消明者は嘘を吐く/最終日前編

『トマニトラさんの、無惨な仮死体が発見されました』

『昼時間は20分です。それでは話し合いを開始してください』


前編:想査官は真に迫る


神「⋯⋯消明者〈デリーター〉、ノリ良すぎません?」
デ「我もそれは思った」
蛇「最後の最後までネタにされてるの草なんじゃよな」
あ「即落ち二コマだったねえ」
 円卓はずいぶんと寂しくなっていた。
 人数は半分ほどに減り、最初の席順に従うともう飛び飛びになってしまう。
 けれど話し合いをするなら近い方がいいに決まっているので、誰からともなく席を移動して、最終的には卓の半分にこじんまりと集まるような形になった。
デ「残るは4人、つまりデリーターがあと1人なのは疑いようのない事実だ」
デ「もう後がない、出せる情報は全て出そう」
神「そうですね、言うまでもなさそうですがユイさんは白でした」
あ「あ、わちきからもいいー?」
蛇「じゃあワシも〜」
神「⋯⋯2人とも、情報があるんですか?」

あ「あるよ。占いなので」

 なんとびっくり。潜伏していたはずの想査官〈ウィザード〉、もとい占い師がここまで無事に生きていたというのである。
蛇「くふふ、やはりそう来たか」

蛇「ま、真の占い師はワシなんじゃけどな」

 しかも、もう1人いるというのである。
神「ええーー⋯⋯」
 もうそれしか言えない。ここまで来てついに対抗が発生してしまった。
デ「いや、驚くことはない。対抗が出るのは想定内だ」
デ「落ち着いて、それぞれの結果を聞こう。もちろん占った理由も合わせてな」
蛇「いいじゃろう。まず最初の夜は、おぬしを占ったぞ。デミス・クライン」
デ「ほう」
蛇「理由としては、少々目立っていたからかの。なるべく早い段階で、おぬしが仲間であるという確証が欲しかった。黒に主導権を握らせたら終わりだからの」
蛇「そして昨晩占ったのがあひとどのじゃ。おぬしはどーーも印象に残らなくての、ついつい後回しにしてしまった。ああ、別に嫌味でなくてな。じゃが、結果は黒じゃった」
蛇「潜伏してたのはまぁ、悪いと思っておる。じゃが信じてほしい。最後のデリーターは、あらはらあひとじゃ」
デ「⋯⋯あひと、お前の結果も聞こう」
あ「ん。まず1日目は、トマニトラ占って白だった。理由はまぁ、見た目怪しかったから一応って感じ」
あ「2日目はーーー、デミスさん。わかんないからとりあえず、仕切ってる人の色見とこうかなって」
デ(今の間はなんだ?ド忘れしていたのか、それとも⋯⋯)
あ「でもデミスさんは白だったから、わちき視点だともう蛇艸さん黒しかありえないんだよね。ユズカさんは白だと思ってるし」
神「暫定占い師の2人が、互いに互いを黒と見ている⋯⋯ということは、僕とデミスさんは真っ白ですね」
デ「そうなるな」
 おそらく今日が、最後の投票となる。
 吊れれば勝ち、逃せば負けだ。
神「僕としては、どちらも別に怪しくはないと思うんですけど⋯⋯」
 どちらか1人がデリーターなのは明白だ。しかしどうにも決め手に欠ける。
 このゲームに参加者全ての命運がかかっていると思うと、結論は簡単には出せなかった。
蛇「ワシらはきっとお互いに投票するじゃろうから、あとは2人の意思統一が必要じゃの」
あ「GMー、同数の場合はどうなるんだっけ?」
『ランダム処刑ですね』
あ「あーね」
デ「ちなみに我は反対の意見だ」
神「というと?」
デ「どちらにも、怪しい点があると思っている」
蛇「ほほう」
デ「あらはらあひとは、議論に対して消極的な傾向がある。潜伏を狙っていると思われても文句は言えないだろう」
あ「そうかなぁ」
デ「蛇艸は逆だ。意見は出すが、それ故に怪しさがにじみ出ている。まさしく蛇のように、掴みどころがない」
蛇「ええー、それ言われちゃ何もできないじゃろー」
神「なるほど⋯⋯」
蛇「いや納得するんか」
神「デリーターはノリのいい方のようですし、そう考えると蛇艸さんもたしかに怪しいかも知れないですね」
蛇「疑う理由そこ??」
神「どうしましょうデミスさん、なんか2人とも怪しく思えてきちゃいました⋯⋯!」
デ「うん、ユズカはあれだな。疑うとかあんまり向いてなさそうだな」
神「そうかもしれません。こういう時、本来の人狼ならどうするんでしょうね⋯⋯」
デ「そうだな、アピールタイムを取って白であることを2人にアピールしてもらったり、あとは過去の発言や投票歴を洗って⋯⋯⋯⋯」
 デミスさんがすごく黙った。
デ「GM」
『はい?』
デ「―――確認したいことがある」


つづく


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