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【禍話リライト12】光る部屋

最近引っ越したのだが、新しい部屋の賃料が妙に安い。
気になって、挨拶のついでに大家さんに訊いてみた。
「もしかしてこの部屋って何かありました?」
ちょうど事故物件のことがテレビでやっていたから。

「いえ、ただ眩しくて寝られないんですよ」
と大家さんは言う。

あぁ、外の街灯とかがちょうど窓から差し込む位置なのかなあ。
でもそんなのは、遮光カーテンをしたら大丈夫なんじゃないか?

そう思って伝えたのだが、どうも違うらしい。

「いや昔ね、このアパートの前の道があるでしょう、あそこでひどい交通事故があったんですよ」

夜中だったそうだ。
救急車が駆け付けたのだが、怪我人の状態はかなりひどかった。
すぐに運んだ方がいいのか、動かさずにここで処置した方がいいのかも、微妙なところだった。
結局その人は道に止まった救急車の中で処置されながら、苦しみ抜いて亡くなったという。

「悲惨な事故があったんですね……。その方が前の住人ということですね」
「え、違いますよ」
「え?」
大家さんは、「いや、私も全然わからないんですけどね」と首を捻りながら言う。
「その亡くなった人が最期に見ていたのが、あなたの部屋なんだろうっていうんですよ」

事故のあった曜日と時間になると、部屋の中が真っ赤に光るのだという。
まるで救急車の赤色灯に照らされているように、静かに赤く明滅し続ける。

サイレンは聞こえない。
亡くなった人が出てくるわけでもない。

しかしあまりにも眩しいので、眠っていても起きてしまうそうだ。
「だから安くしてるんですよ」、と大家さんは結んだ。

【おわり】


◆こちらは「ツイキャス」にて配信されている怖い話「禍話」を書き起こし、編集したものです。
禍ちゃんねる 新作物真似もあるよ回 より(32:40ごろから)
当方は配信者のかたとは関係のない、いちファンです。
このリライトの転載、使用はご遠慮ください。

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(画像配布元:禍話 簡易まとめWiki様)

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