【禍話リライト７】短編４つ
１．「だまし絵」
おれ、一回見たことあるんすよ。
大学のときなんだけど、飲み会が終わってみんなで歩いてたら、
「すいません！ちょっとちょっと」
って声が聞こえたんです。
見たら、会社員っぽい女の人が非常階段昇りながら話しかけてきてたんですよ。
なんだあ？って見上げたら、
「わたしいま階段降りてますよねー！？」
って。
昇ってるんですよ。
はあ？ってなって。
「いつまで経ってもー！一階に着かないんですけどー！、私いま降りれてますよねー！？」
って聞きながら、昇って行っちゃうんです。
「ねー！？」
って。
これやべえな。と思ったから警察に電話しました。
「変な人がいます」って。
後はどうなったか知らないけど、あれが人生で一番怖かったっすね。
ただ、そのビルで過去になんかあったとかは聞かないんですよね。
一応近くのマンションが曰くつきらしいんですけど。
酔ってるとか精神的にキてるって風にも見えなかったし、何だったのかなあ…。
とにかくその近辺はしばらく通らなかったですね。
２．「家族葬」
あたし、一時期とある地域に住んでたんですけどね。
近くに葬儀場があったんです。
といってもビルの一階に入ってて、家族葬とかのためのこぢんまりした場所だったんです。
最近はそういうところでお葬式する人も結構いますよね。お金も安く済むし。
通るとたまに「〇〇家」って書いてあって、お線香の匂いがするから今日やってるんだなーとか思ってました。
で、あるとき夜の12時ぐらいにその前を通りかかったんですけど、中から、
「おじいちゃん、おじいちゃん。おじいちゃん」
って子どもの声がしたんです。
すごい呼んでるから、おじいちゃん子だった孫がいるのかなあって。
ちょっと切なくなりながら通ったんですけど、なんか感情がこもってないんですよ。
ふつう涙声になったりしません？
でもなんていうか…ドラマとかで時々いますけど、棒読みの演技の子役みたいな。
あんなすがり方なんです。
変なの、と思いながら前を通ってたら、向こうから家族連れが歩いてきました。
銭湯にでも行ってたのかサッパリしたって感じで、しゃべりながら葬儀場のカギを開けて入っていっちゃったんです。
子どもひとり、おじいちゃんの遺体と一緒に残してくなんてありますかね？
声もすごい耳に残ってて、え、もしかしてオ…って思ってた数日後なんですけど。
またその葬儀場の前を通りかかって。
お葬式はやってなかったんですけど、友達と一緒だったんで話してみたんですね。
こんな気持ち悪いことあってさー、って。
友達は、へえー気持ち悪いね、でもまあ、カゼ気味でお風呂やめとく子だけ残ったのかもしれないし、とか言ってくれました。
確かに、そういう事態の方がオバケよりありそうですよね。
ひと安心して、そのままコンビニに寄ったんです。
結構遅い時間だったので店員さんも少なくて、品出しとかしてて。
ペットボトル買おうと思って扉を開けたら奥に誰か見えたから、補充してるんだなと最初は思ったんです。
そしたらその人がこっちに向かっていきなり
「おじいちゃん、おじいちゃん」
ってあの声で言ったんです。
もうバン！って扉閉めて、
店員さんに
「奥に子供入ってませんか！？」
って言ったら
「いや、私一人ですよ？」
って。
そんなことが昔ありましたね。
その葬儀場の近くって、人がよくケガするマンションなんかもあって。
我ながら変なところに住んでました。
３．「小道の家」
夜、近道だからって、狭い路地を一回通ったことがあるんです。
家が立ち並んでて、その中を縫っていくような小道です。
歩いてたら、小道に面した、とある家の玄関が思いっきり開いてたんですよ。
夏なのに網戸もしてなくて。
狭い路地に面してるから、家の中まで見えちゃって。
そしたら玄関で靴がぐちゃぐちゃになってるんです。
もうてんでバラバラ、裏向いてたり前後逆になってたり。
ちょっと奥の廊下には服が散乱してて。
で、その中に女の人が正座してるんですよ。こっち見ながら。
さすがに何？ってなりました。
なんか暴力沙汰とか起きたんじゃないかって。
大丈夫ですか？って言ってもその人返事しないし、あーこれはやばいなと思って警察に電話しようと思ったら、
いきなり後ろで
「つかれちゃっただけだから」
ってすごい能天気な声がしたんです。
振り向いたら女の子が二人、手をつないでました。
家の明かりが逆光になってて顔はよく見えなくて。
あれが一番怖かったですね人生で。
後で聞いたんですけど、その家の近くってなんかやばい元社宅があるらしいです。
僕が見た小道の家に住んでるのは、そこの関係者だって話なんですよね。
４．「やり取り」
あれはぞっとしたよ。
ポスティングの仕事で、とある地域に行ってたのね。
ポストにチラシ入れてくやつ。
そしたら、とある家のポストんとこに手紙が貼ってあったのよ。
便箋に手書きのやつ。
ん？と思って見たら、
隣の××の姉です。
この半年間、××と連絡が取れていません。
家に行っても誰もいる気配がないし、
電話しても誰も出ません。
もし元気な姿を見かけたら、
私に連絡を取るようにお伝えください。
住所も電話番号も、変わっていないからと。
○月△日
って書いてあった。
でも、日付がずいぶん前なんだよな。
「あれ？この家の人、答えてあげてないのかなあ」
って思ったら足元にもなんか落ちてたんだよ。
んで見たら、
お隣は10年前から無人です。
何かの間違いではないでしょうか。
○月□日
って書いてあんのね。
その日付もちょっと前なの。
えっ？このやり取りずっとここに掲示してんの！？
ってかなり引いて。
でもまあ落ちてるから元に戻しとくかと思って気が付いたんだけど、
その二つの手紙さ、たぶん同じやつが書いてるんだよな。
同じ便箋だし、同じ特徴の文字なの。
うお気持ちわりい！！ってなって、手紙触った手、思わずこすり合わせたよ。
そんでふっとポスト横の玄関見たら、家の中から誰かがこっち見てんのよ。
めっっちゃニコニコ笑いながら。
こえー！！何だこの家こえーー！！
ってなって、もうポスティングでその辺りには近づいてないね。
その家の住人ってさ。
近くに元社宅だったっつーマンションがあるのね。
住人いっつもケガしてて、みんな手足のどっか欠損してて。
なんか宗教絡みって聞いたんだけど…。
あのニコニコ笑ってたやつも、そのマンションの関係者だって聞いたんだよね。
気をつけた方がいいよ。
◆こちらは「ツイキャス」にて配信されている怖い話「禍話」を書き起こし、編集したものです。
文章化にあたり、変わっている部分があります。元の放送の方をぜひどうぞ→【THE 禍話 第6夜】（0:49:50ごろから）
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