のD副部長に連絡したところ「子会社担当となったので」と取り付く島もなかったので、

社内通報への不信感もあり、メガバンクグループ通報へ通報しました。

コンプライアンス統括部のH副部長が担当となり、最終的には、「あなたのやっている行為は、威力業務妨害だ」、「優越的地位の濫用なんて存在せず、有効活用だ」、「大切な金を貸しているのでそれ位当たり前だ」、「二十年も会社勤めしていてそんなことが理解できないのか」、「自分がやっていることを後悔させてやるからな」と言って形式的な終了となりました。

その後は、ご指摘の通り何処の移動先でも強烈なパワーハラスメントを受け、この7月1日(月)付で降格人事と「激減措置で五年間で給料が半分となります」、「戦力外通知と考えて頂いて問題ありません」、「転職活動のお手伝いはさせて頂きますが、会社への不利益発言をした際には容赦しません」と言われました。

自分への不利は承知で公益通報させて頂きました。

金融商品取引法(銀行法)の観点では難しいなら、厚労省へ労働基準法の観点で通報し、

両者とも難しいのであればマスコミ等へ持ち込む覚悟です。

証拠に関しては、社内通報、メガバンクグループ通報、社長への提言等が会社に存在しています。

一部は印刷して保管していますので提出可能です。

よろしくお願いいたします。

 

 証券取引等監視委員会公益通報窓口(2019年7月9日)

メール拝見致しました。

いただいた情報に対し追加でご確認させていただきたいことがございます。

貴殿から通報いただいた内容につきまして、どの法律のどの部分に違反しているかについてご教示いただけますでしょうか。

今般いただいた通報について、追加で情報提供をいただく場合は、7月16日(火)までにお願いします。期日までに返信いただけない場合や必要な情報の提供を望まれない場合は、いただいた通報については、当委員会の「情報提供窓口」への情報提供として受け付け、活用させていただきたいと考えておりますので、ご了承願います。

 

 公益通報者保護法に基づく公益通報(2019年7月9日)

早々のご連絡ありがとうございます。

当社及びメガバンクグループが問題なしと判断しているので、甚だ自信が無いのですが、論点を下記に整理させて頂きます。

【情報管理の観点】

インサイダー情報に関する懸念を内部管理責任者が示した結果、人事異動の発令により阻害され、問題が生じた際には、第三者委員会の聴聞対象外で作成し、監督官庁への報告を実施。

【優越的地位の濫用の観点】

金融商品販売法及び銀行法でも、銀行による仕組債の販売は禁止されると認識しています。また、債権者の立場から新規貸付の見返りに仕組債を販売することも同様と認識しています。しかしながら、メガバンク出身の会長、社長は組織的に関与し、後者に関してはホールセールでも顧客若しくはメガバンクが何か言ってきたら自らが乗り出すと主導的な立場で推進。

【人事権による異論の排除の観点】

過去10年以上も顧客本位と市場の公正性を提言し続けた結果の報復人事。

【監督官庁報告の信憑性の観点】

自主性を重視して報告及び申告による検査を標榜していましたが、信憑性が担保されなければ、金融行政の根幹が破綻。

以上が問題無しと判断されるのであれば仕方がありません。

よろしくお願いいたします。

 

 公益通報者保護法に基づく公益通報(2019年12月18日)

ご担当者様

先日、下記の内容を連絡しましたが、返信がないので再度連絡させて頂きます。

研修不正に関しては複数の所属部署で内部管理責任者に相談した結果、報復人事を受け、内部告発に対しては芽も葉もない噂で会社を誹謗したとして降格処分を受けました。

しかしながら、12月9日(月)16:23の全社員向けメールで「不適切な受講をしている社員が数多くいることが発覚しました。」と認めております。

ご確認よろしくお願いいたします。

 

ご担当者様

いつもお世話になっております。

過去に問題なしとご連絡頂きましたが、一般常識が根底から覆っている昨今なので、改めて申請させて頂きます。

【社員相互の監視】

自分自身も上司の命令で実施したことがありますが、それ以降は拒否しております。

しかしながら、違法であることを指摘しても一向に改められません。外国の判例を見ても許容されないことは明白です。

【組織的な研修の不正】

以前より指摘してきましたが、言うに事欠いて報復人事がなされています。

先日からの社内調査によって、明白となりましたが内々に幕引きを図ろうとしていますが、倫理研修等は外部団体の認定研修であり、外部報告への報告が必須と考えます。

 

メガバンクグループ監査委員会最終メール(2021年3月16日)

昨年10月31日にメガバンクグループ通報頂いた内部通報につきまして、当社監査委員会における調査結果を、メガバンクグループ内部通報規則に基づき、添付書面のとおりお知らせいたします。 

本件につきましては、貴殿より頂いた情報から、結論に影響を及ぼすような新たな事実が検出されなかったこと、

また通報対象事実から相応の年月が経過しており、調査に限界があったこと等の事情もあり、この調査結果となりました。

尚、ご意見、ご指摘がお有りでしたら、お手数ですがご連絡いただき、ご面談の上で今後の参考とさせていただければと存じます。

よろしくお願いいたします。

 

