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彼女とそれと君と僕

何とか間に合ったみたいだ

作業し続ける彼女の後姿をみながらふと思う

いったいどの位の時間がたったのだろう 

彼女が動かし続けるその指はダンスをしているかのようだ

・・・あの指が羨ましい・・・

何回、何十回と思い焦がれた

僕は自分のゴツゴツとした手を開き彼女の後姿と重ねた

「もうすぐ終わるわ」

指の隙間から彼女が微笑む

彼女が紡ぐ手は動きを止めることなく、紡がれるそれは時折大きくうねりをみせ僕のもとへとやってくる。

「今回はずいぶんと大きいのだね。それに今までと形も異なるし・・・これで完成なのかい?」

それを上にはねさせる動きを時折魅せながら彼女は僕を見据えた

「完成させるのはあなたよ、仕上げはあなたにお任せしたいの」
「僕が仕上げるのかい?」
「ええ!」

彼女が目が大きく瞬いた
止まった指先から流れそれは大きく彼女を包み込み、
彼女の姿はそれに覆い隠されてしまった

「今回はたくさんの色があるのだね?これは何色というのかな?」
それを少し手繰り寄せてあげると彼女の姿が現れた

「ふふ、知らないわ。初めてのお色ですもの。名前が必要ならあなたがお好きな名前を付けて差し上げて?」
彼女はそれに息をふきかけるとそれは大きくたわみ僕の頭上をユラユラとしている

「この子たちはすべてあなたにこのまま差し上げるわ」

さてどうしたものか・・・
僕にはこれを君の元へと運ぶ役目がある
今まで、何度も繰り返し彼に託してきたのだが・・・・
大きい上に言うことを聞いてくれそうになく、まとまりがない
移動するにも一苦労しそうだ
色とりどりのこれは落ち着きがなく箱に入れることもできないだろう

さてどうしたものか・・・

どうしたんだお前??声は聞こえるが姿がみえないじゃないか?
新しい登場のしかただな~俺にもやらせてくれよ」

君は笑うのだろうな・・・・

彼女の紡ぐ手はまもなく止まる
僕はそれを彼女から受け取る
僕はそれを抱えて会いに行く
君に

頼まれた預かり物を渡すように仕方ない顔をして会いに行く

僕は笑えるだろうか

・・・・・

「ふふふ、きっと泣いてしまうわね」

彼女は僕の赤くなった耳元で意地悪くささやくのだった。



2月4日逆行していた水星は順行になり10天体はすべて一つの方に進み始ました。それは水瓶座の世界から次の星座、うお座への移行を表します。
たくさんのはじめてに出会ってきた私たちはそのはじめてを経験に変えていきます。経験をどのように自分の人生の彩にするのでしょう
変わらないことの大切さ
変わることの苦しさ
変わることを受け入れる勇気
受け入れた私たちは次の世界へ進んで行きます。


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