雨が降っている。 慰霊の日の今日、沖縄は、まだ梅雨が明けない。 「ハーリーの鐘がなると梅雨が明ける」 梅雨に入ると、毎年母はそう言う。そしてハーリーの日に梅雨が明けていると、得意げに「ほらね」と言うのだ。 コロナウイルスでハーリーが二年連続中止になり、梅雨の雨も平年より激しく長く降る今年は、慰霊の日になっても梅雨が明けない。 「今年の梅雨は長いねぇ。ハーリーが過ぎたのにまだ降っているさぁ。異常気象かねぇ」 電話から聞こえる母の声は、溜息混じりだった。