ミニマリストな暮らしより雑多な部屋が好き

「全部美紀ちゃんのものだから落ち着く」
「あの子は貴族」という映画の中で、お嬢様の華子が田舎から上京してきた美紀の部屋に入った時に言ったセリフだ。
私は妙にこのセリフがしっくりきた。いつも洗練され用意された部屋で暮らす華子にとって小さな部屋にギュッと収まっている本や雑誌、壁に掛けられた服や写真が珍しく、美紀という人間をそこに感じたのだと思う。

ここ数年ミニマリストがブームになり、モノに縛られないシンプルな生き方がたくさん紹介されてきた。服は最低限の枚数、家電も必要不可欠なものに絞りもちろんTVは持たず映画やドラマ、本はサブスクを活用、モノが少ないので狭小住宅でも事足り家賃も抑えられる。なんなら家を持たずにスーツケース一つに収めたアドレスホッパーなんかもいる。
モノや人間関係に縛られない生き方はとても身軽で自由を謳歌しているようでかっこいいし憧れる。

だが私はごちゃごちゃとモノがあふれた部屋も好きだ。
何色が好きなのか、何にお金をかけるのか、どんな本を読んで何に影響を受けたのか、住人のバックグラウンドが透けて見えるようで面白い。

私もモノが捨てられないというよりは「捨てたくない」ものが多いのだ。旅先で買ったダサいマグネットが冷蔵庫にいっぱいくっついていたり、好きな漫画や読み返すかわからにけど面白かった小説が詰まった本棚。アルバイト代でせっせと集めていたCD。たまの休日にしか着ないワンピースや学生の時好きだったバンドの派手なTシャツがまだ残っているクローゼット。
引っ越しの度にモノを減らそうとしているはずなのに、生きているだけで物は増えていく。でも「好き」で埋められた部屋はやはり落ち着くし幸せだ。

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