マガジンのカバー画像

比較的悪くない記事

24
習作の内、比較的悪くない出来の記事
運営しているクリエイター

2020年12月の記事一覧

そこは夢の跡

とあるスナックについての思い出。 駅前に、文字通り傾いたスナックがあった。 その名もスナック 「ドリーム」。 桃色文字の黄色い看板には蔓性の雑草が巻き付き、入り口のビニール屋根はくすんで破れて、傾きかけたコンクリの建物はもやはり蔓が巻き付いていた。 実家から駅までは遠く、また自転車で通える距離の学校に通っていたので駅を利用する機会は決して多くはなかったが、両親が運転する車の窓から覗くこの異様な店は子供心にも妙に惹かれるものがあった。なんとなく、両親にここについて尋ねるのは

宮崎県の民放について その1

宮崎県の民放が2局しかなくて寂しかったという話。何故それだけしかないのか。 学会で宮崎県を訪れた時のこと。 国内開催で参加者のほとんどが日本人という環境ではあったが、私にとっては初めての国際発表であった。結果として台本は飛ばす、質疑は全く聞き取れず、応答は何一つ通じず、実に楽しい学会であった。 普段は学生の発表中、常に頭を抱え貧乏揺すり舌打ちと我々に圧を掛け、終わってから延々と悪態を突いてくる指導教官も、なにかの峠を越えてしまったのか優しかった。6年間いた博士の先輩ですら

苺ましまろは俺の頭をおかしくさせるヘロインなんだ。

海外掲示板のとある記述についての話。 「苺ましまろ」というアニメに対する海外の反応である。 https://cough.cocolog-nifty.com/blog/2013/06/encore2-9896.html 苺ましまろは俺の頭をおかしくするヘロインなんだ。 ばらスィーのアートスタイルに近い当初のキャラクターデザインの方が好きだとしても これを見ることは最高の幸福だ。美羽の妄想ファンタジーには爆笑した。 特に伸恵が。わおーん、わおーん!(笑)折笠富美子のエンディ

ケンタッキーの遺骨

祖父の棺桶に副葬品として入れたケンタッキーのフライドチキンの骨が遺骨に混じっているのではと、ふと思った話。 *以下しばらく前置きになります。本題は次の*以降なのでそこまで飛ばしてもらってもOKです。 もう5年も前の話になるのだが、祖父が亡くなった。建設会社(自営業)の社長だった祖父だが、亡くなる1年程前から胃癌を患い病床に伏せていた。徐々に痩せていく祖父を見て私は心が痛んだものだった。 大学に通っていた私に母から今すぐ帰って来いとの連絡が来た。祖父の病状が急変したのだ。

「通うんだからね」という文章から想像されうる性別について

――タイトルの文章について、誰の声で再生されただろうか。 表現の明快さは時代によって変化するという話。 谷崎潤一郎の「文章読本」を読んだ。昭和9年に発行された、文章の書き方、読み方の指南書である。かの小林秀雄、川端康成といった文豪にも支持された名著である。どうでもいいが私は最も好きな小説として谷崎の「春琴抄」をよく挙げる。 さて、以下は「文章読本」からの引用である。登場人物の言葉遣いに関する記述である。 『おそらく皆さんは「通うんだからね」と書いてあれば男の声を想像し、

「日替わり定食」という言葉について

「日替わり定食」という言葉に矛盾を感じたが、実際には何も矛盾はしていなかったという話。 最近の昼食が毎日、セブンイレブンの「蒙古タンメンのカップ麺」と「モンスター」の組み合わせに落ち着いていることに気づいたので、これに「ジャンク定食」と名付けた。その時にふと思ったのが「日替わり定食」という言葉、矛盾してはいないかということである。 私は漠然と「定食=決まった料理の組み合わせ」だと思っていた。例えばコロッケ定食ならば「ごはん、みそ汁、コロッケ、千切りキャベツ、たくあん」の定