 最後のメールは僕が早期退職した後でもあり、その後決済業務部エクイティ業務課及び産業調査部で見聞きした立会外分売時における相場操縦の事案は完全に無視されていた。

 2019年7月6日以前は内部告発ではなく、所謂内部通報しか利用せず、事前に直属の上司と話し合った結果、人事報復が繰り返された。

 

 事例紹介

トナミ運輸

1974年にトラック業界の闇カルテルを告発したトナミ運輸元社員(2006年9月20日定年退職)串岡弘昭が、告発が匿名でされなかった為に、32年間も閑職しか与えられなかった。串岡はこの処遇を内部告発に対する不当な報復行為として、2002年1月にトナミ運輸に対して訴訟を起こし、2005年に勝訴判決を得ている(富山地判平成17年2月23日)。

 

愛媛県警

2005年に愛媛県警の裏金問題を告発した仙波敏郎が裏金作りへの協力を拒否した為、1974年から警部補のまま、据え置かれた。2004年北海道警の元警視長原田宏二が、告発に踏み切り、全国的な問題として認知される。

 

雪印乳業

輸入牛肉の保管先だった西宮冷蔵で「偽装工作」を密かに行う。豪州産を「国産」という箱に次々と詰め替えたのである。それを知った西宮冷蔵の社長、水谷洋一は雪印側に対し、「『買い上げ申請の牛に間違いで輸入牛が混じっていた』と謝るべきだ」と告げたという。雪印食品が応じることはなかった。西宮冷蔵が調べたところ、同社の倉庫内では計13トン、買い上げ価格ベースで約1500万円の偽 装工作が行われた。雪印食品全体の偽装は計約2億円分に上ったことが後に判明。  

雪印食品が応じることはなかったので、西宮冷蔵水谷洋一は新聞社などに 偽装の事実を連絡した。雪印食品も事実関係を認めて経営が急速に悪化し、告発から3か月後に同社は解散。

 

公益通報者保護法

2004年6月18日公布、2006年4月1日施行

 

2004年

白い恋人、赤福、船場吉兆等

 

オリンパス

上司の違法行為を内部通報したため報復人事を受けた濱田正晴は会社に在籍したまま配転無効を訴えた裁判は2016年6月、最高裁がオリンパスの上告を退け、配転は報復だったとする高裁判決が確定。ところがその後も濱田さんは報復を受け続け、なんとチームリーダーの職位を解職され、平社員にされた。

 

公益通報者保護法の一部を改正する法律

2020年6月12日公布、2022年6月1日施行

 

その後の顛末

金融庁が2023年10月7日、SMBC日興証券に対して一部業務停止命令と業務改善命令を出した。悪質な相場操縦に加え、顧客情報の不正入手が理由で、処分は親会社の三井住友フィナンシャルグループ(FG)にも及んだ。大手証券で何が行われたのか。

 ―相場操縦事件とは。

 SMBC日興が、大株主から購入した大量の株を顧客に転売する「ブロックオファー取引」対象の10銘柄について、株価が下がりすぎないよう自社資金で違法に買い支えたとされる。元幹部6人と法人としての同社が金融商品取引法違反罪で起訴された。

 金融庁はこの相場操縦について、SMBC日興に同取引の3カ月間の停止と経営責任の明確化を含む業務改善を命令。三井住友FGには改善措置命令を出した。大手証券への業務停止処分は極めて異例だ。

 ―顧客情報の不正入手は。

 同一グループの銀行と証券会社は、銀行の貸し手としての地位悪用を防ぐため、「ファイアウオール規制」により顧客情報の共有が制限されている。しかし、SMBC日興は顧客企業の意に反して、三井住友銀行から株式売り出しや買収などに関する3件の非公開情報を得ていた。SMBC日興の執行役員が同行に対し、主幹事証券になれるよう企業への働き掛けを依頼していたケースもあった。

 金融庁はこの規制違反で、SMBC日興に業務改善を命令。三井住友銀と三井住友FGにも、根本原因の分析や類似事案の調査を含む報告徴求命令を発した。

 ―なぜこうした問題が起きたのか。

 金融庁はSMBC日興の審査体制の不備を指摘した上で、大手証券が求められる「市場の(公正性を確保する)ゲートキーパー(門番)としての自覚に欠けていた」と批判。法令順守意識が希薄で、自社の利益を優先していたとも断じた。

 SMBC日興への行政処分は過去のインサイダー事件などを含めて今回が4回目で、不祥事の教訓を生かせてこなかったのは明らか。金融庁は単なる再発防止にとどまらず、不公正取引を防ぐ体制の強化や法令順守を重視する健全な組織文化の醸成も求めている。

 ―会社側の対応は。

 SMBC日興などは11月7日までに再発防止策を含む改善計画をまとめ、社内処分を行う。同社の近藤雄一郎社長の進退が注目されている。(2022年10月24日時事ニュース引用)

 最悪の結果を迎えてしまったが、僕は最善を尽くした心算であり、この教訓を活かして頂きたいと切に願う。

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