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母を想って、電波


2DKの古いアパート
たった6畳の秘密基地の壁越しに
あなたの囁きが聴こえる

「天使の囀りが鳴っているの!」
それはね、となりの畑のカエルの鳴き声だよ

「悪魔の叫び声が響いてるの!」
それはね、病気の人を救う車のサイレンだよ

「宇宙に思考を覗かれてるの!」
それはね、地面を打ちつける雨の音だよ

その色はキケンだから着ないでって
あなたが悲しそうに泣くから
わたしの大好きなロリィタ服
どうしたらいいか わからなくて

あなたはイエス・キリストじゃない
あなたはせかいの救世主じゃない
あなたはどこにでもいる ただの人間 

でも
暗い暗い生活から逃げ出したわたしを
たったひとり抱きしめてくれたのは 
あなただったね

無償の愛

お金なんてなかったけど
誕生日に食べたクリームいっぱいのケーキ
お花 お手紙 きれいな絵本
手を繋いで歌をうたった 幼稚園までの畦道

変わらない うつくしい記憶

2DKの古いアパート
たった6畳の秘密基地の壁越しの
あなたの囁きは崩れていく

遠のいていく

いつかあなたの言語のなかから
わたしの存在が消えてしまっても

わたしはあなたの 一人娘


ごめんね



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児童期に両親が離婚して父子家庭で過ごしましたが、色々あって父との生活に精神が限界を迎え、高校1年生の冬に母親のもとへ逃げ出しました。
久々に会った母はわたしを優しく迎え入れてくれました。でも、一緒に暮らすための引越しが終わってから、母が統合失調症でおかしくなっていたことが分かりました。そして、その原因が児童期の自分の行いのせいだったかもしれないことも。
そんな母への複雑な思いを吐き出したくて綴った詩です。

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