星の天満モノガタリ③

いのちのともしび。

おりひめちゃんが謎のタマゴを拾ってから、地球時間で半年ほどが経とうとしていましたが、未だにこの生き物は目覚めません。

おりひめちゃんの心配は続いていましたが、生き物について少しずつ判ってきました。
この生き物の遺伝子から生物の区別を調べたところ、宇宙怪獣であることがわかりました。

但し、新種であることと、確認されたのがこの1体だけであり生物学的特徴が確認できなかったため、この怪獣の雌雄はわかりませんでした。

怪獣であることはわかりましたが、あいかわらず目覚めさせる方法はわかりません。

「何かが足りないのかしら?」

完全体の様子はわかりませんが、おりひめちゃんは、この怪獣には、最初から何かが欠けているのではないか?そう思うようになっていました。

おりしも、怪獣の研究をおこなっていた機関から連絡がありました。
怪獣の様子から、生命の源になるエネルギーが少なくなっているのではないか。と。

おりひめちゃんは考えました。エネルギーが少ないのなら補充してあげないと。エネルギー源となるものはないか・・・
種族がわからないと治療もできない。

このころのおりひめちゃんは、この怪獣にたまたま拾った存在以上のとても大切な感情が芽生えていて、何があっても目覚めさせてみせる。という強い想いに突き動かされていたのです。

そこに響くインターホンの音。
モニターに映る姿におりひめちゃんは
ハッ!としました。

いけるかもしれない!

おりひめちゃんの部屋を訪れたのは彼女の親友、恒星エネルギー体「オポピサマ」でした。

オポピサマ「どうしたポピ?なんかこまってるみたいだけど・・・?」

おりひめちゃん「実は・・・」
おりひめちゃんは、オポピサマにこれまでのいきさつを全て話しました。
そして、オポピサマが持つ強力な恒星エネルギーがこの宇宙怪獣を目覚めさせるのでないかと。

オポピサマ
「暇だからいいけど、いつまで?」

おりひめちゃん
「新しいエネルギー源が見つかるまでなんだけど、見つからないかもしれないの」

オポピサマはすこし考えて、
「ちょっと考えさせてほしいポピ・・・」

その日の夜、オポピサマは目の前ですやすや眠る宇宙怪獣を見て、ふとおりひめちゃんと出会ったときを思い出していました。

オポピサマはベガから自然発生でうまれたエネルギー生物で、本当は我々人間の住む太陽系の太陽の半分くらいの大きさでした。

おりひめちゃんと出会い、彼女の持つ恒星制御技術で他者に迷惑をかけずにヒューマノイドサイズまで小さくさせられていました。また、その技術により身体の周りをバリアで覆うことで、人がふれることのできる恒星となっていたのです。

おりひめちゃん
「あなた一人なの?わたしにできることはない?」

オポピサマのココロに初めて出会ったときのおりひめちゃんの声が響く・・・

(あのとき、アタチは一人だった。今のこのコといっしょか・・・)

太陽という特別な存在。
崇められることもあれば、畏れの対象となることもある。
ただ1人の生き物なのに、遠い孤高に奉られる存在。
そんな閉塞感を払拭してくれたのがおりひめちゃんでした。
おりひめちゃんはいつも自分を1人の普通の同年代の女の子として、友だちとして接してくれました。
その親友が困っている。
しかし、自分が人の運命を決めることなど・・

オポピサマは迷う・・・

そして、いつのまにか、朝になっていました。

起きてきたおりひめちゃんに、

オポピサマ「別にいいポピ。こいつなんだかおもしろそうポピー」

満面の笑みでオポピサマは言いました。

おりひめちゃんも無言の笑顔で返します。
その目には少し涙が浮かんでいました。

オポピサマは、さっそく身体を5本の突起状に変化させ、宇宙怪獣の頭部に合体しました。

そして、自身の太陽エネルギーを流し込むと、灰色がかった怪獣の体は、まるで電球に灯がともるようにみるみるうちに黄色く輝き出しました。
背もおりひめちゃんを少し抜かすくらいまでぐんぐん成長しました。

オポピサマ合体から数時間、宇宙怪獣は身長2メートルほどの大きさにまで成長しました。

そう、やはりおりひめちゃんの予想どおり、怪獣には基礎代謝のエネルギーが極めて少なく、仮死状態であったのです。

なぜその状態でうまれてきたのかという謎はさておき、
怪獣はエネルギーの補給を終えたようで、

ついに、

うっすら眼を開けたのです!

おりひめちゃんは飛び上がるように喜びました。

オポピサマも表情は見えませんが満足げ。

おりひめちゃんとオポピサマの想いがこもったいのちのともしびが灯った瞬間でした。


つづく

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